中編4
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口喧嘩… ~うるさい!~

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久しぶりの投稿…

俺が学生時代の話し…

前にも書いたように、俺の通う学校はキャンプなんかの野外活動を頻繁に行う学校だった…

その時も、夏休みの小学生を引率しての海釣りキャンプに2泊3日で瀬戸内海に浮かぶ島に行っていた…

島に着いたのは正午前だった…

船を降りて、キャンプ場となる野営地に向かっていた…

(あ~、なんか居るね…)

野営地の入り口近くの小高い丘…

そこには、古めかしい祠がある…

その祠に向かう石段の登り口…

一人の男が座ってる…

歴史の教科書で見かけたような姿…

琵琶法師って言うのかな?

頭はスキンヘッド、手元には琵琶らしき楽器を持って、目を閉じて朗々と唄ってる…

唄っていうか、浪曲? 詩吟?

とにかく、時にはボソボソと、時には叫ぶような大声で…

とりあえず害はなさそうなのでほっておく…

野営地に着き、まずはテントの設営…

その後、自己紹介を兼ねたオリエンテーリングを済ませると魚を採るための仕掛けづくり体験…

仕掛けと言っても、ペットボトルを切り貼りするだけの簡単なもの。

それを海に沈めて、翌朝まで放置しておく。

その後は自然観察、ネイチャーゲームと初日の予定を消化していく。

その間もずっと、彼の唄は聴こえている…

絶え間なく延々と…

周りの小学生やスタッフ仲間には聴こえてないようだ…

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ひととおり行事を終え、夕食の時間。

食事を終えると、キャンプ恒例の怪談ばなし…

子供達は話しを聞きながら、

『怖~い!』

とか

『もうトイレに行けない~!』

なんて騒いでる…

そんなことよりもすぐ近くに居るよ…本物が…

なんてことは言えるはずもなく、心の中でつぶやく…

そんな時間を過ごし、子供達を寝かしつける時間…

それを済ませると、今度はスタッフミーティング…

ミーティング中も、彼の唄はずっと聴こえてくる…

うるさい…

もはや、ミーティングにも集中出来ない…

憎き頼朝がどうのこうの…

大相国様の無念をどうのこうの…

俺もさすがにイライラしてくる…

ミーティングを終え、眠りにつこうと横になる…

キャンプの朝は早い…

子供達は6時起床。

我々スタッフは、下準備のために5時起床…

(早く寝よう…)

(うるさい…)

(寝れやしない…)

俺は起き上がり、タバコを手にする…

「どうした?トイレ?」

スタッフ仲間に声をかけられる…

「お~、ついでにタバコ吸ってくるわ」

と嘘をつく…

「風があるみたいだから、火の始末気をつけて」

とスタッフ仲間…

「お~、わかってる…」

そう言って、外に出る…

(風なんか吹いちゃいない…)

周りの奴等には、彼の唄が風に聴こえてるようだ…

タバコに火を着けながら、彼のところに向かう…

近づくほどに、肌がピリピリしてくる…

まるで、全身に静電気を浴びてる感覚…

やはり彼は石段に居た…

相変わらず、目を閉じて唄ってる…

「なぁ、うるさくて寝れんのんだけど…』

・・・

・・・

「おい、無視すんなや、聞こえてンだろ」

・・・

・・・

「なぁ、あんた1日中こんなことして楽しいか?こっちからしたら迷惑以外の何物でもないぞ!」

俺の口調も少しずつ荒くなる…

「おい、聞いてンだろ! 無視すんなや!」

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『うるさ~い!』

・・・

キレやがった…

「はぁ!なにがうるさいじゃあ!そりゃこっちのセリフじゃ!ってかお前目ぇ見えとんか?ほっそい目ぇつむっとるから、盲目かと思っとったわ!」

こっちもキレた…

さらにまくし立てる…

「お前さっきから聴いとると、平家側の人間か?ここは平家になんか縁のある土地なんか?どっちにしろこんなとこでなんぼ声を張り上げても誰にも聴こえて無いんじゃ!このボケぇ!」

あっけにとられたような顔で俺を見てやがる…

「なんじゃこら!その有るんか無いんかよくわからんほっそい目で何見とんじゃ!とにかく唄うんならよそでやれ!俺がこの島におる間は黙っとけ!わかったか!」

何か言おうとして口を開こうとしてる…

「わかったかって聞いとんじゃ!返事ぐらいせぇや!」

奴の言葉をさえぎる…

黙って頷いてきた…

「わかりゃエエわい!」

そう言い残してその場を後にした…

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翌朝まで奴の唄が聴こえることはなかった…

(どっかに行ったかな?)

そう思い、例の場所へ向かう…

居た…

同じ場所で、黙って目を閉じている…

(寝てんのか?)

近づいてみる…

彼は目を閉じたまま深々と頭を下げた…

(悪いことしたかな… 言い過ぎたか…)

少し罪悪感を感じた俺は、朝御飯の残りでおにぎりを2つ握り、彼のところに持って行き、

「よかったら食って。」

そう言って石段に置く…

彼はまた深々と頭を下げた…

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それからキャンプが終わるまで奴の唄が聴こえることはなかった…

いつも所定の位置に座っているのだけど…

日程を全て終え、帰るとき彼に声をかけた…

「悪かったな、もう帰るから唄ってもいいよ。ありがとな」

そう言って船に向かった…

船に乗り込んだ時、彼の唄声が聴こえ始めた…

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烏賊サマ師様、お久しぶりです。
私は、めったにキャンプとかしないものですから、烏賊サマ師様の作品で《擬似キャンプ》しながら怖いお話しが聞けると、お得感がありますね。

霊相手に、脅しのような説得…さすがでごさいます。

マコさん、コメントありがとうございます。
文句どころか、かなりまくし立てましたからね(^_^;)
ホントに後から少し反省しました(^_^;)

烏賊様

何だかいい話ですね!

そうやって、話を聞いてくれたという事は その琵琶法師様は余程、嬉しかったに違いないですね。

自分の声に耳を傾けてくれた人、おにぎりを持ってくれた人と思って嬉しかったンですよ!その琵琶法師様に代わり、御礼を言わせていただきます! 「ありがとうございます!文句まで言ってくれて!」

あんみつ姫さん、コメントありがとうございます。
堂々と渡り合ったというか、こちらもキレてたってとこがホントのとこですね(^_^;)
嫁さんには、「幽霊相手に本気でぶちギレるあんたの方が怖いわ」って言われましたけどね(^_^;)

沙羅さん、コメントありがとうございます。
危なそうな奴が相手だと近づきもしないんですけどね(^_^;)
そんな感じには見えなかったし、ホントにイライラがピークに達してたんで…(^_^;)

烏賊サマ師様

とても心がほっこりとしました。
幽霊さん、かなりの時代をさかのぼったお方のようにも思われますが、小学生を引率しての野外活動で、そんな人(琵琶法師?)が現れて、歌なんか歌っていたら、もう怖くて怖くて・・この先、何をされるか、何が起こるか心配でしょうけど。

堂々と渡り合えるなんて、凄いです。

幽霊さん、作者様から、おにぎりもらってうれしかったと思います。
もしかしたら、食べてくれたのかも。
以前、お墓参りに行ったとき、お義母さんが大好きだったブレンドコーヒーをポットに入れてお気に入りのマグカップに注いで置いてきたんです。数時間後、再度訪れてみたら、心なしか、コーヒーの量が減っていたような気がして。(ああ、お義母さん、飲んでくださったのかしら。と嬉しくなりました。)その年の秋、お墓の周りに 綺麗なコスモスがいっぱい咲いたんですよ。喜んでくれたのかなと思いました。

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