中編5
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~ミナミの誕生日~

・・・今日は、友人の誕生日だ。

どうやら私は友人の『命日』を覚えていられない性質らしい。

だから、誕生日に向き合う。。

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私がバツになり、地元へ戻って数ヵ月後、雪のちらつく寒い日に連絡が入った。

「・・ミナミが死んだ。」と。

前出の『監視カメラ』の頃だった。

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あの頃、私は自活することに専念し毎日多忙だった。

それを振り返ると、今も胸が苦しくなる。

『多忙にかまけてないで、もっと電話していれば、この結末じゃなかったのかも』と。

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私が<ミナミ>と知り合ったのは、もう随分と前の話だ。

心療内科の診察を終えて外へ出ると、知った顔が私に話しかけてきた。

よく待合室で一緒になる女性だった。

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「あのぅ・・急に話しかけてすみません」

私は反射的に営業スマイルを彼女に向けた。

「どうされましたか?(^^」

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「私は、ミナミと言います。貴女をよくここで見かけてまして、お話したいな~って思ってしまって・・それで今日は思い切って話しかけてみました」

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ミナミの話では、待合室にいる私を見かけるが、特に具合悪そうな感じがしない。

それに、事務の人と話してる時も楽しそうに話してる。

1人で本を読んでる時などは近寄りがたい雰囲気なんだけれど、お喋りしてみたい。

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ここ数ヶ月、そんな事を思いながら過ごしていたのだ。と。

私は営業スマイルを保ったまま、適当に相槌を打っていた。

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丁度、徒歩1分程の処に喫茶店があった。

「小雨もパラついてきたし、お茶でもしましょうか?」

と誘うと、嬉しそうに付いてきた。

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「ヘイ!マスター♪久し振り!」

『おー!沙羅ちゃん!らっしゃい~!』

結婚する直前、少しバイトしてた店だった。

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それから他愛の無い話をし、互いに何の目的で通院してるのかを話し、連絡先を交換した。

ミナミの置かれている環境が・・

想像できないほど劣悪だった。

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彼女からは、よく愚痴電が掛かって来た。

内容は、姑のコト。

泣きじゃくり、発作が起き掛けてる時は自宅まで駆けつけたりもしてた。

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私の姑さんも、それなりに酷かったが・・

彼女の姑は、逸脱していた。

ホントにそんな事が起きてるのか?と思うほどだった。

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時折、姑のご飯茶碗に髪の毛が混入していた。

『ちょっと!アンタ!嫌がらせもいい加減にしなよ!なんて汚ったないコトすんだよ』

・・初めは、自分のせいだと素直に思い謝罪してた。

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だが。彼女は目撃してしまったのだ。

姑が自分で髪の毛を抜いて、自分の茶碗に仕込む姿。

(今までのこと、まさかお義母さんが??)

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そして、また別の日には

「アンタ!あたしに虫でも食ってろって言うのかい?」

姑自らが作ったサラダに青虫が付いていた。

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それ、お義母さんが作って下さったサラダ・・

言いかけた所で、顔に青虫サラダを押し付けられる。

それだけじゃなく、無理矢理口に青虫の付いたキャベツを押し込まれそうになる。

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旦那さんに訴えても味方してくれないどころか

「お前が全部やればいいだけの話だろう」と取り合ってもらえない。

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こんなのは、序の口だった。。。

そんな環境から抜け出すべく、姑との別居も旦那さんに持ちかけたが、一蹴された。

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『もう・・離婚しようかな』そう口にした途端、旦那さんから殴られた。

「お前が悪いのに、人のせいにするな」

絶対に、離婚なんてしてやらない。

そう宣言されたらしい。

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その最悪の旦那さん。。

性的暴行も激しかったのだそうだ。

AV女優さんのように縛り上げられ、異物を挿入され、いたぶられる。

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それも、脇でAVのDVDを再生しながら、同じようにされるのだと。

あまりの屈辱に、やめて欲しいと泣いて懇願しても逆に煽るだけらしく、更に暴行は激しくなるのだと。

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そんな話を、いつも聞いていた。。。

私には、なにもしてやれない領域だ。

いっそ家出でもしてみる?

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そう持ちかけてみたが、見つかった時が恐ろしいと。

行政に相談すれば、見つからないように保護してくれるよ?

そうも言ってみたが、彼女は頷かなかった。

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子供たちが・・連れて行けたらいいけど、学校とかからバレちゃうだろうし。

とか

生活が苦しくなったら、満足に育ててやれないかもしれないし。

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<出来ない言い訳>を繰り返すミナミ。

それでも、どこかで逃げ出したいと思ってるのは間違いなかった。

どうにもしてやれない私は、せめて話だけでも聞くほか無かった。

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そうこうしてるウチに、私は自分のバツを確定させ、地元に戻ることになった。

ミナミには、だいぶ泣かれた。

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沙羅さん居なくなったら、誰が私を助けてくれるの?

・・・

辛くなったら、いつでも電話しておいで。

なんだったら、私のトコに逃げてきてもいいんだよ?

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そんな会話をし、私は地元に帰ってきた。

多忙の毎日で、主婦時代の友人たちともなかなか連絡が取れずにいた。

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<ミナミが死んだ>

それも・・仕事中に何度も掛かって来ていた電話を昼休みまで放置し、やっと掛け直したのだった。

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ミナミは自殺だった。

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姑に散々、風呂の湯に窒息寸前まで顔を押し込まれた場所。

「アンタ、こーゆーのが好きなんだろっ!」

旦那の性癖により、縛られたまま折檻を受けた場所。

「どうだ?気持ちいいだろう?縄が似合うぞ」

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そんな場所を『選んだ』ミナミ。

浴室の乾燥ハンガーにぶら下がったのだそうだ。

遺書には『あんな姿を動画で世間に晒されたのは、もう我慢できない』と書いてあったようだ。

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何故、死を選ぶ前に電話くれなかったんだろう。。

ミナミの事だ。私が忙しいと言ってたから。。

遠慮して電話しなかったんだろう。。

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ミナミの死を告げる声を聞きながら、私の手から携帯が滑り落ちた。。

その日は、もう仕事になどならず早退した。

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呆然と運転し、帰宅。

ミナミの自宅へ電話をかけた。

明るい声で姑が電話に出た。

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「あらぁ!沙羅さん♪元気にしてたぁ?」

「・・ミナミが亡くなったと聞きました」

「そーなのよ!迷惑だったら、ありゃしないわ。警察やら何やら来るし~」

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・・ミナミが死んだってのに、嬉しそうですね?あなた達が、殺したんですよ。

表情の無い声で、冷たく言い放って電話を切った。

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・・今日は、ミナミの誕生日。

だから、彼女の画像を見ながら・・

・・一緒に飲み明かそうな・・

(そっちは、どうよ?快適かい?)

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