短編2
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親友とベンチ

私はベンチに座っていた。

「ミノ!ミノ、聞いてる?」

隣に座る親友は、私の名前を呼んだりして話を聞いてもらおうとする。

「…うん。聞いてるよ」

「ほんとに~?あ、そういえばこの前…」

私が返事をすると、嬉しそうに身の回りにあった楽しいことを話すのだ。

その声を聞きながらも、私はなるべく親友を見ないようにした。

あとどのくらい話せば、彼女は満足するんだろう。

きっと満足したら呆気なくいなくなるんだろうな。

ふいに涙がこぼれた。

「え?どうしたのミノ!?」

親友は私の顔を見ていたのだろう。

私は見ようとしなかったのに、彼女はずっと私を見て心配までしてくれた。

あの時もそうだった。

私がいじめを受けていた時、それに気付いて助けてくれたのが親友だった。

私を助けたせいで次にいじめにあった親友を、私は助けられなかった。

親友が自殺する瞬間、私はそこに居合わせた。

校舎の屋上でフェンスの向こう側に居た親友を、私は止めなかった。

『ばいばい、ミノ』

親友は笑って飛び降りた。

「ごめん、ミノ。助けられなくて」

俯いて呟く。

こんな時まで見られないなんて、私はどんな神経してるんだろ。

申し訳なさと後悔で胸がいっぱいになった時、親友は言った。

「…そんなこと、気にしないでよ」

「私はミノに笑ってほしくて話してたのに、ミノが泣いたら意味ないよ。

私、ミノが泣いてると悲しいよ」

親友の声は、泣いていた。

思わず隣を見ると、涙を流しながら親友は笑っていた。

「ほら、ミノも笑って!」

その笑顔は、涙が無ければ生きていた頃の笑顔そのままだった。

「…はい」

笑顔に応えようと、私も精一杯の笑顔を顔に張り付けた。

「うん、ミノはこの顔が一番いいよ。最後に見れてよかった」

「今度こそ、さよなら」

その声とともに、親友は消えた。

残ったのは、親友が座っていた所に置かれた花瓶が一つだけ。

花瓶に挿してある一本の小さな花は、太陽の光を浴びて小さな輝きを放っていた。

「…さよなら」

涙を拭いて、そのベンチから離れた。

もう、そのベンチには座りに行くことはなかった。

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