中編4
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桜の木の下で

この話は私の母から聞いた話です

母が20歳のとき東京の大日本帝国の軍事施設で

働くように言われ東京に出向きました。

母は山形県の大きな庄屋の三女でした。

頭がよくて当時の女学校を主席で卒業して、教師をめざしして

師範学校(現在の山形大学教育学部)に通っていました。

戦争の中で、だんだん日本が負ける事が明白になり軍事施設は子供の手を借りたいほど切羽詰っていたそうです。

そんな中母とその他に3人の女子が選ばれて、東京の上野の近くの

陸軍通信学校というところで、1年間研修を受け

陸軍の通信施設で働くことを強制させられたそうです。

山形の田舎から出てきて右も左もわからない中、3人は苦労したようです。

1943年(昭和18年)学校を卒業して陸軍の通信施設で働くことになりました。

母はその中でもレーダー担当の少佐の秘書として、

東京の上空範囲の防衛の要に配属されました。

当時のレーダーはドイツのお下がりもあり劣っていて、

50km四方の範囲しか探知することができず担当の少佐も、

飛行機の速度を考えるとレーダーに見えたときは、

手遅れの状態で改善を要求していたようです。

日本の状況は悪化しておりこのときに、

母に言ってはいけない「負けるのでは」と言う言葉が中佐より漏れていた。

少佐はレーダーの改善を当時の大将東條秀樹に伝言を書いてとどけていました。そして改善ができないまま、

1945年(昭和20年)元旦早々浅草に大空襲の前触れとも言える

爆弾がアメリカより投下されました。

飛行機の影がレーダーに映ったのは、

空襲が始まる5分前だったと母は言ってました。

そしてあの1945年(昭和20年)3月10日がやってきたそうです。

その2日前にこれから起こることを予知していたように、

上野の山の近くに少佐より言われ同行して周辺を見て歩いたそうです。

その時、桜のつぼみは膨らみ掛けていて、「4日ぐらいで満開の桜が見られる」と中佐が話していたその矢先、東京大空襲が始まったそうです。

焼夷弾1700t、爆弾500発 あたり一面火の海で市民は、

上野山を目指し火のこの中、駆けずり回りリヤカーを引くもの、

子供の手を取り逃げる親子そして,陸軍通信施設も例外ではなく、

5月24日、25日には上野周辺は火の海になり辛うじて、

母と中佐は逃げ延びたそうです。少佐は自決をしようとしましたが、

母が止めて一緒に逃げたそうです。

そのときに子供を助ける為に少佐は焼夷弾が降る中、家の中に駆け込み、助け出した時焼夷弾の破片が目に入り、片目を失明しました。

血だらけの顔をぬぐい、目にタオルをあてがい上野山目指して歩いたそうです。

上野の山に辛うじて逃げた母と少佐は、上野の山に向かってくる人を助けて、山に一刻も早く非難できるように手を貸したそうです。

疲れはてて眠り、気が着くと桜の木の下で死んだ焼死体を焼く姿が

あちこち見られたそうです。

桜は8部咲き「死体の山に火をつける光景と桜の花が満開で時折風になびく

光景が奇妙にマッチしていて不気味だった」と話してくれました。

「その桜の花に人の燃やす煙が当たりいぶされて桜の花が夕日を浴びて真っ赤に見えた」と言ってます。

その中のすだれ桜を1947年に山形に母が幹の一部を持ち帰り

自分の庭に埋めました。その桜は成長が早くわずか5年で

高さは2mになり幹の直径も20cmになりました。

春になると桜の花の下お花見の宴が開かれました。

そんな中で私が生まれました。父と母は桜の下で息子の誕生を喜んだそうです。

しかし桜の木は私が誕生して1年目で、根腐れを起こして倒れかけました。

土が合わなくなったようで別の場所に移すことにしたそうです。

その場所はお城跡の公園でした。そこに移すと仲間の桜も沢山あり

すぐに回復したそうです。

上野の桜は他の桜の倍ぐらいの成長率で大きくなりました。

まるで何人もの人が手を貸してるように成長して行きました。

しかし他の桜と違っているところがありました。

風になびくと「泣く」と言うのです。

夕日に当たると真赤に見えると言うことでした。

山形の公園に寄付された桜はいま天然記念物に指定されてます。

幹の大きさ1m樹齢60年。

私と父母が行くと泣くように、枝をすり合わせて音を出します。

その音の中、私は少佐だった父に手を引かれ歩くのが楽しみでした。

時々父は思い出したようになげきました。

「この左目が見えればもっと綺麗な桜が見えたのに。」

この言葉は私の心に深い影を落としました。

おろかな戦争で犠牲になった人が死んでもその家族や親戚には

一生思いが付きまとう。

そんな戦争の話をする人も居なくなりました。

そんな桜の事情も忘れ去られて、今年も桜の花の下

酒の園が開かれるのです。

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清水様毎回
怖いありがとうございます。
中々本当に怖い話しが書く事がで来ない
でいます。最初は怖く書こうと努力しよう
とするのですが、中々です。
これからも、宜しくお願いします。

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ネタバレ注意
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Z-crayさん
怖い早々にありがとうございます。
でもこの話、あまり怖くないですよね。
Z-crayさんのいじめの方がよほど怖いです。
こういう作品色々書いてますので、暇なときにご覧ください。

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