中編3
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一銭店

一銭店

昔学校の近くに駄菓子屋と文房具を売る店があった。

そこは色々な子供たちが5円のくじや駄菓子を買いに

毎日のように来ていた。

お婆さんと奥さんが子供の相手をして

夏になるとところてんとかき氷も売り出した。

当時こずかいがもらえない私は

いつもその店の前を通るたびにうらやましくて

他の子を眺めていた。

それが毎日続くと顔を覚えられてしまい時々

駄菓子を分けてくれたりするようになった。

年がたち一銭店のお婆さんが亡くなった。

その事はうちのお婆さんから聞いた。

お婆さんはその店のおばあさんと友達で

よく遊びに行っていたが

孫がその店からお菓子をもらったり

している事には気がつかなかった。

私とお婆さんはその一銭店のお婆さんの葬式に行き

初めてそこの嫁が知ることになり、その嫁とも顔なじみに

なっている事に気がついた。

お婆さんは「つらい思いさせたね。家にお金がないわけじゃない

ただ、お金を使う年じゃないと思っていただけだ」と言うと

私に頭を下げた。

葬式も終わり1週間が過ぎたころ

お婆さんが生まれて初めて私にこずかいをくれました。

10円でした。私は喜び大事に両手で握り

一銭店に買いに出かけました。

店に着くと店の入り口の縁側に腰掛ける

お婆さんが居ました。

私は死んだことなど忘れて、みんなが買い物

するように、10円玉をお婆さんに出し10円で買えるだけの

お菓子をいっぱい買い、家に戻りました。

お婆さんのところに持って行きお菓子を見せて

一銭店のお婆さんの事を話すと

お婆さんの口調や態度が変わり、みるみる恐い顔になりました。

お婆さんは、あの店にもう行ってはいけないと言い出しました。

「一銭店のお婆さんが成仏してから行きなさい」と言われ

私はその日を境に行かなくなりました。

お婆さんは念のため私を拝みにお寺に連れて行き

拝んでもらうとその足で、一銭店に向いました。

店の前には嫁さんが居て水をまいてました。

お婆さんは、店の嫁さんに向い

「おかあさんは成仏してない。時々縁側に出てきている」

とつげました。

嫁は「きっと息子の病気を心配して成仏できないのです。」と答えた。

嫁は付け加え「主人は大工で足場を踏み外し転落して

下半身不随で働く事が出来ないので弟が働いてこの家を切り盛りしている。」と話しました。

お婆さんは「どうすれば納得して、成仏できるか一緒に考えましょう」と言うと

仏壇の位牌を拝み帰ってきた。

解決策がないまま10日が過ぎた。

お婆さんは私に「見えるのはお前だけだ。なんで成仏できないか聞いてほしいと」と

頼まれました。私は一銭店の縁側に行き待つことにしました。

待つこと15分私はお経を拝んでました。すると奥の座敷からお婆さんが現れました。

私に向い「今日は何を買いに来てくれたの」と私の心に言ってきました。

私は正直に「お婆さん。もう心配しないで息子さんは大丈夫。

弟さんが立派に後を継いで切り盛りしてます。お金の心配もいりません。」と言うと、

私は怖かったが作り笑いをしてその場はごまかした。

お婆さんはそれを聞くと私の前に座り、私の目を見てうなずいて消えていった。

私はお婆さんに出来事を報告しました。

お婆さんも「お前も人を助ける事が出来るようになったんだね」と言うと

目がシワデ見えなくなるほどの笑みを浮かべて喜びました。

しかし一銭店は時代の流れで自然に消えて行き、

今は普通の民家になっています。

嫁さんも年をとり私が20歳を過ぎる頃には、以前のお婆さんのように

縁側に座り、駄菓子を買う子を眺め笑顔を振りまいておりました。

Concrete
コメント怖い
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あんみつ姫さん
コメントありがとうございます。
昔のもの消えて行きますね。海外に居て
別文化の中で暮らして居ると分かりますが
昔の事が思い出されて、涙が出る事があります。そんな時に、やはり筆が走りますね。
何年かに一度帰国しますが、故郷に帰ると
浦島太郎になった様で、切ないです。
やはり、そんな時に思い出すのが駄菓子屋です。

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吉井さんコメントありがとうございます。
バンドしているだけあって、音にたいして
凄く敏感なんですね。それで聞こえ来る。
伊勢がいいから、霊も逃げますね。
私は、吉井さんと逆で耳は難聴ですね。ま
職業病です。しかし目と感覚が凄く良い様です。やはり何か取り柄が無いとね。

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感じる方ですね、何かいる、でも悪い感じがしなければ放置、嫌な感じがすれば近寄らない
それが職場だったりしたら『あっちいけ、何も出来ねえっつうの』ですねw
貧乏神が憑いてる言われた時は隣家に促しましたw。

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名無しの権チャンさん
コメント怖いありがとうございます。
駄菓子やよりも、お菓子やくじ引き景品がなくなってるようです。
食品もチクロやサッカリンが無くなって、純度100%の砂糖や自然食品に
変わってきてます。
4年ほど前に浅草に行きましたが、人形焼以外は現代風に変わり
時代の流れを感じました。戻れるものなら、昔に戻りたいですね。

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清水さん
怖いとコメントありがとうございます。
私は清水様のように昔話を聞いているという言葉が
大変好きです。
書いてる話自体が、30年、40年、50年前の話ですので
昔話だと思います。
私もあっという間に歳をとり、今に至ってますが
今思えば、自分がたどって来た経験が昔話でわなかとさえ
感じるこの頃です。

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吉井さん
コメント怖いありがとうございます。
感じるんですか?良い物か、悪い物かの判断は出来ますか?
私はそれが出来ます。と言うか体が感じ取り、悪いと拒絶反応が凄いです。
昔は転換も起こしました。親やお婆さん、お爺さんは、鍛えなくてはと
色々、一人息子に試練を与えました。
それで、色々な国に回されても、耐えることを覚えました。
外国の幽霊には、お経は通じませんからね。「笑」
自然と吉井さんスタイルになりますね。
タイにもウジャ、ウジャ、幽霊や亡霊が居ます。
その話も何時か載せます。

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蓮華さん
コメント怖いありがとうございます。
お婆さんの場合は、常に勉強して霊感を鍛えてましたね。
私の場合は、取り憑かれる恐怖から、だんだんさぼるようになり、
逃れる知識が豊富になりました。
もっと凄い、獲り憑かれを経験してます。エクソシスト見たとき
自分を当てはめてました。
本来の私のスタイルですので、素直に書きました。
昔話を目指してますので、あまり怖くないのかもしれません。
読んだ方の心の片隅に話の一部でも残ればと思い書いてます。

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珍味さん
判りますか?一銭店。
今はほとんど,なくなりましたね。
寂しいです。チクロのお菓子や飴のひも引き。甘納豆のくじ
毎日暇になると行ってました。
しかし金が無い。貰えない。悲しかったです。
でも、10円もらった時のうれしさ。未だに金のありがたみが判ります。
それを、お婆さんに教えてもらったような気がします。
今もうちの子に、「一円がないと11円の物は買えない。たった1円しかし、大きなお金と同じ重みがある」と教えますが、まだ4歳判っているのか、判らないのか判りませんが
とにかく、自分が貰うと執着しますね。けちです。
おばあさんも、けちでした。でも時と場合により出す時はポンと100万円とか出してました。

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小さな頃に行ってた駄菓子屋を思い出しました(;o;)
最近思い出して行ってみたらもう潰れて廃墟になってましたけどね(´д`|||)

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