中編4
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愛車

私は数ヵ月前に普通自動車免許をとり、それからしばらくして、念願のマイカーを購入した。

さすがにいきなり新車を買うのは、まだ新米ドライバーの私は車をぶつけてしまう可能性があるのと、金銭的にもきつかったので。

家の近くにある中古車屋さんで気に入った一台を選んだ。

 

しばらく経ち、運転にも慣れてきた頃。

私はマイカーで通勤するようになった。

ぎゅうぎゅうの満員電車に40分も揺られる通勤から比べると、とんでもなく快適である。。

 

─そんなある日。

いつもの様に会社への道のりを走行中のこと。

町外れの交差点で、不意に軽い力でハンドルがふわっととられた気がした。

(何だろう、今の‥)

この交差点は交通量が少ない為、結構なスピードを出していたせいだろうか。

ハンドルがとられたのはその一瞬だったので、私は気にせずそのまま走行していたのだけど。

仕事が終わり、帰り道にも。今朝の交差点で同じようにハンドルをとられ、奇妙な感覚に陥った。

(車?それとも道路が原因なのかな‥?とりあえず気を付けなくちゃ)

そんな気持ちを抱いたまま自宅へ帰って来た私は、鞄の中にある携帯電話のランプが点滅していることに気付いた。

 

[不在着信:非通知設定 1件]

着信があったのは運転中だ。

しかし、かけ直そうと思っても非通知設定ではかけることが出来ない。

まぁ重要な電話ならば、またかかってくるだろう、と。私は夕食作りに取り掛かった。

 

。。。

  

その日の深夜─。

私の意識は真っ暗な闇の中にあった。

何も見えない。

でも、なにか物凄い圧力を感じる。

だんだんとそれは肉体を蝕み、まるで身体が千切れるような激しい痛みに変わってゆく。

(な、に‥これ。痛い、痛い‥!)

すると何も見えなかった闇の中に。

ぼんやりと女の姿が浮かび上がった。

しかしその顔と身体は、本来の原形を留めていなくて。

『いやぁぁぁぁぁっっ』

私はおぞましさのあまり、絶叫した。

 

目の前には、見慣れた天井。

耳元では、目覚まし時計がカチコチ時を刻む。

‥私は自分の叫び声で、夢から覚めたようだ。

あまりの恐怖に、全身は汗でぐっしょり。

(今のは‥夢‥よね。夢‥)

それは夢だとしても、とてもリアルで忘れたくても忘れられない─。

そしてこれがきっかけとなり、非通知着信履歴と悪夢は度々続いた。

。。。

。。。

─今日も私は、なんとか1日の仕事を終わらせて帰路につく。

バックミラーに映る私の顔は、悪夢の寝不足で疲れきり、やつれていた。

 

ブーッブーッ

鞄に入れ忘れていた携帯電話が、コートのポケットで震えている。

 

[着信:非通知設定]

疲れきっていた私は、運転中にも関わらず、その着信をとってしまった。

 

『もしもし』

『‥‥‥‥。』

電話の向こうからは、ゴォーという音しか聞こえない。。

『もしもーし』

何度も呼び掛けるが、相変わらず相手はしゃべる気配はなかった。

 

車はもうすぐ、あの交差点に差し掛かろうとしている。

 

私はイタズラかと思い、電話を切ろうとしたその瞬間─。

  

『ア"ァ"あア"ア"ぁあ"あ"』

『ドーーーンッグシャッ』

低く呻いている様な女の声と、凄まじい轟音が、電話の向こうから聞こえてきた。

 

キキィィィーッ

それと同時に、ハンドルが何かの力に思いっきり引かれ、私は思わず急ブレーキをかける。

 

『はぁはぁ‥やだっ‥何なのっ?!』

一気に襲いくる恐怖に携帯電話を放り投げ、ハンドルにしがみついた。

(この車‥何かがおかしい‥!)

私はこの車について話を聞くために、あの中古車屋さんへ行こうと。ガタガタと震える手で、なんとかハンドルを握り直した。

。。。

。。。

中古車屋さんの店長は、最初は知らないの一点張りだったのだけど、私が泣きながら訴えると、ようやく本当のことを話してくれた。

 

─半年程前。

例の交差点を猛スピードで右折したトラックが、対向車の運転席に横から突っ込むという事故があったそうだ。

トラックに突っ込まれた車に乗っていた女性は、横から潰される様な形で死亡していたらしい。

無惨にも手首で千切れた両手は、ハンドルを握ったままだったとか。。

本当なら廃車になるはずだったのだが、損害を受けていない一部の部品は、再利用されることになったそうだ。

もしかしたらこの車には、その事故車の部品が使われているんだろう。。との話だった。

  

‥なんだか、頭がぼーっとする。

店長が一緒に車共々お祓いに行こうと言ってくれたのだけど、私はそれを一人で行けるからと断った。

お祓いをしてくれるという場所の住所を教えてもらい、車に乗り込む。

私はその住所をナビに入力した"フリ"をして、エンジンを回した。

。。。

。。。

 

気が付くと、私はあの交差点の手前を走っている。

店長と話した後の記憶はない。

 

向かい側からは大きなトラック。

『どうして‥?!』

 

そう思った次の瞬間には。

眩しい光りと激しい衝撃。

そして轟音に包まれていた─。

 

そのハンドルを握っているのはダレの手?

≪愛車・終≫

Concrete
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沙羅さま
はじめまして、こんばんは(*^^*)
読んでくださり&コメントまでありがとうございます><
そうだったのですね。私はまだ車を持ったことがないので、色々と妄想してこの話を書いたのですが。。自分が車を買うときにちょっと怖くなるかもです

悪人顔!(笑)まさにそれですよww
来年更新なので、どんな出来になるか楽しみです(°ㅂ° )

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Rinさん♪
・・・初めましてじゃなかったらすみません
最近、耄碌してまして、あちこちで足跡つけてるもんですから・・

すっごい怖かったです。
中古車体験(?)あったもので、読むか読まないか迷った挙句
とうとう読んでしまいました(T∀T)

で。免許の写真は『悪人顔』になるように仕向けられるからなのですwww
誰もが、善人のようにはなりませんから~~ww

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番長さま
読んでくださり&コメントまでありがとうございます!
番長さまは車通勤なのですね!私も運転したいと思いつつ、気がつけば8年も過ぎてました(笑)
車は便利ですけど、やっぱり気を付けなければ怖いですよね。。
これからも安全運転でヽ(`・ω・´)ノ

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車通勤なのに…
車通勤なのに…
よ、よ、読んでしまった…。

私も現在中古車に乗っています。
安全祈願のお守りを車内につけていますが、今年の年末にもう一つ新しいものをつけようと決心しました。
それくらい、怖かったです…

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あんみつ姫さま
いつも読んでくださり&こうしてコメントまで残して頂いてありがとうございます( ´ ▽ ` )
そうなんです。色々と妄想したら、車も怖く感じてしまったり。。
それにしても運転免許証の写真はなぜあんなヒドイ写真になるのでしょうかね(泣)私だけかもですが、身分証明で提示するときに恥ずかしくて仕方ないです(T_T)

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