中編5
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飢餓トラック

昔運送屋で働いたときの話です。

運送屋といっても「もぐり」に近く、

米をY県で出荷が間に合わないとN県から農協伝いで送ります。

俗に言う「闇米」の配送です。

今回はY県からN県に配送します。

4tトラックに6t以上の米を満載して

警察の取締りの少ない夕方や夜中に配達します。

私ともう一人の合い方が交代で運転して目的地まで運びます。

道は裏道ばかり通るので4時間かかるところを10時間かけて運びました。

その日も峠の近くに着たのは夜中の1時でした。

相棒が「運転を変われ」ということで私が交替しました。

これからの工程は、朝の4時に目的の農協に着くことです。

私は後ろで十分寝ていたのでやる気十分で運転しました。

丁度峠の上り坂を越えたところで下り坂が続きました。

私は速度を50kmまで上げました。

これ以上上げると米を満載してるのでブレーキが利かない恐れがあるから、

気をつけて運転しました。

大きなカーブを曲がってるときでした。

闇米を満載してるのでブレーキは甘くなってます。

しかし急に速度が落ちました。

アクセルを踏みましたが速度は上がりません。

そうこうしてる間にカーブをゆっくりと曲がりきりました。

突然。

曲がりきったカーブの横から黄色いヘルメットを

かぶった人が手を振り、車の前に飛び出しました。

wallpaper:235

私はブレーキを踏み工事の人の前で止りました。

突然止まったので

後ろで寝ていた同僚も、「もそもそ」と起きました。

「どうした?」眠い目を擦り叫びました。

私は「工事夫が車の前に出てきて停まった」と言うと

「どれどれ、」右の窓を覗き込みました。

私はトラックの窓を開けて工事夫の人に尋ねました。

「何かあったのですか?」

工事夫は

「後1km先で工事をしてます。通行できないので

100mほど行くと左に入る回り道があります。

そこを通ってください」と言うと頭を下げた。

私たちは、この峠で工事をしてる情報を聞いてなかったので首を傾げたが

闇米を運んでるし、捕まることを考えると言う通りにするしかないと判断した。

工事夫を横に見ながら車をゆっくり発進させた。

右のサイドミラーを見たがいつの間にか工事夫の姿は消えていた。

カーブを曲がりきり100mほど行くと、左に入る道があり

「言った通りだ」と疑りもせず曲がった。

道はトラックが1台通るのがやっとの旧道でした。

道は舗装が無くデコボコ道で米が落ちないように気をつけて運転しました。

道は奥に行くほどウネッていておまけに霧まで出てきて、

ライトの明かりが心細くなってきた。

くねくね道を2時間も走っただろうか。

「もう峠はとっくに越えただろう」と思うのと裏腹に、

くねりの道は永遠と続いているようにライトの先に見えた。

私は心細くなり寝入った同僚を起こした。

車を止め懐中電気を持つと外に出て

50mほど歩きだしました。すると道の終点であろう

山のような影が見えそこの入り口であろう場所を示す表札が

尽きて斜めに傾いてるのが懐中電気の明かりで判った。

字を読もうとしたがもう消えかけて読めない。

どうやらこの場所が終点らしいことがわかり

あの工事夫からだまされた事がわかった。

早く車に戻り、元の国道に出て時間をとりもどさなければと思い

車に戻る道を急いだ。

車に戻ると同僚が居なくなっていた。

車のエンジンはかけっぱなしで、ヘッドライトも

着けっぱなしだった。

ドアを閉めて外に出て、同僚を探すべくまた夜道を歩いた。

100mほど着た道を引き返すと同僚が道の隅にうずくまっていた。

私は同僚に声をかけてると同僚は抱きついてきた。

「どうした」と聞くと

「人の群れが押し寄せてきた。踏み潰されると思い

道の脇でうずくまっていた。」と言うと

「早くこの場所を出よう」といい車の方に向けて走り出した。

同僚の後を追うように私も走った。

車に戻るとエンジンを駆けUターンしようとバックした時、

shake

バックしたバンパーに「ドドーン」という衝撃を感じました。

二人は顔を見合わせて何かにぶつかったと思いこみ

トラックを止め両ドアを開けて二人で後ろのバンパーに近づいた。

「何もない????」

どうして体に感じるほどの衝撃を受けて何も起きてない。

5t以上の米を満載してるのに

あの衝撃はなんだったのか???

私と同僚は、首をかしげて、後ろのバンパーを見つめていました。

二人が「ボー」としてる間に、

山道のほうから大勢の人の話声が聞こえて来ました。

この夜中に人の声。

先ほどその声を聞いた同僚はおびえて、「早く車に乗りこの場所を去ろう」

と言うと急いで車の助手席に引きかえしドアを閉めロックした。

私も大勢の人の気配

50人やそこらじゃない200人以上いやもっといたかもしれない人が

近づいてくるので、車に乗るとドアをロックしてエンジンを駆けました。

しかし、エンジンがかからないのです。いくらセルを回してもかからない。

後ろからは大勢の人が押し寄せてくる。

トラックの中

2名は後ろから押し寄せる群衆から逃れることが出来ず、

フロントに伏せる上体で頭を抱えました。

5m、3m、1m 「アー」と私と同僚は声を上げました。

押し寄せる人の群れは、いきなり消えました。

そこには闇の静けさとトラックのヘッドライトの明かりが在るだけでした。

「いま、押し寄せてきたものは、なんだったのか????」

私と同僚は、顔を見合わせて、終始無言のまま車のエンジンをかけると

元来た道に引き返し、国道に出ると車を目的の農協に走らせました。

農協に着き、米を降ろすと農協の職員に昨日の出来事を話しました。

うわさを聞いていた職員の一人が話してくれました。

「あそこを夜中走ってはいけない。」と言うと

「江戸時代飢餓が続き、そのときに飢え死にした人が300人以上

無縁仏として眠っている。」

食べ物が豊富な時代の今、いましめの様に

「夜中に食べ物を積んだ車が来ると出てきて脅すらしい。」

と言われました。

そのことを聞いた私たちは、あの峠を2度と通らないように迂回してます。

Concrete
コメント怖い
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あんみつ姫様
イヤーてれぃさいです。
文章力が無いから、今も書いてますが何か、小学生の作文みたいに
なってしまいます。
元々、絵が好きで美術大学に行きましたが才能がなく挫折
食って行くのにいろいろ職を変わりながら、体験した事を書いてます。
後は映画が好きで、映画は昔の映画から今の映画まで幅広く見てます。
その影響とおばあさんや先祖の因果で、タイに逃れている次第です。
後ほど、気が向いたら因果の小説も載せます、
日本に帰国したいが、帰国すると死んでしまうのではと思うと
非常に怖いです。
だすので、私が文を書くようになったのは、まだ小さな子供に
自分の父親はこのような物を残したと言う生きる証を見せたかっただけです。
それが、今の小説を書くきっかけです。

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hmaさん
はじめまして。飢餓トラック読んでくれてありがとうございます。
角川選考漏れの作品ですので、日の出を見ず終わるのは惜しい
それだけです。
確かに飢餓に関しては、絶好の恐怖の材料だと思います。
私も、偶然話を聞いて震え上がりました。
江戸時代以前は飢餓がすごかったと思います。
内の死んだばあさんもよく飢餓の話をしてくれたものです。

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