中編6
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寄生

タイに来て15年があっという間に過ぎた。

タイと言う環境が私には合っている様だ

あるとき、友達と5人ぐらいで、道路の脇のジャングルに探検に出かけた。

と言うか、人のいないところで、酒飲んで騒ぎたかっただけだった。

道路を挟んで、ヤブがありそこは萱の背丈が2m以上もあるものが生い茂るところだった。

あぜ道のようなところを一列に並び、歩いて行く。

現地人のワーカーが先頭になり、「もう時期広い綺麗な花畑のようなところに出る

そこで騒ぎましょう」と言うとイソイソと早足で案内した。

ワーカーが言うように、萱のヤブを抜けると、先ほどの狭い道が嘘のように開けた。

ランの花が咲き乱れて、別世界のようだった。

「ここは地元の、それも、ごく一部の人しか知らない。」そう言うと早速持ってきた、

ビールやウイスキーつまみを開けてパーティーが行われた。

萱に寄生するランは100いや200以上が咲き乱れており、

ランのコレクターが居たらそれこそ、飛びつきたくなるぐらいの品種と量だった。

パーティーの最中、私はアルコールの影響で眠くなり30分ほど草の生えた地面に横になると寝た。

ワーカーたちが「帰る」と言い出すころには、夕方になっていた。

私は起き上がると、又、元来た萱の藪を抜けて帰宅した。

その日は飲みすぎたせいもあり、部屋に着くと翌朝までぐっすり寝ていた。

翌朝起きるとシャワーもあびず会社に向かった。何事も無く夕方まで仕事をこなして帰宅した。

その日の夜、昨日よりシャワーを浴びていない事に気づきシャワーを浴びて

レストランに向かった。

そして、1週間.

仕事をしていると後頭部に痛みが走った。

時々、「ズキン、ズキン」と周期的に痛みがあったが、

仕事が忙しく気にする暇が惜しかった。そして、夕方には痛みの事など忘れていた。

それからまた1週間。

残業して明日の会議の書類をまとめている時だった。

後頭部にものすごい痛みが走った。

思わず、頭をかかえた。

次の日まで痛みが続き、たまりかねて、社長に事情を説明して、部下に書類を渡すと

近くの日系病院に行った。

しかし、CTや脳波には異常がなく、レントゲンにも異常が見られなかった。

先生と話すが、精神的なものじゃないかとの事で、痛み止めを貰い帰った。

しかし、痛みは治まらず、日に日に、後頭部のいたるところが傷み出した。

たまらなくなり、会社を休み、以前かみさんと訪れた、

バンコクの大学病院の司法解剖医のところに向かった。

大学病院の受付に先生の名前を出すと、研究室に電話した。

先生に私の名前を直接言うと、診察時間が指定された。

又、病棟を外れ、死体置き場の隣の部屋に向かった。私は痛い後頭部を抱え思った。

「何時来ても、いやなところだ。しかし、一般の医者じゃラチガ明かない。」そう思うと諦めが沸いた。

病棟の前に来ると、先生自ら廊下に出て待っていた。

挨拶もそこそこ、椅子に座ると病状を言った。

先生は「こんな日本人初めてだよ。私のところに2回も来るなんて。」そう言うと診察を始めた。

まず、痛みのあるところを念入りに肉眼で目視した。

「異常もないし、腫れや外傷もない。」又レコーダーに記録している。

今度はルーペで痛みの箇所を見始めた。20分痛みのある周りを捜し続けて

「見つけたよー、」と言う声が後ろから聞こえて来た。

私は「先生何かあったのですか?」と聞くと、

「あんた、此間は髪の毛、今度は木かい?」と言うと「ピンセットでつまむと、駄目だ、根が深い。

何時から頭が痛くなった?」と訪ねられた。私は「3週間ぐらいになりますか?」

何気なく話すと先生は怒った「3週間だって。よく我慢できたね。

これは又手術しかない。会社に5日間休むと連絡して来なさい。それから手術を行います。」

そう言うとカルテを看護婦に渡して.引き上げて行った。

私は何の病状かも告げられないまま、会社に休日届けを出した。

社長や同僚は「進、エイズじゃないよな?とかB型カイ炎かな?」と、からかわれた。

しかし、私は、頭を切られる恐怖で夜も眠れなかった。

そして手術の日。

付き添いは妻だけ。妻もあきれ返り「あんただけ、何で変な病気背負い込むの?いい加減にしてよ」と怒っていた。

手術前。先生はこれから始まる手術についての話を始めた。

「これからはじめる手術は、あなたの後頭部に生えた木の芽を取る手術です。

まず心配は転移です。これから体全体を調べます。その後に手術を行います。」そう言うと

全身麻酔が施された。私の意識が無くなる。

朝、目が覚めると頭はターバンを巻いたように包帯だらけだった。

おまけにうつ伏せに寝かされていた。妻が経過を報告した。

「良かったわね。全身に根がはえてなくて。後頭部だけ、10cm四方根が生えていたそうよ。」

そう言うとうつ伏せのまま又眠った。

手術後2日目

今日から、正面で寝ることを許された。先生が内診に訪れた。

「ヨー、進君。元気そうだね。明日には退院できるから安心して。」

そう言うと私に手術中の写真を見せた。

「あんたは、本当に凄いもの宿したんだよ。そう言うとこれが、あなたの頭から出てきた木の根だよ。」

そう言うと写真を見せた。高さ3cm茎の直径1mm根の長さおよそ10cmと写真の中に書かれていた。

その根は、四方八方に伸びてしっかりと茎を支えていた。

私は「これ本当に私の頭に?」と先生を疑りの目で見た。

先生はすかさず手術中の切開した私の後頭部を見せた。そして写真にペン先を当てると説明した。

「進君この頭はわかるね。次、頭の皮と頭蓋骨を剥離したところ。次に根を見つけたところ。

次 、根を切除したところ。」と見せられると要約事の重大さが認識できた。

私は質問した。「先生もしこの根がもっと広がったらどうなってたんですか?」すると

先生は私の目を見て

「神経がやられて、まず手足のしびれ、その後は視神経の異常、その後は言語障害、

その後は上半身の麻痺、その後は自足不能。全身麻痺。後は死」と語ると

「そこまで行くには、相当の日数が必要だからその前に見つかるよ。」と言うとニッコリ微笑んだ。

私は最後の質問をした。「何の植物の根だったんですか?」すると「ランですね。」

タイでは、この手の症例は一杯ある。しかし、日本人は初めてだ。と言うと急に怖い顔になり、

症例写真を見せてくれた。まず首から芽が出てる写真。足の甲から芽が出てる写真。

胸の乳首の脇から毛のように伸びてる写真。

へその脇から出ている写真。背中の肋骨の間から出ている写真。太ももから出ている写真。

それを切開して取り出している写真も見せた。

私はこれだけ見せられると吐き気をもよおして来て、思わず胃液がこみ上げてきた。

私は思い出していた。「あの時だ。3週間前。ランの咲き乱れる場所で寝転んだ時だ。」

先生は言った。「今、見せた写真の植物は全て、ランを含めた寄生植物なの。

寄生植物は成長が早い。それに100種類とも150種類とも言われていて、

その内の80%はタイに存在するのよ。その内の20%は植物だけ出なく、

動物の体に増殖する可能性がある。」そう言うと

「判ったはね。あなた日本人なんだから、ジャングルとか密林には行かない事ね。」

そう言うと、私の肩に両手を乗せるとキツイ目で睨んで引き上げて行った。

そして2日後退院した。

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