中編6
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拾い猫

私の家では、猫を一匹飼ってます。

かみさんも娘も私もとても可愛がってます。

しかしその猫には癖があり

何時も何か咥えてきては玄関や庭の前に置いてゆきます。

それが日によりゴキブリやねずみやカブトムシだったりします。

拾い癖というか猫のおもちゃになるものが無いので

くわえて着ては遊び飽きると捨てる始末です。

そんなある日。

私が帰るとかみさんが珍しく猫に魚の缶詰を食わせていました。

「どうした風の吹き回しだ」と思いましたが

あまり気にも留めませんでした。

次の日の事です

かみさんが会社に電話してきて

「具合が悪いから早く帰ってきて」と言ってきました。

駆けつけると携帯電話と一緒にキッチンの隅でうずくまってました。

私は子供そっちのけでかみさんに近寄ると、唇は紫になり顔は真っ青でした。

頭に手をやるとすごい熱です。

私は車の助手席に子供、後ろに上さんを抱きかかえて乗せて、

近くの病院に連れてゆきました。

病院では現因が判らず、とりあえず熱さましの注射をしてくれました。

こんな処置ではだめだと思い

私は50km離れた日本人の医師の居る総合病院に運びました。

病院では検査をして破傷風である事が分かり即座に入院でした。

かみさんはうなされる中、

何かいってますが聞き取る事ができませんでした。

破傷風の感染場所どこかに傷があるとの事で

傷を探し始めました。

看護師さんはふと右手の薬指の絆創膏に目が行き

「これだ」と言うと絆創膏をはがしました。

薬指の第1関節は紫色にはれ上がり、

腫れの中心には刺し傷のような痕が残ってました。

医師はそれを見ると「レントゲン」と叫び、

レントゲン室にかみさんを連れて行きレントゲン撮影を行いました。

写真を見て指の骨まで達する棒状のものが刺さってる事がわかり

切除作業が早速行われました。

麻酔をしてその場で切開をすると指の中から

3mmほどの白い棒状のものが出てきました。

シャーレーにそのものを入れると、

医師が「これは骨かもしれない」と言いました。

「魚かな?それとも動物かな?調べて見ます。これが原因です。

もう奥さんは大丈夫です。」と言うと、医師は

私の肩をポンとたたき奥の部屋に消えて行きました。

私はそのとき初めて2歳の子供の事を思い出し、

どこに行ったか気になり探しました。

車に戻ると子供はすやすやと車の中で寝てました。

上さんを病院に残し私は子供を連れて近くに住む姉の家に預けに行きました。

家に戻るともう夜中の2時を過ぎてました。

ビールを飲み眠くなるのを待ちました。

玄関先ではまた猫が騒ぎ始めました。

「ニャー、ニャー、ニャー」

また何か捕まえて持ち帰ってきたのでほめてほしくて鳴いてます。

仕方なく私が出ると「案の定」玄関先には短い棒状のものが転げてました。

猫をよしよしとなでて、家の中に入れると

その夜は気にも留めず寝てしまいました。

朝起きて会社に出勤するときです。

昨日猫が咥えてきた棒状ものが玄関に転げているのに目が止まりました。

ヨーク目を凝らしてみると棒状のものは人の指の関節のように見えました。

丁度中指か薬指です。

そばによるとやはり爪が着いていて紛れもなく人の指です。

私は現状のままで警察を呼びました。

15分ほどすると警官が2名、家の門の前に現れました。

私はすぐそばに人の指が落ちていると説明して

指の落ちている方向に案内しました。

警官2名は指を眺めて相談すると一人がビニール袋を出して

保管し始めました。私は少し安心して警察に聞きました。

「殺人事件でしょうか?それとも事故でしょうか?」

警官は、「どちらでもありません。猫が拾ってきたのだから墓場やお寺からくわえて来たものです。一応預かって処理します。」

私はその言い方が妙に気に係り反論しました。

「もしこの近くで人が殺され埋められたものなら大変なことだ。」と言うと

「日本人は大げさだ」と言うと立ち去ってゆきました。

私は立ちさった後も警官の言葉を考えてました。

「猫の行動範囲はそんなに広くない。せいぜい100mから200mぐらいだ。

その範囲の中にはお寺など無い。墓場も無い。

お寺は10km以上離れている。この近くの家や庭に人が埋められている」

と推測しました。

会社に出勤して帰宅途中で病院によりかみさんの具合を確かめました。

もう、元気になり受け応えができる状態まで回復してます。

かみさんと話していると昨日の医師が入ってきて、

「大変な事が分かりました。」と言うと話し始めました。

「昨日の奥さんの指に刺さっていたのは人の骨です。

どこで刺してきたか教えてください。」

最初はかみさんも口を濁しましたが話し始めました。

「2日前に猫が指輪を銜えてきて玄関前に置いていったのです。

その指輪はあまりに綺麗だったことと

本物で高価なものだったので思わず、指にはめてしまった」と言う事でした。

それで猫に魚の缶詰をやってたのか

妻は「宝石箱の中に入っているので持ち主に返してください」と

私に頼みました。

医師は「きっとその指輪の持ち主の骨がささっていて

奥さんを苦しめたのでは?」と言うと立ち去りました。

私は自宅に帰り宝石箱を探しました。

中にはかみさんが言ってた指輪が布に包んでしまってありました。

さて、この指輪どうして元の持ち主に返そうか?私は考えました。

いいアイディアが浮かばないまま一週間が過ぎて、

妻も退院してきてまたもとの生活に戻りました。

そして3日目

私は同じ夢を何回も見続けました。

老婆が時々夢に出てきて、「指輪を返して」とつぶやく夢を見ました。

帰さなくてはと思いつつ10日が過ぎました。

きっと猫がくわえてきた指にあの指輪がはまっていたのだと思うと

申し訳なさに余計あせり始めていました。

15日目。

娘を乳母車に乗せ散歩する途中で、100mから200mの

範囲の家の玄関を眺めたり内の猫を探してました。

2時間うろうろしてる間に、娘が猫を見つけ騒ぎ始めました。

「ねこねこ」何回もうるさいぐらいに騒ぎます。

猫は丁度、私の家の真裏にある家の玄関で寝ていました。

私や娘が声を掛けると寄ってきました。

私は「この家の人が怪しい」と思い、

門のフェンス越しに声を掛けましたが誰も出てきません。

隣の人に聞いてみましたが「3週間以上留守ですよ」と言ってます。

猫はフェンスの下をくぐりまた中に入り、

家の戸の隙間から部屋に入り出てこなくなりました。

いくら声を掛けても出てきません。

私は隣の人が見てるので安心してフェンスを乗り越えて、

家の戸を開けたときでした。

中には椅子に座ったままの老婆が机に頭を倒す形で

死んでました。

指や腕はすでに腐敗して床に落ちてました。

私は隣の人がフェンス越しに見ていたので

「警察を呼んでくれ」と叫びました。

15分ほどして警察が来ました。

事情を説明しました。こないだの指の事も説明しました。

警察の検証で、おばあさんはもう3週間前に死んでる事が分かりました。

身よりは一人娘が居て私が連絡をして呼びました。

娘と言ってももう60歳でした。

葬式をあげて1週間。

私と妻は指輪を持って誤りに行きました。

娘さんに指輪を返すと、

「これは奥さんに上げます。母が猫に託して

奥さんやだんなさんに知らせたかったのだと思います。

母も早く見つかり、よかったと考えてます。」というと

指輪を上さんの指にはめました。

今も猫はその老婆の家に向かいかえってこない日があります。

よほどかわいがられてたのか、

家ではきっとおばあさんの霊と遊んでるのかもしれません。

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うちで最初に飼った猫も色々咥えて戻って来てました。
ビービー鳴いてるセミを咥えて来た時には参りましたよ(笑)

カラスはもういいですよ
猫にしましょう。