中編4
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黒いモノ~嗤う~

物凄く久し振りに<黒いモノ>のお話をしたいと思います。

あれは、私が小学4年の頃。

まだ、母からも『存在否定』されず、父からも『存在否定』される以前の話です。

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よく晴れた日曜のこと。

沙羅宅の裏に住む祖父が丁度外出する所だった。

「あれ?お爺ちゃん。どっか行くの?」

「うん。駅前の文房具屋さんにね。沙羅も一緒に行くか?」

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・・その頃には既に外出禁止令が出ていたので、いちいち父から外出の許可を貰わねばならなかった。

父がトイレに入ろうとしたタイミングでの祖父との会話だったので、トイレの窓に向かい叫んだ。

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「お父ちゃん!お爺ちゃんと駅前の文房具屋行ってきてもい~い?」

トイレの中から、父が答える。

「あ~?うん。」

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承諾があったので、そのまま祖父と一緒にバスに乗り出かけた。

祖父と二人でお出かけなんて、もっと小さかった頃の<お散歩>以来で嬉しかった。

賑やかな駅前の大きな老舗の文房具店。

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そこへ行けば何でも揃うほどの品数。

確か3Fまであった筈だ。

昔から文房具とか雑貨とかに心躍るタイプだったので浮かれていた。

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買い物も終わる頃、「沙羅?欲しい物があったら買ってあげるよ?」

祖父は、細く優しい目を更に細くして言ってくれた。

そして私は可愛い模様の入ったノートと、甘酸っぱい苺の匂いの消しゴムを買ってもらった。

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帰る前にデパートの最上階レストランで、大きな栗が乗ったモンブランパフェをご馳走になった。

既に今日が今年一番の嬉しい日になっていたのだった。

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・・・・そして帰宅。

「ただいまー!あのね!ノートと消しゴム買って貰ったの!」

嬉しくて大きな声で父に報告する。

・・が、瞬時に異様な雰囲気も察知した。

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「・・どこに行ってた。」

既に酒を飲んでいる。

例の鮫の目になってる。

「え?駅前の文房具屋って、さっき言ったでしょう?」

父は覚えていないのか??

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「そんなモン聞いてねぇぞっ!誰が行っていいって言ったんだっ!」

「お昼前、お父ちゃんがトイレに入った時に、外から言ったもの。そしたら、行っていい。って言ったもん」

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言った。聞いてないの押し問答を少しの間、繰り返した。

・・・業を煮やした父は・・・

いつも背後の押し入れ前に置いてある木刀を取り出す。

そして、振りかぶった。。

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『・・叩かれる・・』

咄嗟に歯を食いしばり顎を引いて目を瞑る。

一番、痛くない部分に木刀が当たるように。

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ガンッ!!・・

その時、私は気を失ったんだろう。

固く目を瞑ったのに稲妻のような閃光が見えた。

次の瞬間、頬を強打して意識が少しだけ戻る。

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「・・・・ぅ・・・・」

開かない目を、何とかこじ開けようとした。

私が木刀を喰らって倒れる際に、壁際へ置かれていた小さなテーブルの角に頬をぶつけたらしい。

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暗くぼんやりとする視界には、その小さな折り畳み式のテーブルの脚が見えた。

そして、こちらへ歩いてくる父の足が見えた。

「同情買おうってのかっ!いつまで転がってやがるっ!」

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歩いてきた父の足は、私の腹を蹴り上げた。

私はまだ小学生だ。

蹴り上げられ、軽々と体の向きが左から右へと変えられ、私は嘔吐した。

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さっき、祖父と食べたモンブランの匂いの吐瀉物。

その中に顔を突っ込むようにして、そのまま気が遠くなった。

ふと気付くと父は眠っていて、母が私に何か言ってる。

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「沙羅!いつまでこんなトコで寝てんのっ!さっさと起きて先に夕飯食べちゃいな」

…まだ目がちゃんと開けられない。

ぶつけたのとは反対側の頬が、吐瀉物にまみれて気持ち悪い。

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ゆっくり、ゆっくり起き上がる。

全身が気怠く、鉛の様だ。

『頭・・・痛い・・』

窓の外は、もう暗い。何時だったんだろう。

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力の入らない手足を何とか動かして、洗面所へ向かう。

頭の、痛い部分に手を当てると、そこには大きな『たんこぶ』が出来ていた。

(あ~~ぁ・・随分おっきいなぁ)

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手櫛で、髪を梳かす。

指の間には、ゴッソリと髪が絡みついた。

その量は『お岩様』を連想させるほど。

ダメになった髪が無くなるまで、何度も手櫛で梳かす。

ブラシなんて痛くて当てられなかったから。

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左の頬には、黒い痣が出来ていた。

(テーブルにぶつけたからなぁ・・)

そして、苛ついている母の待つ台所へと向かった。

血の味しかしない夕飯をモソモソと食べて寝た。

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たんこぶは、いつになっても消えてくれなかった。

あの日から私の頭の形は、ハート形だ。

ちょっと違うかな?ブドウの種の形。

そして、メチャメチャ髪を失った頭の右半分は、今も髪の量が断然少ない。

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髪を洗うたび苦々しく思い出す光景だ。

私が父と「言った。」「聞いてない」を繰り返してる時に、部屋の隅にヒョイッと出てきた、いつもの<黒いモノ>

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木刀を喰らいテーブルの角に頬をぶつけ、薄っすら目を開けた時、父の背後で腹を抱えて嗤う<黒いモノ>

吐瀉物に顔を埋めるように倒れ込んだ時、目の端に見えたのは、紛れもなく私を指差し、手を叩き面白そうに嗤う<黒いモノ>の姿だ。

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…もしかすると…

父は本当に『聞いてなかったのかもしれない』

あの返事は…

黒いモノが・・・??

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あの日から・・・

私はモンブランを受け付けなくなってしまった。

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まみっち♪
返事おそくなっちゃってごめんね~(謝)
今日は上司が午前中いないので、その隙に・・・( • ̀ω•́ )✧

投稿し始めた頃は、若い頃の話から徐々に現在へ・・との若干曖昧な時系列でいこうと
思っていたんですけどww
時系列難し過ぎて、アッチの時代、コッチの時代、そして最新のまでゴチャ混ぜになっちゃって
読みにくいことこの上ないでしょ~~(^^;;

あの土地でさえなければ。。。まー今よりかは少しだけマトモな人生を歩んだのかな~?
なんても思うけど、アレがあって今の私なのでね(^^

どんどん吐き出していくぞ~~~~!(何の決意表明やらイミプ)

ONSさん♪
いつもありがとうございます(*^^*)

『(コスモよ~)』に、思わず笑ってしまいましたwwww
はやくお返事かえしたくていたのに、なかなか思うようにいかず、ごめんなさいね(^^;

感情移入して読んでくれたことに、感謝感謝♡
『怖い』にも色んな種類があると思うけど、感情が高ぶろうと、イライラしようと楽しんで読んでもらえたら最高です(*´艸`*)

あ。コメ頂けると、かなりハイテンションで喜んじゃう自分ですwwww

清水白桃さん♪
いつもありがとうございます(*^^*)

白桃さんの仰るように、子供には逃げ場がないですからね~。
でも、修行ではあったんじゃないかな?
結婚時代も【あの家で生きてきたんだから、何があっても耐えられる】って、変な自信ありましたw
ところが、オットット・・な感じでバツになりましたけどね~アハ

今、白桃さん初め、この怖話の皆さんがいてくれて、本当に幸せです(*^^*)
これからもよろしくおねがいしますね♪

牡丹さん♪
ごぶさたです(*^^*)

ず~~~~っと、『ワタシ、マッチ売りの少女』みたいって思ってた時代がありましたw
あとは『シンデレラの生まれ代わり』とかwwww
最低な親との認識はあっても、そこはやはり血の繋がりなんでしょうね・・。
決定的に【拒絶】される前は、何があろうと、私の根底には愛情がありましたから。

黒いものは、きっと【誰かの不幸が面白くて楽しいヤツ】なんでしょうね。
生きた人間の中にも、そういうひと居ますしね。

体調が安定してきたら、またUPしていきますので、よろしくお願いしますね(*^^*)

のんさん♪
お返事遅くなってすみません(^^;
ちょいとガラにもなく、か弱いものでww
体調不良にて、チラ見しかできませんでした凹

黒いものの正体は、全く不明なんです(T T)
アヤツさえ居なければ・・・・なコトが多くてねぇ~(遠い目)

沙羅さん、お久しぶりです。
ちょっと、新作を読むペースが遅くなっておりまして、只今追っかけ読破中です。
沙羅さんの新作が出ていることは知っておりましたが、沙羅さんのお話しって、順番に読んでいきたいお話しなので、あえて先読みはしなかった…ら、こんなに遅いコメントになってしまいました(´д`|||)

そうですね…最初の沙羅さんのお話しは、ご両親の壮絶な扱いだったけど、最近のお父様のお話しや、お母様との会話から薄れつつあったのですが…
やはり、許せん!
操られていたとは言えお父様の行動も、お父様が怖かったからとは言えお母様の言動も…
なにより、この黒いモノ!!!
こいつがいなければ、沙羅さんの幼少期はずいぶん違ったのではないかと思うと、尚更です。

拝見させていただきました。
あまりにも衝撃すぎてうまく言葉が出てきませんが
拝見している最中ずっと心の中で
「燃えろ!俺の小宇宙(コスモ)よ~!!」と連呼しながら怒りを鎮めておりました。
逆に色々と気持ちが高ぶってしまったのも事実ですが・・・あはは。
こんな内容のコメントで申し訳ありません。
沙羅さんが今お幸せなら嬉しく思うのですが・・・。
よく分からない内容ですいません。

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まりかちゃん♪
どもども(*^^*)

そうなんだ?やはり<口にしてはいけない事>が存在するんだね。。

追い出すのに精一杯。って、ほんとヤバいモノだったのね(T◇Tll)
でも、出て行ってくれて良かったよぅ~~

ぜってー飛んでいくから、必ずHelp出すんだよぅ(*^^*)

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