中編3
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部屋の中

ある男が海外に行った時のことだ。

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ヨーロッパに古くからある城を、ツアリスト用に改装したホテルに男は泊まった。

食事も大変美味しく、フロントマンの対応も心地良い。

男は大変満足し、明日からの旅行の予定を考えながら眠りについた。

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その夜のことだ。

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ドン…ドン…

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部屋のドアを叩く音がする。

何かあったのだろうか…?と扉を開けるも誰もいない。

寝惚けていたのだろうと思い、男は再びベッドに入った。

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するとしばらくもしないうちに、また扉を叩く音がする。

意識ははっきりしているが扉を叩く音は鳴り続けている。

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少し不機嫌になりながらも男は扉を開けるが、また誰もいない。

扉から顔を出し廊下を見ても、それらしい人影は見当たらない。

今回ばかりは意識もはっきりしていたため、聞き間違いとは考え難い。

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「こうなったら犯人を突き止めてやろう」

すっかり眠気も覚めた男は、扉を叩く音をベッドに座って待っていた。

すると案の定、扉が再び叩かれる。

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男は扉に猛ダッシュし勢い良く扉を開けるも、やはりそこには誰もいない。

こうもすぐに逃げられるだろうか?

段々と男は気味悪く感じ、扉を閉めた。

するとその時だ。

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ドンドンドンドン!ドンドンドンドン!!

shake

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もの凄く激しく扉が叩かれる。

あまりの激しさとタイミングに男はハッと振り返る。

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まるで自分が扉を開けるのを心待ちにしているかの如く、音は鳴り続けている。

身体の芯から震えながらも、男は一歩一歩扉に近付いて行く。

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そして男がノブに手をかけた瞬間、

激しい衝撃と共に男は扉に叩きつけられ意識を失った。

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カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。

男がすうっと目を覚ますと、部屋の扉の前に自分はいた。

昨日の夜の事を思い出し、背筋に寒気が走る。

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着替えもそこそこに男は部屋を飛び出し、フロントまで一直線に駆け寄った。

男のあまりの慌てように驚いた女性フロントマンが「どうしましたか?」と尋ねる。

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男が昨日の夜のことを伝えると、その女性は妙に納得しながら男にこんな事を話した。

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20年程昔、このホテルで火事が起き、女性が一人亡くなった。

既に眠っていた女性は火事が起きていることに気が付かず、気が付いたのは部屋中に煙が充満した頃だった。

女は大慌てで扉に駆け寄ったが扉が開かない。

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女は焦るあまり、自分がチェーンロックをかけていることを忘れていたのだ。

その合間にも煙はどんどん女性の身体を侵食し続け、

必死に助けを求め扉を叩き続けた女性だが、救助が来る前に死んでしまった。

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自分の泊まった部屋は、その女性が亡くなった部屋だったのだ。

そしてその火事の後再び改装し、現在に至るのだという。

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男はその話を聞いた途端に、再び背中に寒気が走った。

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何故ならば、その話の通りなら、女性が亡くなったのは「部屋の中」ということになる。

ということは、あの扉を叩く音は外からしていたのではなく……

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