短編2
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お~い

連日の残業で、その日も帰宅は深夜0時を過ぎていた。

疲れきっていた僕は、飯も風呂もそっちのけでベッドに倒れこんだ。

どれ位の時間が経っただろうか?

「ぉ~ぃ」

微かに聞こえる声に眠りから引き戻された。

眠気でぼんやりとしか見えない目をこすりながら身体を起こす。

時計をみると午前4時。

うっすらと夜が明け始めていた。

一昨日位からだろうか?

この声を聞く様になったのは。

時間が決まっているという訳では無いが、寝ていると必ずどこからか聞こえてくる呼び声。

最初に聞こえた時は、眠りを妨害された怒りもあり、文句の一つでも言ってやろうと外を確認したりもしたが、今は全くしない。

どういう訳かこの声の主、全く姿が見えないのだ。

かと言って幽霊等を信用していない僕はこの現象に微塵も恐怖心を感じてはいなかった。

「ぉ~ぃ」

チッ!また呼んどる。

ベッドに座りタバコに火をつける。

「お~ぃ」

またや!ほんまうるさいわ!

ん?声大きなった?

今までは微かに聞こえる程度だった声が少しずつ

大きくなっている様に感じた。

幽霊を信用してないとは言え、少し気味悪くなって来た僕はシャワーでも浴びてスッキリしようと浴室へ向かった。

頭からシャワーを浴び、溜まった疲れを流していたその時…

「お~い」

!!?

すぐ近く…この浴室の中で声が聞こえた。

今は頭からシャワーを浴びている状態。

目は閉じている。

目の前には鏡。

後ろは半透明の浴室の扉。

この鉄板ともとれる状況に僕は必死に考えた。

これやっぱり目開けたら後ろに何かいるパターン?

扉の向こう?それともこっち?

等々、考えてはみたがラチがあかないので思い切って目を開ける事にした。

せ~の!で目を開ける。

鏡に映る僕…そして後ろに半透明の扉…

ただそれだけ…

何やねん!

安心感とドキドキした自分に対する恥ずかしさを感じ思わず突っ込みを入れる。

やっぱり疲れてるんかなぁ?

シャワーを止め、蛇口から冷水を出す。

冷たい水で顔を洗い気を引き締める。

鏡に映った自分の両頬をパンと叩く。

「お~い」

あぁそういう事か…

そら探しても見つからんわ、

鏡の中、僕の口が動く。

「お~い」

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