中編5
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不思議な力を持つ少年

私は中学生時代、オカルト大好き少女でした。

幽霊も信じていましたが、自分自身では何も見たことがないので、

「見える」と主張する人の話を聞いたりするのが大好きでした。

こんな痛いやつでしたが、周りに恵まれていたのか、

「オカルト好きのサナちゃん」という扱いは受けましたが、

いじめられることもなく、普通に楽しい学生生活を送っていました。

あるとき、その「私がオカルト好きである」というところから、

友達経由で一人の男の子を紹介されました。

その子はちょっと不思議な雰囲気の子でした。

男の子の友達いわく、

「小さい頃から変な力を持っていた。でも今は無くなっちゃったみたいだ」

男の子は「変な力」自体を否定していましたが、

私は興味をもって彼に近づき、そして好意を持ちました。

色々あって、私たちは付き合うことになりました。

付き合いはじめ、彼の生活を知るようなって、

彼が本当に不思議な力を持っていることがわかりました。

彼の周りに起こっていること、私が実際見聞きしたこと、

実家の状況、小さい頃から彼を知っている人の態度、

いろんな情報が全部「彼に不思議な力がある」ことを指していました。

でも彼は全否定していましたし、私もしつこく聞いたりはしませんでした。

前述のとおりオカルト好きでもあったので、本当は色々詳しく聞きたかったのですが、

そういう力のあるなし関係なく、彼が本当に大好きで、

あんまり聞くとふられてしまいそうだったので、聞けませんでした。

ずっとそうするつもりでした。

そう、あの事件が起きるまでは・・・

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ある日、私の姉妹同然に仲良くしている従姉妹が行方不明になりました。

バイト帰りでのことでした。状況から見て、事件に巻き込まれた可能性が大でした。

警察、従姉妹の両親である叔父叔母はもちろん、私たち家族も必死で探しました。

ビラも配りました。でもまったく手がかりもつかめませんでした。

面識のあった(私が紹介した)彼氏も心配してくれて、

当てのない捜索に協力してくれました。

婚約者でも配偶者でもない、ただの彼氏なのに、とても頑張ってくれました。

今なら、彼氏がどれほど尽力してくれたか、どれほど感謝するべきかわかるのですが、

当時の私はわかりませんでした。

むしろ、責め立てていました。

「あなたなら、力を使ってわかるのに、なんで探してくれないの?!」と。

彼は真っ青な顔をして帰っていきました。

ふられるかもしれない、と思いましたが、

当時の私は従姉妹が心配すぎて、彼のことはどうでもよくなってしまっており、

それから数週間連絡をとりませんでした。

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そんなある日、彼から会いたいと連絡がきました。

地元から、少し離れたカラオケボックスで会いました。

彼は会ってもしばらく黙っていましたが、ようやく口を開くと、

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「従姉妹さんはもう死んでる」

と言いました。

私の体全体からヘナヘナと力が抜けました。

彼の言葉は、客観的に見てなんの根拠もない言葉です。

でも、私は無条件で信じました。

号泣する私に、彼は、「これ以上できることはない」と言いました。

でも私は、食い下がりました。鼻水と涙を垂れ流しながら彼にすがりつきました。

「従姉妹ちゃんがどこにいるのか教えて」

彼は教えられない、と言いました。「知らない」じゃなく「教えられない」と。

私は懇願しました。土下座もしました。帰ろうとする彼の足にしがみつきました。

店員さんが見に来るくらい騒ぎまくりました。

彼は、根負けし、以下の条件で教えてくれることになりました。

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・警察には言わない

・誰かが見つけるまでは従姉妹さんをそのままにしておく

・誰にも絶対に自分(彼)から聞いたといわない

・自分たちが会うのはこれきりにする

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私は全部条件を飲みました。

彼は場所を教えてくれ、私たちは別れました。

その後、警察には言うな、といわれていたのに、私は約束を破りました。

従姉妹をそのままにはしておけず、

でも自分で掘り出すこともできず、

親にもどういって言いかわからず。

そこで、公衆電話で匿名で警察に場所を言い、

見つけてもらえばいいんじゃないか。

と思いました。

本当にアホですよね。

あっさりと、かけたのは私だとばれました。

結果的に従姉妹は見つかりましたが、となると次は犯人です。

もちろん、埋めた場所を知っている人が、犯人です。

警察は、私を猛烈に取り調べました。

ただ、警察も私が犯人だと思っているわけではなさそうでした。

でも、犯人を知っているはずだと考えました。

私は彼の名前を話してしまいました。

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彼はほぼ犯人扱いでした。未成年者だったので、

テレビなどには名前が出なかったのが唯一の救いですが、

地元ではもちろん知れ渡っていました。

彼にはアリバイがありましたが、弱いアリバイで、ほぼないも同然だったようです。

が、同時に証拠もなく、警察は私から証言を引き出そうと必死でした。

この取調べは、今でも夢に見るくらい、強烈でした。

警察の人には、

「彼に不思議な力で見つけてもらうように頼んだ」

と本当のことを話したのですが、信じてもらえるはずもなく、

「君はだまされているんだよ、彼氏が犯人だから場所を知っていたんだよ」

とくりかえしくりかえし言われ、ぼーっとした頭で、

そうかもしれない、と思ってしまいました。

私がどのように証言したかはご想像のとおりです。

本当に最悪です。

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しばらくして、

彼氏は、証拠不十分で釈放され、すぐに地元から引っ越しました。

私たち家族も引っ越しました。

一部の人からは、私は共犯者扱いを受けていたからです。

そして、叔父叔母も、彼氏を憎むと同様に、私のことも憎みました。

両親と私との関係も上手くいかなくなりました。

私は名前を変えて、進学もせずにフリーターとして一人暮らしをはじめました。

さらに数年のときが経ち。

真犯人が見つかりました。

別の事件で、逮捕された男が、この事件のことも自首したのです。

その男が、なんで場所がわかったのかわからないといっているらしいです。

なぜ知っているのかというと、

ルポライターと名乗る人が取材にたずねて来て、

それで色々教えてくれました。

(関係ないですが、親にも住所教えてなかったのに、記者ってすごいですね)

ルポライターの人は彼を探していて、

でも見つからなかったので結局記事にはならなかったようです。

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なにが最悪って、

ルポライターがくるまで、私が彼を疑っていたこと。

彼の力を信じていたはずなのに、

いざ本当に見つかると怖くて発狂しそうになったこと。

そして彼に心から申し訳ないと思うと同時に、

今、さらに彼が怖くてどうしようもないこと。

彼が私の前に現れることは、ないでしょうけど…

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