長編7
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ある夏の出来事

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「あ~、あぢぃ~!」

夏休みに入り、とうとう夏本番。

といっても暑さや汗のジメジメ感が増していくだけで、暑がりな俺にとっては決して喜ばしいことではない(笑)

縁側に座ってアイスを頬張りながら、扇風機の風を浴びる。

冷たい風がほしいのに、生温い風がくるだけで余計暑さを感じるだけだが……(笑)

食べた後に残ったアイスの棒を庭に投げ捨てて、畳の上に寝転んだ。

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「あ~ぁ、最悪だ~!」

こんなに蒸し暑いのに冷房が壊れるなんて……。

農作業をする親を思い浮かべながら、よく働けるなぁ、と思ってしまう。

耳障りなアブラゼミの声にイライラしてきた。

このまま家にいたら気が滅入ってしまう。

ちょっと自転車でウロウロしてくるか……。

扇風機の電源をOFFにして家を出た。

…………………………

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夏休みで学校がないから、学生がいろんな場所で遊んでいる。

公園のベンチでゲームをしてる小学生や、グラウンドでサッカーをしている中学生。

部活動の帰りだろうか?ジャージ姿で自転車に乗る学生。

田舎だから田畑ばかりが目立つ。

民家や空き地には野良猫たちが群がってる。

おばあちゃんが一人でやっている駄菓子屋でコーラを買った俺は、また自転車をこぎはじめた。

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「よぅ!」

声をかけてきたのは幼なじみのショウヘイだった。

隣町の高校に通うショウヘイは部活動の帰りだったらしく、泥だらけのユニフォームを着ていた。

…………………………

「毎日暇で暇で……、しかも今冷房が壊れてるんだよ……」

「うわぁ……最悪じゃん、俺ならたえきれねぇわ……(笑)」

少しの間喋った俺たちはじゃあまた、とお互い帰ることに。

するとショウヘイが何かを思い出したらしく、俺を呼び止めた。

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「そういえばお前、アレには行くのか?」

「アレ?」

「祭りだよ、来週あるじゃん!」

「あ~忘れてた!」

…………………………

毎年行われる祭りが来週あるらしく、一緒に行こうとショウヘイが誘ってくれた。

俺はすぐに行くと返事して家に帰った。

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冷房が壊れた部屋で扇風機をON。

窓は網戸にして夜を過ごす。

ただでさえ暑がりなのに勘弁してくれよ……。

そう言いながらもいつの間にか眠っていた。

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…………………………

…………………………

…………………………

…………………………

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「………………て」

…………………………

「さ……し……」

…………………………

「さ……して」

「探して」

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「わぁ!」と自分の声で目が覚めた。

首を絞められていたかのような息苦しさを感じる。

時計を見ると朝の四時になろうとしていた。

今日はまた一段と暑いのか、着ているタンクトップは汗でびっしょりに。

気持ち悪~、と言いながら着替えてミネラルウォーターを飲む。

自分の部屋に戻るとカーテンが風でなびいている。

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ん?

…………………………

おかしい、窓が開いている……。

確か俺は網戸にしていたはず……。

なんで開いてるんだ?

何者かが出入りしたのか?

けれど部屋は荒らされていない。

考えすぎか?

…………………………

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結局、あれから俺は眠れないまま朝を迎えた。

親は早朝から仕事に行ったみたいで、家にいるのは俺だけのようだ。

洗面台で顔を洗おうと蛇口に右手を伸ばしたとき。

「なんだコレ……!」

右手首が赤くなっている。

誰かに強く掴まれたような手形で。

痛さや痒みはないが、しばらくの間目を離すことができなかった。

…………………………

…………………………

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祭り当日になり、そろそろ行こうかな?と俺は家を出た。

ショウヘイと待ち合わせしている場所は、出店が並ぶ道の途中にある古い神社だ。

まだ日は沈みきってないのに、子供連れの人や友達同士で来てる人で賑わっている。

待ち合わせ場所にまだショウヘイは来てないようだ。

神社の鳥居で駄菓子屋のおばあちゃんが綿菓子とラムネを売っている。

「おばあちゃん、ラムネ一本ちょうだい」

お金を渡してラムネを受けとると、おばあちゃんが俺の顔をジーっと見た。

俺がキョトンとしているとおばあちゃんはニコッと微笑んで「気をつけてね」と言った。

もう一度振り返ると、おばあちゃんはまだ俺の方を見ていた。

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首を傾げながら賽銭箱がおいてある階段に座ってラムネを飲んでいると神社の裏から音がした。

…………………………

カランコロン……

カランコロン……

…………………………

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今度は声が聞こえてきた。

…………………………

「………………て」

…………………………

「さ……し……」

…………………………

「さ……して」

「探して」

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「おい!大丈夫か?」

顔をあげるとショウヘイがいた。

口をポカンと開けたままボーッとしている俺にショウヘイが言う。

「ったく、びっくりさせんなよ~!

死んでんのかと思ったじゃねぇか(笑)

名前読んでも返事しねぇから焦ったわ……(笑)」

俺は考え事してた(笑)とごまかして飲み残していたラムネを一気に飲み干した。

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小さな橋でたこ焼を食べていると、ショウヘイが変な話をしはじめた。

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「なぁ知ってるか?

ここから少し歩いた先に誰も足を踏み入れちゃいけない空き地があるんだってさ。

じいちゃんから聞いただけでそれ以上のことは教えてくれなかったけど、行くな!って厳しく言われたよ(笑)」

へ~と頷いて聞いてると、ショウヘイはそこへ行こうと言い出した。

俺はやめとけと必死でとめたが、ショウヘイは大丈夫だと言って聞かない。

俺は嫌々ながらついていくことに。

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橋から少し歩くと、立ち入り禁止と書かれた看板が見えてきた。

ショウヘイが言う空き地はこの看板からもう少し歩いた場所にあるらしい。

「ヒャ!」 「ヒョエ!」 「ワッ!」

木の枝を踏むたびに声を出す俺を、ショウヘイは笑ってからかった。

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「相変わらずの怖がりだなぁ(笑)

そんなだからモテねぇんだよ(笑)」

「うるせぇな!お前だって彼女いねぇくせに!」

「ハイハイ(笑)かわいいな~(笑)

着いたぞ!」

…………………………

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前には小さな空き地があった。

昔、公園だったのか、ブランコや滑り台が錆び付いたまま残っている。

…………………………

サラサラサラサラ……

風が木々を揺らしている。

ショウヘイは滑り台の上に立って辺りを見渡しはじめた。

俺がビクビクしていると、突然強い風が。

「わぁ!」

ショウヘイが滑り台から転落した。

「ショウヘイ!大丈夫か?!」

駆け寄って名前を呼ぶが意識を失ってしまったようで返事がない。

「どうしよう、そうだ!助けを呼ぼう!」

携帯を取り出して家に連絡するが応答がない。

ダメだ!どういうわけか圏外になっている!

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…………………………

…………………………

カランコロン……

カランコロン……

…………………………

何かの音が聞こえる。何の音だ?

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カランコロン……

カランコロン……

…………………………

近づいてきている!

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…………………………

「………………て」

…………………………

「さ……し……」

…………………………

「さ……して」

「探して」

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…………………………

あの声だ!

辺りを見渡す。誰だ!誰なんだ?!

…………………………

…………………………

「探して」

「探して」

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…………………………

あ…………。

…………………………

空き地の隅に薄く光る何かが見えた。

薄く光る白い何か。

動物じゃない、人だ!

…………………………

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「探して」

…………………………

俺に何かを言いながらゆっくり近づいてくる。

影がくっきりと姿を表した。

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白い着物を着た女性。

黒い髪を束ねて赤いかんざしをしている。

唇に淡いピンクの口紅を塗り、肌は透き通るように美しい。

俺をジーっと見つめる瞳は何かを問いかけているかのような少女のような瞳をしている。

…………………………

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なぜだろう……?

…………………………

目の前にいるのは幽霊のはずなのに全然恐怖を感じない。

美しい女性と見つめあったまま、時が止まってしまったような静けさが辺りに広がる。

彼女は見つめながら言う。

「探して」

「何を探してほしいの?」

彼女を見つめて問う。

…………………………

「私を探して……」

彼女は目を閉じて一滴の涙を流して消えていった。

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…………………………

「私を探して……?」

意味は全然わからないけど、彼女が助けを求めているような気がする。

あの瞳、淋しそうな瞳をしてた。

だけど手がかりなしでどうやって?

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彼女が消えていった場所に光る何かを見つけた。

これは…………。

さわると指先が濡れた。

彼女の涙だ。

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都合よくあったスコップで彼女の涙で濡れた場所をひたすら堀りつづけた。

ようやく目を覚ましたショウヘイにも手伝え!と言って。

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すると……

…………………………

「うわぁあぁぁあ!!」

表れたのは一人の白骨化した遺体だった。

…………………………

こういうことだったのか……。

…………………………

…………………………

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警察の話によると、昔村で一番美しいと言われていた女性がいたそうだ。

村で一番若い二人の男から結婚をお願いされ、一人の男と結婚することが決まり村の人たちは喜んでお祝いしたらしい。

しかし、結婚を断られた方の男がなぜ俺じゃないんだ?!と怒り、女性と男性を殺したそうだ。

男性の遺体は見るも無惨な殺され方で、女性の遺体は見つからなかったらしい。

男が女性を自分のモノだけにしようと自分にしかわからない場所に埋めたんじゃないだろうか?……と警察が話していた。

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数日後、俺は一人であの空き地へ行った。

俺にできることはコレくらい……と花束をおいて目を閉じ、手を合わせた。

帰ろうかな、と花束を見ると小さく光る何かが。

俺にはその何かがあのときの彼女の涙に思えた……。

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沙羅様、ありがとうございます(^^)
褒められると調子に乗りすぎちゃう私にはもったいなきお言葉…(T.T)
嬉しいです♪

沙羅様の作品も楽しませていただこうと思います!

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