中編5
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ストーカー相談

もう今から10年以上前の話です。

当時私は大学を卒業して地元の中堅企業に就職したのですが、これからお話するのはそこで出会ったある女性の話です。

彼女と出会い、その後いわゆる不思議な体験を幾度もしました。

いつか機会があればそのお話を何らかの形で残しておきたいと考えるようになり、そんな気持ちからこの文章を書き始めました。

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彼女と繋がるきっかけができたのは、私が高校時代の先輩と久しぶりに食事をした時のことです。

不意に先輩が私の同僚の名前を出してきました。

黒川という女性、当然同じ職場の人間なので、新人ではありましたが面識はありました。

先輩は自分の父親から彼女の名前を聞いたと説明しました。

彼の父親は地元の事業主でうちの会社の顧客でした。

そして、先輩も親の会社で働いていました。

その彼女と話がしたいので、繋いでもらえないかというのです。

私はそれこそ親父さんから紹介してもらえばと思いましたが、昔から先輩は女好きで、このお願いもそういうことだと思い、気乗りはしませんでしたが了承しました。

そこで私は翌日先輩の親父さんの名前を出し、そこの会社の人から話があると言って、黒川さんを仕事場近くの喫茶店に連れだしました。

私達が喫茶店に入ると先輩が奥の席に座っているのが見えました。

私は彼女に紹介しようとしたのですが、彼を見たとたん彼女は訝しんだ顔をしました。

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そして、いきなり先輩に問いかけました。

「私のことは誰から聞いたのですか?」

その言葉を聞いて私はすぐに違和感を覚えました。

仕事の話と自分は言っていたのに彼女は今回の話がそうではないと気づいたようでした。

先輩は自分の父親から彼女の名前を聞いたことを正直に話しました。

そして本題に入り、先輩が語ったのは元カノにストーキングされて困っているということでした。

先輩は一体何を言いだしたのかと思いましたが、彼の表情が真剣なので黙って聞くことにしました。

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最初の事件は先輩が営業中に駅で電車に乗ろうとしている時に起こったそうです。

先輩が駅のホームで電車を待っていると突然耳元で声がしました。

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「・・・轢かれて死ぬ」

その声は最近別れた彼女の声に聞こえました。

驚いて周りを確認してもその彼女の姿は見えず、おかしいなと思いつつ前に向くと、突然後ろからどんと何かに押されたのです。

なんとかホームに落ちずには済みましたが、落ちていれば確実に電車に轢かれていました。

先輩はすぐさまその別れた彼女に電話をしたのですが、彼女はずっと仕事場にいたと言います。

不信感は残りましたが、その時はそれで終わらせました。

また、何日か経ってから別の駅で彼女の声で囁かれました。

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「・・・落ちて死ぬ」

再度の不吉な呪いの言葉でした。

前回のこともあり怖くなった先輩はその駅から出ようとしたのですが、階段に差し掛かった時に階段の上からどんと押されて階段の下へ転がり落ちそうになりました。

なんとか駅から出た先輩は彼女が嘘をついていることも考え、今度は彼女の仕事場の知人に電話をして、彼女が仕事場にいるかどうか確認しました。

しかし、その知人からは彼女はずっと仕事場にいたと言われました。

結局、彼女の声がして殺されそうになるが、彼女自身はその現場にはいないということでした。

そこまで話して先輩はこんなこと警察に行くわけにもいかないし困っていたところに以前父親が話していた事務所で起こった心霊事件を解決してくれた黒川さんのことを思い出したというのです。

私はその時半信半疑で先輩の話を聞いていたのですが、心霊事件と聞いてさらに先輩が何を言っているのかと思いました。

ところが黒川さんは面倒くさそうに答えました。

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「ええと、元彼女のストーキングということでしたが、その彼女はあなたの会社の従業員ですよね」

いきなりの黒川さんの問い掛けに先輩はなんでそれをという顔をしましたが、彼女は続けます。

「だってあなたの後ろに付いてますよ、生霊が、この子、私あなたの会社で見たことありますよ」

私と先輩は驚いて後ろを確認しましたが何も見えません、ただ黒川さんには別れた彼女のいわゆる生霊の姿が見えているようでした。

「会社の女の子に手を出して恨まれるなんて、自業自得でしょう」

彼女はあっさり言い、そこまで聞いて先輩は真っ青になってどうしたらと哀願しました。

しかし、彼女はまるで相手にせず突き放しました

「あなたがその彼女に何をしたのか知りませんが、その彼女に許してもらうしかないでしょ」

その言葉を聞いた先輩は観念したのか、がっくりして帰って行きました。

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喫茶店を出たあと、黒川さんはずっと不機嫌でした。

私は彼女に嘘をついて先輩に引き合わせたことを謝りました、さらに話を聞くと彼女はああいう女癖の悪い人間が大嫌いなのだそうです。

「ああいうやつと付き合いがあるということは新人クンもそうなのかな?」

彼女から軽蔑する感じで尋ねられました。

それに対して私はしどろもどろになって女性付き合いがほとんどないことを白状しました。

それを聞くと彼女は笑って機嫌も治ったようでした。

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結局、先輩に生霊を飛ばしていた女性は先輩の子供を妊娠していたことが後でわかりました。

その子供を堕ろすかどうかで彼女は思い悩んでいたそうです。

その後、先輩は彼女に謝罪して、親父さんにも知られるところとなり、責任を取ってその彼女と結婚しました。

先輩の性格は相変わらずですが、奥さんになった彼女には先輩の両親の方が誕生日の贈り物をしたりと大いにフォローしているようです。

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「まあでも彼女の生霊は優しかったわね」

黒川さんがふっと呟きました。

自分の彼氏を殺そうとしたのに優しいとはどういうことだろうと思い、私は言葉の意味を尋ねました。

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「だってわざわざ殺す前に警告してくれてたでしょ」

あっと私は思いました。

確かにそうです、本気で殺すつもりなら警告なんてしないでいいのです。

「強い生霊とは言ってもまだ人の形をしてたしね」

人の形・・・生霊なのだから、当然その飛ばしている人物の姿をしていると思いました。

「人の形をしていない生霊もいるんですか」

私のその問いに対し、いるよと黒川さんは答えました。

そして、そっちのほうがシャレにならないことが多いよとも続けました。

私は黒川さんに見たことはあるんですかと尋ねると昔元カレになあ、とだけ言って、あとは教えてくれませんでした。

後で考えたのですが、それは彼女の元カレから飛ばされた生霊だったのか?

それとも彼女のほうが・・・今となっては確かめたくもありません。

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ラグトさん!返信ありがとうございます!
黒川さんのキャラ、大好きです!いつも脳内で堀北真希で再生してます笑笑 怖話の中で一番好きなシリーズなので、最新話が出ている度にワクワクさせてもらってます。頑張ってくださいね!(≧∇≦)

しゅう様、初めまして。
た、単行本化!?
恐縮してしまうほどうれしいコメントです。

しゅう様のお言葉を励みに一話一話注力してお話を書くことに専念していきたいと思います。
ありがとうございます。

黒川さんシリーズ、単行本化してくんねーかな・・・
絶対買うのに

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おはようございます♪ラグト先生、素晴らしいアドバイスをさんくすです!…ひ…

成る程、めちゃめちゃ参考になりました!俺は明確な着地点を決めずに書き始めてしまうお茶目な部分がありますので、自分で自分の首を締めてしまう事があるんです…うふふ…

ラグト先生とよもつ先生のヒントのお陰で少しだけ先の展開が見えて来ました!

良かったらラグト先生の名作「幽霊タクシー」もいつか此方でも読ませて下さいね…ひひ…

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おはようございます♪

実は俺の問題作「幽霊タクシー」はラグト先生の幽霊タクシーを読んで話が湧きました…ひひ…

しかし、続編のアイデアが中々降臨しません!このままでは罰として「坊主」になってしまう可能性が出てきました…ひ…

先生!是非良きアドバイスをお願いします!(/ω\)

えっ、メッセージが?
大丈夫でしょうか?

ロビン先生、私も先生の作品から刺激を得て、楽しみたいです。

あれ?なぜか昨日書いたメッセージが消えてしまいました!

ラグト先生、これからも先生の作品を楽しみにしております♪

まりか♫様
こちらこそ、はじめまして。
初めての怖いとコメントいただきうれしいです。
まだ、このサイトの全容もよくわかっていないのですが、怖い話を通じて良い交流ができたらなあと思っています。

ロビン様
ロビン先生、お声をかけていただき感激です。
そうですラグトです。
このサイトには会員登録したばかりなのですが、よろしくお付き合いいただければ幸いです。
そして11月のアワード受賞おめでとうございます。
これからも先生の作品を楽しみに玩読したいです。

鏡水花様
もったいないご感想をいただきありがとうございます。
お話しについてはご推察の通り、彼女のエピソードが主に続いていく予定です。
以降のお話の投稿はこのサイトの使い方を会得しながら随時行いたいと思っています。

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お、おや?!ラグト氏…ひ…

もしかして貴方は、あのラグト先生ですか?

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