中編3
  • 表示切替
  • 使い方

妬み

─ピンポーン。

ある日の午後。

来客を知らせるチャイムに、茜は玄関へと急いだ。

ガチャッ

『友里!久しぶり~』

ドアを開ければ懐かしい顔。

そこにはいたのは茜の大学時代の同級生、友里である。

そして友里の腰の後ろあたりに揺れる小さな頭。

茜は少し屈んでそちらを覗き込むと、

『功太君、こんにちは』と笑顔で声をかけた。

功太君と呼ばれたこの男の子は、今年5歳になる友里の子供だ。

『‥‥‥。』

しかし茜の挨拶に、功太はさらに友里の後ろに隠れてしまった。

『ごめんね。うちの功太、最近人見知りが激しくて‥もうすぐお兄ちゃんになるのに』

少し困ったように、友里は功太の頭と大きくなった自分のお腹をなでる。

『大丈夫だよ。赤ちゃんが生まれたら功太君もしっかりするって』

甘えるように友里にしがみつく功太を微笑ましく思いながら、茜は二人をリビングへと案内した。

。。。

友里と茜は大学で出会い、四年間クラスとサークルが一緒で仲良くなった。

卒業後は、友里がわりとすぐに他県の彼と結婚した為、あまり頻繁には会えなくなったが‥友里が実家のあるこちらに帰ってくるときには、必ず茜と会っている。

今回は友里が第二子の里帰り出産で帰って来た為、久々に茜の家で会うことになったのだ。

。。。

。。。

ひとしきり、互いの近況を報告し合って一息ついた頃。友里はマグカップをテーブルに置きながら口を開いた。

『茜、早くいい人見つけなよ~』

友里に会うたび言われる言葉。

‥正直言われたくない言葉。

そう。茜は結婚適齢期といわれている年齢を過ぎつつあるが、未だ独り身だった。

茜だって好きで結婚しないんじゃない。親に孫の顔を見せてあげたいし、早く安心させてあげたいとも思ってる。けれども職場では出会いもなく、積極的に街コンやお見合いパーティに出てみるも、なかなかいい縁に巡りあえなかった。

『茜、今のままじゃ将来不安じゃないの?それに子供は本当に可愛いんだから。私、早くこの子に会いたくてたまらないよー』

そう言いながら自分のお腹をいとおしそうに撫でている友里に、茜の胸の奥に沸々とやり場のない気持ちがわき上がってくる。

(そんなこと言われたって。私だってどうしたらいいかわからないわよ。なによ、二人目が生まれるからってそんなに浮かれちゃって‥)

友里のことは嫌いではないが、この手の話題になると自分自身がひどく惨めに思えてきて。怒りにも似た感情がぐるぐると茜を苦めていた。

。。。

。。。

。。。

『そろそろ帰るね』

これから生まれる赤ちゃんの話ばかりを、話すだけ話して満足したのか。友里は功太の手を取り、立ち上がった。

友里と会う前よりはるかに重くなった心で、茜は『下まで送るよ』と後に続く─。

玄関を出て、アパートの1階へと続く階段の手前で。

友里は『ここでいいよ』と笑顔で振り返る。

茜の部屋はアパートの2階。

1階へ降りる為のこの階段は結構急なので。身重の友里を気にして茜も付き添おうと思ったのだが。。

万が一ここから落ちたりでもしたら、友里はもちろん、お腹の赤ちゃんもひとたまりもない。

そう。。ひとたまりもない。

『次に会うときは赤ちゃん抱いてくるね!』

友里がそう言って背中を向けた瞬間─。

ドンッ

『っ‥ひ‥きゃあああああ』

ズダダダダンッという鈍い音と共に、友里の体が階段の下に転げ落ちた。

『っ‥ゆ、り?』

目の前の光景に茜の頭が真っ白になる。

『ゆ、友里っ!!』

友里の頭と足元から流れ出た鮮血が、じわじわとコンクリートに染みを広げて行く。

そして茜の隣には、腕を精一杯のばした状態の功太が、友里を睨み付けながら佇んでいた。

『赤ちゃんなんていらない!ママはぼくだけのものだ!』

それはあまりにも純粋で残酷な感情

≪妬み・終≫

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
61512
11
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意

mamiさま
こんばんは!コメントありがとうございます(*^^*)
そして私なぞに、そのような御言葉を。。!
本当にありがとうございますっっ(;_;)
仕事中に必死でオチを考えた甲斐がありました<(*_ _)>(ヲイ

私も…ロビン様やマコさんと同意見です。…なら、わざわざコメント残すなって!?
いや、素晴らしかったと、なんとか伝えたくて…
改めて…素晴らしかったです。

あぁ、本当に中身のないコメントですみません…

マコさんさま
はじめまして!コメントありがとうございます(*^^*)
最初はありがちな話になってしまいそうだったので、 自分なりにまさか?!な結末を考えてみました。
嬉しい御言葉ありがとうございますっっ<(*_ _)>

あんみつ姫さま
わわっ、ご丁寧にありがとうございます!
怖いも付けて頂き感謝感謝です<(*_ _)>ペコリ

RINさん、初めまして!

ロビン氏と同意見でしたので多くは語れないですね〜!

しかし、よくこう言うの思いつきますね!感服いたします!

また、次回作期待していますよー!

すみません。
オチが素晴らしくて、「怖い」押すの忘れてました。
ポチっと押させてください。

表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意