中編3
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罪ほろぼし

今日は妻の誕生日

用意したプレゼントを持って

ケーキを受け取り

早く家に帰らなくては

だけど僕の足取りは重い…

妻に対して愛はもうない

それは僕に好きな人ができたからだ

あの子はいつも明るくて

僕はあの子といると癒される

妻は良くやってくれるが

いつからだろう

どこか息苦しさを感じてしまう

ようになったのは…

もっと早くに

離婚の話を切り出す予定だったのに

今日までタイミングを逃してしまった

妻にとって誕生日に別れ話は

あまりにも酷すぎるから

今日は普通に過ごすつもりだ

ケーキ屋に着いた

妻の好きなケーキを頼んである

イチゴがのった

シンプルな生クリームの丸いケーキ

チョコのプレートには

ハッピーバースデーの文字と

妻の名前を入れてもらった

ここはもともと

妻がお気に入りの店で

妻と出会ってから僕も

この店のファンになった

ケーキ屋にいると妻からメールがきた

帰る予定の時間を過ぎているから

少々ご立腹のようだ

メールの返信をしてケーキ屋を出た

妻は自分が誕生日なのに

僕の好きな料理をたくさん作って

迎えてくれた

愛がある時は嬉しいことも

愛がなくなると

こんなにも重く感じるなんて…

明日は、離婚したいと告げよう

妻が離婚を承諾してくれたら

この家も何もかも渡して

僕は体一つで家を出るつもりだ

妻の「聞いてる?」という言葉に

我に帰った

妻の話も上の空

それほど僕の頭の中は

離婚のことでいっぱいだった…

妻は

ケーキのロウソクの火を吹き消して

僕はケーキを切り分けた

「今日はイチゴが

たくさん食べられるね」

妻が言った

自分の誕生日であるにもかかわらず

妻はイチゴ好きな僕のために

このケーキが良いと言ったのかも

しれない…と、そのとき感じた

だけど妻は

「ねぇねえそのイチゴちょうだい」

といつものようにふざけて言う

そんな妻に少し罪悪感が消えて

僕も「ダメダメあげないよ」と

いつものようにふざけて

自分のイチゴをパクッと食べた

ん…?!

なんかイチゴの味が…

あれ、おかしい…

う…苦しい…

僕は朦朧としながら

ケーキを受け取り、会計のときに

あの子からレシートと一緒に

紙を渡されたことを思い出した

そのとき妻からメールがきたので

返信しながら紙を受け取り

ポケットに突っ込んで忘れてた

薄れゆく意識の中でポケットから

その紙を出して見たら

「今日はイチゴを食べないで」

まさか イチゴに毒を、…?!

あの子には

ケーキを食べるときいつも

妻がイチゴをちょうだいと言う話を

したことがあったから…?

妻は突然の僕の異変に

普通じゃなくなって泣き叫んでいる

ああ、僕は

なんてことをしてしまったんだ…

妻はこんな僕のために

こんなにも取り乱して泣いているし

僕が死んだらあの子は殺人犯になってしまう…

今更ながら

自分のやったことの大変さに

気づかされた

あれ…

目の前が…

暗くなってきた…

妻の声が…

凄く…遠くに感じる…

どうやら…僕は…

ここで…

死ぬみたいだ…

これは僕の犯した罪に対する罰だ

僕で良かったんだ

妻が死ななくて本当に良かったよ

「計画は中止よ よくわからないけど

夫は勝手に死んでくれたわ

これで間違いなく保険金は下りるし

あなたも手を汚さなくてよくなった

やっぱり運命の人はあなただったのよ!」

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リコさまへ
ある意味強運です
コメントありがとうございました

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