中編2
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本当に好きな人

明日で俺は定年退職する

結婚してから妻には

苦労をかけたこともあった

若気の至りで浮気をしたり

ギャンブルにハマったり

その都度喧嘩もしたが

妻は俺の話をちゃんと聞いて

納得してくれた

すまないと思いながら

また同じことを

何度も繰り返す俺を

妻は結局許してついてきてくれた

これから俺は

妻のために生きようと思う

今まで何もしなかった分

妻孝行に残りの人生を

費やすことに決めたんだ

俺は明日、仕事から帰ったら

妻に退職金を渡し

この気持ちを告げることにした

会社から大きな花束を貰った

持って歩くのが恥ずかしかったが

妻に見せたくて持ち帰ることにした

きっと妻は喜んでくれるだろう

妻の笑顔を思い出すと…

妻の笑顔を思い出そうとしても

思い出せない俺がいた

それほど俺は

妻の笑顔を見てないのか?

いや、妻の笑顔を奪ったのは

この俺だ…

一瞬、妻に

そんな人生を送らせたことを後悔したが

結局妻はこの俺についてきたんだ

それに時間が戻るわけじゃない

後悔しても仕方ない

これからたくさん笑顔にしてやればいい

こんな早い時間に

家に帰るのは何十年ぶりだろう?

いつも飲んで帰って

寝るだけの生活をしてたせいか

これからは妻と

長い時間を過ごすと思うと

なんだか気恥ずかしい気がする

そういえば退職した日に妻から

離婚届を突きつけられた奴がいた

そいつはよっぽどヘマをしたのだろう

お互い好きで結婚したのに滑稽な話だ

家の明かりが点いている

当たり前だが

一応もしも点いてなかったらと

頭をよぎっていたからホッとした

『ただいま帰ったぞ……聞こえないのか?』

俺は妻を家中探して回ったが

妻は見つからない

庭で花壇でもいじってるのかと

外の様子を見に行ったら…

『はあっ!?お前!どうしたんだ!?』

妻は死んでいた

俺宛に書いた遺書が出て来て

妻は自殺だとわかった

遺書には

あなたへ

今までありがとうございました

あなたが家に居ない時間が長く

外で他の人を好きになってくれたから

私も結婚する前に付き合っていた

本当に好きな人との時間を持てました

だから私はあなたが浮気をしてても

仕事が忙しくて帰れなくても

ちっとも悲しくなんかなかったの

あなたが定年退職したら

あなたをお世話する妻としての仕事も終わるし

離婚して本当に好きな人と一緒になる予定だったけど

本当に好きな人が先日亡くなってしまったから

私もあとを追うことにしました

あなたはこれからも他の誰かと

楽しい毎日を過ごすのでしょうから

ちょうど良かったでしょ?

最後に迷惑かけちゃってごめんなさい

許してね

『本当に好きな人…か』

俺は自分のことは棚にあげ

妻に腹を立てながらも

女の怖さをこの年で痛いほど思い知った

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名無しの権ちゃんさまへ
あははーー
女は怖い生き物です
お気をつけくださいませ(笑)
コメントありがとうございました

怖かった・・・実際にありそうな話なので実話かと思ってしまった(´д`|||)結婚してないけど奥さんになった人がこんな遺書残してたらと想像してガクブルだったよ(/´△`\)

小夜子さまへ
当たり前のことと麻痺してしまう恐ろしさ
もしも、なくしてしまう前に気づけたら…
怪奇現象よりも身近に起こり得る恐怖に
とても興味があって書いてみました。
近すぎて見えないもの…残念ながら
それが家族かな?なんて思います。
コメントありがとうございました

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ラグトさまへ
私も後回しにしてしまいがちです。
そして、毎日の小さな積み重ねが
あとあと思わぬ力を発揮すること
毎日の『明日やろー』があとあと
自分の首を絞めることをこの歳になって
身にしみています

本当に毎日小さなことからコツコツと
の精神は大切ですね
西川きよし先生は偉大です(笑)
コメントありがとうございました

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あんみつ姫さまへ
一番大切にしなきゃいけない家族よりも
外の人との関係ばかりを大切にする人は
一見良い人のようで…
実はただの自己中心的人物ではないかな?
何かが起こってからじゃ遅いのに…
なんてことを思いながら書いてみました。
こんなに長文の感想をいただけて嬉しいです
コメントありがとうございました

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まりか♫さまへ
近くにいることで妻の自分への気持ちに
安心してしまった夫の悲劇です。
私も女ですが、女の怖さは底知れません。(笑)
コメントありがとうございました

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