中編3
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二人の女 ②

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一人の女が無人島に流れ着いた。

あやまって海に転落してしまったらしい。

「これからどうすればいいの……?」

白い雲が浮かぶ空を見上げて一言つぶやく。

濡れた髪や服を気にしながら、女は森へ入って行った。

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ある夫婦が何者かに殺された。

血まみれで息絶えた夫婦を、一人の女の子が見つめている。

名前は小百合。

小百合は夫婦の子で、学校から帰ってきたら両親が殺されていたらしい。

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両親の部屋には色とりどりの薔薇の花束が置いてあった。

『小百合、お誕生日おめでとう!』

と書かれたメッセージカードと一緒に。

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小百合は親戚にひきとられ、高校を卒業した後に一人暮らしをはじめる。

大好きだった両親を殺された悲しさがいつまでも消えない小百合は、素直に人を信じることができずにいた。

一人でいるときが一番幸せで、大勢の人でにぎわう街が大嫌いだった。

一生懸命働いてお金をため、アパートを解約すると田舎に引っ越した。

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山や海、自然いっぱいの地にポツンとある家で静かに暮らすのが、小百合の夢だった。

庭に色とりどりの薔薇を植えて、その薔薇を眺める。

それだけで幸せを感じる。

薔薇を数本摘んで、海が見える場所で時間を過ごすのも幸せだった。

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「やっぱり白が一番素敵。

いろんな色に染まるから。」

白い薔薇の香りをかぎながらつぶやく。

小百合は自分の心を白に例えて、気持ちを色であらわすのが好きだった。

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今日も小百合は海が見える場所にいた。

白い薔薇を顔に近づけ、目を閉じて香りをかぐ。

ゆっくり息を吐いて、そっと目を開ける。

「やっぱり白が一番素敵!」

小百合は笑顔でそうつぶやいた。

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白い薔薇を両手で強く握りしめて胸に当てる。

もう一度目を閉じて風を感じていると、唇を噛みしめた。

今まで我慢してきた何かが、小百合の胸を締め付ける。

頬が冷たく濡れていく。

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あふれる涙をおさえることができない。

立ち上がることができない。

小百合を暖かい風が包む。

「お父さん……お母さん……

会いたいよ……」

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一人で生きるのが幸せだったはずの小百合は初めて、自分は一人ぼっちなんだと気づく。

いつまでもとまらない涙をいつまでもおさえることができないまま、小百合は泣きつづけた。

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「あ……!」

突然風が強く吹き、白い薔薇が小百合の手から離れた。

「行かないで……!!」

風で飛んでいく薔薇を追いかける小百合は、あやまって足を踏み外してしまった。

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小百合がいなくなった場所には、白い薔薇だけがポツンと残っていた。

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キョロキョロと辺りを見回しながら、森の中を歩く小百合。

風が吹くたび、真っ白な砂と緑の木々がサラサラと音をたてる。

広い草原に出た。

小百合はずっと海を眺めていた。

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