中編3
  • 表示切替
  • 使い方

親友との再会

今回のお話は私が就職してから1ヶ月ほど経った頃の話です。

その日私は野球中継を見ながら、家に届いた郵便物を確認していました。

その中に母校の創立何十周年かの合同記念パーティーの案内がありました。

私の母校は私立でしたので、そのような記念パーティー的な催しがあるたびに案内が来ていました。

最近は就職したての新しい環境でバタバタしていたのですが、そろそろ地元の仲間と遊びに行こうかなあと考えました。

その時、ちょうど考えていた地元の仲間の一人から携帯に着信がありました。

私は母校の記念パーティーのことかなと思い電話に出たのですが、内容は全く別のことでした。

nextpage

「神野が死んだ」

告げられた名前は私の親友の名前だったのですが、私は最初何を言っているのかわかりませんでした。

混乱しながら詳しく聞くと高校時代の同級生で親友の神野が亡くなって明後日が告別式だというのです。

死因などを尋ねましたが、連絡網で告別式の日程などを回しているだけということで、詳細はわかりませんでした。

私は高校卒業後も親しくしていた神野が亡くなったということでその日は神野と一緒に遊んだ記憶や高校時代を思い出して悲しみに暮れました。

nextpage

次の日、私は翌日の神野の告別式に出席するために休みを取るので、少々の残業をしていました。

そのとき、職場の先輩の黒川さんが落ち込んだ様子の私を見て話しかけてきました。

私は彼女に親友が亡くなったことと明日その告別式に出席するので残業をしていることを説明しました。

すると、彼女から思いがけず注意されました。

「あまり思いつめないほうがいいわよ、呼んじゃうから」

私は彼女がいわゆる霊感のある人ということは前回の事件で分かっていましたが、それでも彼女が何を言っているのか言葉の意味がわかりませんでした。

死んだ親友のことを考えすぎてはいけない、親友が死ねば悲しむのは当たり前だと思いましたし、呼んでしまうということは彼が私の前に現れるということでしょうか。

それならば最後のお別れが言えるから良いことではないかと私は思いました。

少々彼女の言動に憤りを感じながらも、そのまま残業を続けました。

nextpage

私はそのとき母校の記念パーティーに出席していました。

駅前のホテルのホールでくじを引いて、くじに書かれている番号のテーブルにつきました。

懐かしい母校の教師や同級生を見つけて確認していると、私の向かいの席には親友の神野が俯いて座っていました。

私は神野も来ていたことを確認して嬉しく思いましたが、なにか大事なことを忘れているような気がしました。

神野はずっと俯いていてその表情が見えないので、私は神野に話しかけようとしたのですが、その際にだんだん神野に感じていた違和感について思い出してきました。

nextpage

「あれ、おまえ死んだんじゃなかったっけ?」

そう言おうとするのと同時に神野が顔を上げ始めました。

その姿はどんどんと灰色に染まっていきます。

私が驚きながらも金縛りにあったように固まっていたその時、肩をがっと後ろから掴まれて目が覚めました。

nextpage

私は残業中の職場でいつの間にか夢を見ていました。

肩を掴んで夢から引き戻してくれたのは黒川さんでした。

「危なかった、来てたわよ」

汗ビッショリの状態で黒川さんに確認すると何かの霊が私のところに来ていて、おそらく先ほど言っていた神野という奴だろうとは思ったらしいのですが、文字通り「追い払った」と言われました。

「あんまりいいものじゃなかったわよ」

彼女からもう帰るように言われたので、呆然としながらもその通りに帰る用意をしました。

私はもしあのままだったらどうなっていたのかを彼女に尋ねました。

「深く考えないほうがいいわよ、また呼んじゃうから」

そっけない答えでしたが、今思えば彼女なりの気遣いだったのだと思います。

nextpage

その夜、神野の死因について別の同級生から知ることができたのですが、自殺だったそうです。

神野がどういう思いで私の前に現れたのかわかりませんが、その時に見た神野はもはや親友だった神野ではなく、別のもっと何か良くないものに変わってしまったようにしか思えませんでした。

そのため薄情ではありますが、私は神野の告別式には出席できませんでした。

Normal
閲覧数コメント怖い
1,6224
16
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意