中編4
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~オルゴール~

あれは、私が中学生の頃。。

小学低学年の頃に国際線のCAをやっていた叔母が、お土産に買ってきた異国のオルゴールだった。

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「お兄ちゃん、コレとっても綺麗な曲なの」

そう言って沙羅宅へ置いていったものだった。

オルゴールとはいえ、単純なものではなく【仕掛け箱】のようになっていて、簡単には開けられない。

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木製の手のひらに収まるような小さなオルゴール。

寄せ木と云うのだろうか?細長い木片をあちこちにずらしていくと、パカリと開く。

小学低学年の私には、なかなか開けられないパズルのようで、もどかしくて仕方なかった。

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父にとっては簡単だったようで、良くそのオルゴールを開いては、小さなネジを巻き曲を聴いていた。

だが、ある日を境にこのオルゴールは二階の押入れに仕舞われる事になる。

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その日、普通に飲んでクダを撒き散らし、珍しく誰にも手を挙げないまま眠った父。

父のお気に入りのオルゴールだったため、私は何を思ったのか、父の枕元にソレを置いたのだ。

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ネジを巻かなければ、曲は流れない。

それがオルゴール。。。

いつも父が自分で箱を開け、ネジを巻き曲を聴く。

それも最後まで聞いている。

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だから、父が触らない限り曲が流れるわけなど無い筈だった。

なのに・・

曲が勝手に流れているのだ。。。

夜中、父の小さな悲鳴に目を開けると、父は閉じたままのオルゴールを手にしていた。

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心地よいはずのオルゴールの音色が、歪んで聞こえる。

半音ズラしたようなイヤな音色になっている。

蓋が開けられていないせいだろうか。

父は、ソレをおもむろに開け始めた。

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蓋を開けても、歪な音色は変わらなかった。

父は何度もそのオルゴールの蓋を開け閉めしてる。

が、一向に鳴り止まない。

数十分は不快な音色が鳴り続けていた。

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完全に素面に戻った父は、小箱の中の本体をペンチで引き剥がし、ついでに歯も全て取り去った。

鈍い銀色のただの円筒状にされた本体が箱に戻された。

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やっと鳴り止んだオルゴール。

父は元通り蓋を閉め、更に袋詰めにして段ボールの小さな箱に入れるとガムテープでキッチリ閉じ込め、二階へと持って行った。

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『あ~もう聴かないんだな』

そう思ったきり、忘れ去っていた。

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中学生のある日、私はまた来客のため二階で眠っていた。

チロン♪

微かな音に目を覚ます。身動ぎひとつせず、目だけ開けて正体を探る。

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チン♪…チロン♪…チロリロリロ♪…

(押し入れか?)

そっと布団から手を伸ばし、電気の紐を引く。

2~3度瞬いた電気が部屋中を明るくした。

少しだけ恐怖心が薄らぎ、起き上がった。

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押し入れを開けると、ハッキリと綺麗な音色が耳に入る。

チン♪…チロリロリロ…♪

私は埃を薄く積もらせた段ボールを見つけた。

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几帳面に閉じられたガムテープで中身を思い出した。

父が封印した小箱だ。

オルゴールの歯も折ってあるはず。

頭の中では、聞こえない振りをしたくて堪らない。

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だが、確認せずに眠れるほどの度胸もない。

私は…段ボールの梱包を解いた。

儚い小さな音色。

今にも止まりそうになりながら、まだ音を繋いでいる。

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まるで、呟く様に…チン♪と鳴る。

段ボールから袋を取り出し、袋から更に小さな木の箱を取り出す。

昔は難しかったはずが、最初から分かってるかのように手が動いて蓋を開ける。

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そこには、歯が1本もないオルゴールの本体と、折られた歯が無造作に入っていた。

私はネジを巻く。

何の音も立てずに、本体はクルクルと回っていくだけだった。

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蓋を閉め、袋詰めに戻し段ボールにも戻した私は、まだ来客中の父の所へソレを持って行った。

「コレ、どうしよう?」

それしか言わなかったのに、父は察したようだ。

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来客が自分の親友だった事もあるんだろうが、その来客に箱を渡した。

「悪いけど、帰りにどこかのゴミ箱に突っ込んでくれな?」

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快く引き受けた客は、じゃあ、どこそこのゴミ箱に捨てて行くと告げ、そろそろ時間も遅いからと段ボールを抱えて帰って行った。

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玄関まで見送ったあと、父が振り返って私に言う。

「意外と怖いよなぁ?酔いが醒めちゃった~」

そしてオルゴールの話をするついでに、私が酒の相手になった。

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「男は黙って!サッ○ロビール!」

怖いのを誤魔化すためか、私と父は明るく乾杯をして朝方まで楽しく飲んでいた。

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因みに、当時私は女子中学生だ。

朝方まで飲んだビールの匂いで、まんまと担任にバレて叱られたのは、ここだけの話。

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あのオルゴールは、どうしたかったんだろう?

今更ながら見つけてもらって、どうしたかったんだろう?

何の自己主張だったのか、全く判らない。

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後日、あの来客にちゃんと捨てたか聞いたところ、帰りの道すがら、ずっと心地良い音楽が聞こえていて、捨てるのが惜しくなったという。

だが、父が「捨てろ」と言ってたので、ちゃんと捨てて帰ったと。

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誰も被害には遭ってないが、あの出来事も何だか不思議な体験には違いない。

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マミっち~♡
いつもありまとねぃ(^^)

音が違って聞こえた時点で、フツーにアウトだと思うんだけどwww
あの時は、特別何も感じなかったんですよね~~(^^;
なんでだろ?

二階で固まりながら正体探したけど、恐かったのは電気が点くまでの間だけ。。
あの部屋では何があってもおかしくないから身構えたのに、ちょっと拍子抜けした気分でしたw

客人にも聞こえていたのは不思議ですよね~。
渡した時には音なんてしてなかったのに。ん~~??

ロビちゃん!
いつもありがちゅ~~~♡

・・・・って、(((( ̄∀ ̄;)伏字使うと妄想するからっっっ!!
ハッキリ書きましょうよっ!妄想暴走反対~~~(´;ω;`)

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紗羅さん初めまして。
初コメントさせて頂きます。
☆蓮華☆と申します。
以前より沙羅さんのお話は読ませて頂いていたのですが、今日はコメントをしたくて登録して参りました(o^^o)
不思議なお話に入り込んでしまいました。
オルゴール不思議ですね。
その後のオルゴールの行方が気になります。
それと、沙羅さん体調崩されているとありましたが、大丈夫ですか。
あまりご無理なさらないように。
お身体御自愛下さいませ。

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