女子アナ「澳国の皇太子が暗殺されました」

中編5
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女子アナ「澳国の皇太子が暗殺されました」

自宅で一人、夕食を食べている時。

何気無く僕はテレビを付ける。

チャンネルは適当。

画面に映し出されたのは、お馴染みのニュース番組。

画面の向こう側の女子アナウンサーが、画面のこちら側の僕に向かって語りかけてくる。

『本日未明、[米]国で旅客機の墜落事故がありました。なお、乗客に[日]国人はいませんでした』

女子アナが、この国の人間に犠牲者がいなかった事を嬉しそうに語っている。

『また、昨日[澳]国の皇太子が銃撃を受け暗殺された事件ですが、犯行に及んだ人物は[塞]国のテロ組織の一員と目されており、[澳]国は報復の構えを見せています]

…。

ふーん。

特に興味を引くような話題もない。

僕はチャンネルをバラエティ番組に切り替える。

若手芸人の下品な奇声が部屋に響いた。

朝、携帯のアラームで僕は目を覚ます。

…早く仕事に行かなくちゃ。

気怠い体を無理矢理布団から引き剥がし、洗面所に向かう。

歯を磨きながら、ふと携帯の画面に目をやると、登録しているアプリから今日のニュース速報が届いていた。

見出しは、

『服山雅晴、電撃結婚!』

有名芸能人の結婚のニュースだった。

アプリを開いた僕は、その内容を読む。そして、

…結婚かぁ。はぁ…。

今だ未婚のわが身に溜息をつく。

その時、

ピロリン♫

他のニュースが届いた。

『[澳]国、テロ組織を匿う[塞]国首都を空爆。交易施設を破壊』

ニュースの見出しだけ眺めて、僕は携帯の画面を消す。

早く仕事に行かなきゃ。

仕事が終わり、疲れ果てた僕は電車の座席にもたれ掛かる。

と、隣の席のオジさんが、バサリと新聞を開いた。

開かれた新聞の文字が目に入る。

『欧州各国の同盟国が戦争に参加。[独・伊・澳]三国同盟と[英・仏・露]三国協商による全面衝突。欧州各諸国は国民総動員も検討』

…外国は大変だなぁ。

僕はイヤホンで耳を塞ぎ、不要な情報をシャットアウトするように、目を瞑る。

好意を寄せていた女性と、食事をする機会を得た!

当日はオシャレせねば!

浮つく足取りで僕は久しぶりに街に出掛ける。

交差点で信号待ちをしながら、ビルに備えられた街頭テレビに目を向ける。

超大型の液晶画面に女子アナが映し出されている。

『[日・英]同盟により、[日]国は自衛隊派遣を決定』

『派遣に伴い暫定閣議決定により安全保障新制度が始動』

『自衛隊、[華]国領土内に駐屯基地設立へ』

…?。

戦争は欧州で起きてるんじゃなかったっけ?

なんで隣の[華]国に、うちの国の自衛隊を派遣するんだ?

僕の頭に小さな疑問が浮かぶ。

同時に、信号が青になった。

…ま、いっか。

そんな事よりも、買い物が大事だ!

その小さな疑問は、跡形もなく僕の脳裏から消え去った。

夕食を食べながら、テレビを付ける。

『[独]国より攻撃を受けたとした[米]国は三国協商に協力を表明。[独]国及び三国同盟に報復攻撃を行いました』

『その結果、三国同盟は解体。ベルサイユ条約により[独]国は膨大な賠償金と領土の没収が行われます』

『また、[華]国へ進軍・駐屯した我が[日]国は、その領土を拡大。今後も進軍を続ける予定です』

…戦争が終わったのか。

ま、どうでもいか。

僕はチャンネルを流行りのテレビドラマに切り替える。

テレビ

新聞

雑誌

携帯電話・スマートフォン。

様々な情報媒体があった。

見ようと思えば目を向けられた。

聴こうと思えば耳を傾けられた。

「明日も仕事か。嫌だなぁ」

「彼女とのデート、どこへ行こう」

「最近、ドラマもバラエティもつまらない」

「ああ、疲れた。もう他の事はどうでもいいから、早く寝よう」

しかし僕は、目を瞑り耳を塞いだ。

何気無く。当然のように。

興味がなかった。

自分に被害さえ無ければ、それでいい。

僕の周囲が変わらなければ、どうでもいい。

それでよかった。

テレビのニュースキャスターが喋る。

『[米]国に端を発する株価暴落により、世界的規模での経済恐慌が起こっています。世界大恐慌と言われるこの経済危機に対し、[米]国はニューディール政策を施行、[英][仏]はブロック経済を実施し、大恐慌による経済被害を抑えようとしています。

が、先の欧州大戦により疲弊した国が、どうやってこの大恐慌を乗り切るか。それが今後の課題と言えましょう』

…ふーん。

その数日後、

『過去の欧州大戦に領土縮小と経済制裁を与えられていた[独]国は、自国の領土を取り戻す事が大恐慌への対抗策とし、[英]国に侵攻を開始しました』

『[独]国は[英]国本土に大規模な空襲を実行。この一連の軍事行動には、過去の大戦における報復的な意味合いも含まれているではないかと推測されています』

…また、どこぞの国が戦争を始めたのか。ま、俺には関係ないけどね。

その数日後、

『侵攻を決断した[独]国新大統領の働きによって[英]国は劣勢となり、更には[伊]国と協力し近隣諸国へも進軍、その領土と支配を広げています』

『また、[独]国を脅威と見た[日]国は[独]国と同盟を結び、ここに[日独伊三国軍事同盟]が誕生しました』

ふと携帯の画面に目を向けると、

『[英]国、[米]国に支援を要請]

『[米]国はこれに同意し、欧州各国へ軍事的援助を開始』

その数日後、

『[米]国は[日]国の、[華]国への領土侵攻を疑問視』

『高まる緊張』

街の街頭テレビに、脂ぎったオヤジが映っている。

『[米]国は[日]国に[華]国からの撤退を要求。が、総理が拒否]

そのテロップの後ろで、額に浮かぶ汗を拭くオヤジが喋り始める。

『先日の会談の際、あの要求を目の前にした時、私は「これは我が国への自殺の要求にひとしい」と感じ、目がくらむばかりの衝撃にうたれました。同時に「この会談が最後通牒である」ことを認めざるを得ませんでした』

…このオヤジは、一体何を喋っているんだろう?

数時間後。

携帯の画面にニュースアプリからのメッセージが浮かぶ。

『[日]国、真珠湾を攻撃』

『[米]国、本格参戦』

そのニュースを境に、戦争に関するニュースは流れなくなった。

ピタリと止まった。

気のせいか、自衛隊入隊の張り紙やコマーシャルが増えた。

買い物に金がかかるようになった。物価が上がった。

健康診断の回数が増えた。

…いや、体力測定だったかな?

引っ越す人が増えた。

知らない間に会社からいなくなる人間が増えた。

誰も戦争の話題には触れない。

触れたくないのか、

又は、

触れさせないのか。

目も耳もあるのに、

何も見れない、

聴こえない。

いや。

【誰か】が、シャットダウンしているのだ。

それに気付いた時は、もうすでに、何もかも、全てが、

手遅れだった。

ピロリン♫

携帯が鳴った。

ニュース速報が画面に映る。

『[独]国大統領、自殺。[米]国に全面降伏。』

『[米]国、[日]国本土へ爆撃を開始。』

僕が手遅れを理解した瞬間。

背後で熱と光が炸裂し、

僕の四肢は、吹き飛んだ。

目も耳も、吹き飛んだ。

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きっと私も無関心なんだろうな…と考えさせられましたorz
スラスラと心に入ってきました(´;ω;`)
流石です!(╥ω╥`)

お久しぶりです。ユキ先生の話はやはり読み応えがありますね…ひ…

こんな日がこない事を祈ります。

仮に全ての情報を把握してても国レベルの問題は個人レベルでは対処できないでしょうね。一説によると某国の洗脳により団体での行動を起こし難くされてるらしいですからね・・・

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