中編3
  • 表示切替
  • 使い方

修学旅行奇譚

京都に修学旅行といえば、紅葉美しい秋に行くものだと思っていたが、私の時は緑燃ゆる初夏だった。

そこには教師たちの受験生に対する大きなお世話的な考えがあってのことでした。

私的には秋に行きたかったと、今でも思う。

…それは、さておき。

nextpage

修学旅行初日は団体行動で、奈良公園を回った。

鹿せんべいを買って鹿と戯れたり、集合写真を撮ったりと楽しくすごした。

「3組、全員揃ったな?班長は今一度、班員を確認してくれ」

初日の日程が終わり、宿泊予定のホテルへ行くためにバスに乗る。

担任は終始忙しそうだった。

nextpage

泊まるホテルは、平安神宮の目の前だった。

…というのも、翌日は班行動なのだが、朝一でみんなで平安神宮へ参拝しに行き、そこで解散となり班行動へ移るからだ。

私が泊まったのは3人部屋で、ベッドの他にテレビとソファー、小さなテーブル。

「ソファーいらないから広くしてほしい」

友達がケチをつけるくらい、狭い部屋だった。

nextpage

私は生活係で、主に食事の配膳等のサポートをする。

班長は仲のいいトモちゃん。

班行動の地図係はオギちゃん。

この2人と同室だ。

他に、保健係のヤナちゃんと、副班長のアサちゃんで私の班は構成されている。

nextpage

夕飯を終えて班ミーティングも終え、消灯時間までは人生ゲームや怪談話で盛り上がった。

ヤナちゃんとアサちゃんは2人部屋に戻り、私達はベッドに入りながらおしゃべりをしていたが、いつしか眠くなって寝入ってしまっていた。

nextpage

…どれくらい経っただろう。

真夜中にふと目が覚めた瞬間、金縛りにあった。

小学生で霊感が覚醒して以来、慣れっこになってしまってはいたが、背筋の寒さだけは慣れそうになかった。

首だけは動くので、辺りを窺う。

私が寝ているのは窓際だったが、感じた視線はドア側にあるソファーからだった。

nextpage

「…!?」

暗闇に、濁った感じの白眼が浮いていた。

こちらを窺うように、じっと見ている。

それはソファーのそばで、人の影がうずくまっているような感じだった。

暗闇に目が慣れてくると、その影の輪郭は着物を着た老婆のようだと分かった。

次の瞬間には金縛りも解け、老婆の姿もなくなっていた。

nextpage

スヤスヤ眠っていた2人に、昨夜の話はしなかった。

翌日は予定通り、平安神宮で解散後、班行動となった。

私達の班は、金閣寺→銀閣寺→清水寺→昼食→三十三間堂→二条城→知恩院で回る予定になっていた。

バスでの移動を繰り返し、順調に見学は進む。

しかし午後になり、最後の知恩院からホテルへ戻る途中で迷子になった。

nextpage

地図を頼りに道を進むと、やがて前方に花輪が並んでいるのが見えた。

「やだ、お葬式かな?」

アサちゃんが呟く。

前まで来ると広いお寺の境内と、お葬式の準備をしているのであろう人々、それと祭壇、遺影が見えた。

「…あ…!」

私は遺影を見て驚いた。

昨夜の金縛りの最中に見た、あの老婆そっくりだったからである。

nextpage

お寺さんの門そばで井戸端会議をしている人達の会話が、耳に入ってきた。

「おばあちゃん、修学旅行の学生さん相手にお話しするの、好きだったのにね」

「小さなお茶屋さんで、学生さんには安くお抹茶とお茶受け出してたものね」

「娘さんは、あのお茶屋さん、たたんじゃうのかしら…?」

nextpage

私は、おばさん達にそのお茶屋さんの場所を聞くと班のみんなでお茶しに寄った。

そのお寺からは、たいして離れてなく、お茶屋さんでは留守番のお手伝いさんが店番をしていた。

そこで、美味しいお抹茶と甘い羊羹をいただき、その後は不思議と無事にホテルへ戻れた。

だいぶ遅くホテルへ戻ったので、担任にこっぴどく怒られたのは言うまでもない…。

nextpage

その夜は、あの老婆が現れることはなかった。

翌日は太秦映画村を回り、無事に修学旅行を終えて帰宅。

今思えば、お茶屋さんがたたまれてしまう前に、私達に飲みに来て欲しかったのかなー?と。

霊感の強い私のところへ、たまたま亡くなる間際にでも来ちゃったのかな?と思う。

人の縁(えにし)とは、不思議なものですね。

[おわり]

Normal
閲覧数コメント怖い
5494
5
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

Toro 様

コメントありがとうございます。
ご友人は、夢のなかで誰かと格闘していたのかもしれませんね。
私の旦那も、たまに同じことやります(笑)

初めまして。
高校の修学旅行が京都でした。
その宿泊先で普段穏やかな友人が『この野郎!やんのか?!』と寝言で言っていたのを思い出しました。
翌朝寝言の事を話しましたが、本人は全く覚えていない様子でした。
夢だったのか…それとも…。

表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意