中編3
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真冬の夜の怪異①

ある夜、俺は喉の渇きで目が覚めました。

1月半ばの冷たい雨が激しく降る夜でした。

‐‐‐‐‐‐‐‐

子供が産まれてからは、妻と子供達が1階の和室で眠り私は2階に独りで眠るようになりました。

トイレは各階にあるので、2階のトイレに寄ってからリビングへと向かいました。

階段を下りると左手にリビング、正面に玄関、右手に和室があります。

リビングも常夜灯が点いていて(寝たんなだな…)と思いながら水を一杯飲みました。

2階に戻ろうと、リビングを出た時ふと玄関の鍵が開いている事に気がつきました。

妻はよく、鍵をかけ忘れる。電気を消し忘れる。物をしまい忘れる。予定も忘れる…

いつもの事だろうと、鍵をかけて2階へと上がっていった。

‐‐‐‐‐‐‐‐

少しして、うとうとし始めた頃…

ギシッ!

ミシミシミシ・・・

ザーザーと雨音がする中で、奇妙な音に気がつき再び目を覚ましました。

一瞬、気のせいか…と思い目を閉じると

ミシ・・・

ズル、ズズ・・・

やはり、音がします。何かを引き摺るような、そんな音が混じっているのです。

怖くなり、息を潜め全身の神経がその音の方へと集中していきます…

ミシ・・・ミシミシッ!

ズル、びちゃっ・・・

ズズ、びちゃっ・・・

ミシ・ギシッ!

ズルズル、びちゃっ・・・

音は確実にベランダへと近づいていました。

ベランダの下はカーポートとなっているので、上がろうと思えば上がってこれます…。

不審者だろうか…考えているうちに、音は尚も近づいてきます

ギギッ・・・ズル・・・

ギィッ・・・びちゃっ、ズルズル・・・

ゴトッ!

ズズズッ…

ドサッ!

ベランダに上がってきた!

心臓の鼓動が早まる。いつでも対応できるように、身体は半身を起こした状態で様子を伺います…

コンコン・・・コンコン!

静かに、ベランダの戸を叩く…不審者ではないのだろう。少しだけ安堵しました。

コンコン・・・コンコン!

「ねぇ、あけて…」

はっとしました。弱々しい、女性の声で「開けて」と確かに聞こえました。

「おねがい、あけて…」

女性は弱々しく訴え続けています。しかし、時刻は夜12時を回っています。普通だったら、こんな時間にベランダから来る人はいません。

カーテンを開けるかどうか…

ゴンゴンゴン!

「ねぇ、ねぇってば…あけてっ!」

ゴンゴンゴン!

今度は強く叩き、強い口調で訴えてきました。

ゴンゴン!

ゴンゴン!「あけてー!」

あまりの訴えに、覚悟を決めカーテンに手をかける…

恐る恐る、カーテンを開けると…

目の前にびしょ濡れの女性が立っていた。

思わず、腰を抜かしその場に崩れ落ちてしまいました。尻餅をついたのは、これが初めてです…

肩より下まで伸びた長い髪は濡れて、青白い顔に水を滴らせている。

ポタポタと水を垂らす、その顔をよく見ると

妻だった…

「な、何やってんの?」

これが、俺がやっと絞り出せた一言だった。

《終》

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