中編6
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聞いて欲しかった…

私がまだ、二十歳そこそこの頃、

ある男性とお付き合いをして、2ヶ月ほど、半同棲をしておりました。

当時の職場でしつこくされてた、別の男性除けに彼氏役をしてもらった事がきっかけで、その男性のお友達や私のお友達と遊びに行く様になり、そのうち何となく2人で会う様になって…という流れのものでした。

しかし彼には、もう1人彼女がいて、

私達の関係はすぐに彼女に知られてしまい、

当の私は、彼女の存在など知りもしなかったので、

私の携帯に彼女さんがかけてきた時は、

ひたすら驚きの連発でした。

電話で

「分かりましたから。私はそれなら、結構ですので。

彼には、荷物をまとめて、今日中にそちらにお帰りいただきますので。」と言い、電話を切りました。

その日の夕方、彼が部屋に帰ってきた時には、彼の荷物は私の手によって全てまとめられており、玄関に置かれていました。

私はと言えば、玄関の上り口に立ち塞がり、

「頼むから、このまま、家帰ってくれるかな?

○○さんから、早急にうちへ帰すようにと、連絡をいただきましたので。」と言い、部屋に入ってくるのを断固拒否しました。

彼は、私に、

「ごめん。、ありがとう。」とだけ言い残し、部屋の鍵を置いて、彼女の元へ帰って行きました。

それからしばらくして、彼と共有の友達から、彼が仕事を辞めたらしいと聞きました。

彼女から電話を受けた際、彼女は私に、

結婚の話が出てると言っていたので、

「辞めたんじゃなくて、転職かなんかじゃないの?」と言ったのですが、

友達が言うには、「朝昼なく、酒飲んで、アッチコッチで借金して、彼女、それ返して回ってるらしい。」と言うのです。

確かに、お酒は好きな人で、休みの日だという時は、ずっと飲んでいるような人でしたが、借金とは…。

酷く荒んだ状態なのは分かりましたが、

私にはどうしようも、はっきり言ってする気もありませんでした。

その話を聞いてまたしばらく経ち、

私がバイト先の飲み屋で働いていた日の事です。

店のドアが開いたので、

いらっしゃいませ

とそちらを見ると、

何と、その彼でした。

彼と私が付き合っていた事は、その店では周知でしたので、

変な空気が流れましたが、

私はまず、

「うちでは、ツケは効かないよ。」とだけ言いました。

彼は、カウンターに財布を置き、

「2万!これで飲めるだけでいいから、

飲まして。悪いけど、2人で飲ませて。」と、私と2人で飲みたいとママに言いました。

私はママに、1時間だけ、店を出て来ると言いました。持っている2万円が、良くないお金のような気がして…。

詳しい訳は、後できちんと話しますと言い、お許しを貰って、彼を連れて店を出ました。

すでに、酔っ払っている状態の彼は、私の車に乗り込むと、

「会いたかった。」

と、言いました。

しかし私は、

「あの子、どうした?彼女。」

と、冷たく言いました。

しばらく沈黙があって、

「出て行かんと、まだ、俺の家に住んでる。あいつといると、息詰まる。」と言います。

情けない顔をして、私を見て、

ボソボソした声で…。

私はそれだけ聞くと、黙って車を運転し、

彼はそのまま、助手席で眠ってしまいました。

私が向かった先は、彼の実家でした。

突然の私の来訪に、家の方は慌てて、

特にお父様は、店のお客様で顔も知っていますし、

彼女も初めて会いますが、全く知らないわけでもありません。

お母様も、話の流れで、私という存在は知っていたのでした。

その私が、突然、しかも夜にお伺いしたものですから、何事かとなった訳です。

私は、

「彼をお届けにあがりました。」と言い、

酔っ払って寝ているので、運んで頂けますか?と、お願いしました。

すると、お母様が

えっ!と、小さく驚きの声をあげ、泣き出し、

彼女は、私の車に走って行きました。

お父様は、下履きを履くと私を促しながら車に向かって歩き出し、

3日前から所在がわからなかったと言うのです。

ずっと私と一緒だったのかと聞かれ、事の次第をお話ししました。

彼女は、私の車の助手席側の扉を開けて、

覆いかぶさるようにして、泣いていました。

何とか、自宅に泥酔してる彼を運び入れ、

そうこうしてる内に、弟さん2人も駆けつけ…。

弟さん達とも、お店で面識がありましたので、

お父様と末の弟さんが、私と一緒に店に来てくれる事になりました。

お店に入り、お父様と弟さんは、ママに頭を下げ、私の時間を取ってしまった事を謝っていました。

3日前、朝、ふらっと出て行ったきり、連絡もつかず、明日の朝まだ、帰ってこなければ捜索願を出そうかと言ってた所だと言います。

大人の男の3日の不在、でも仕事をしてればまだしも、お聞き及びかもしれないが、仕事もクビになって人に迷惑かけたとこなんで、待てても3日と言ってたとこだったと。

とにかく、帰ってきたのだから良かったと、話を終わらせたかったのですが、

何がどーしたものかと、その話に終始し、

私には、いつもよりも、ずっと疲れた日となりました。

その日からちょうど一カ月後…

私はまた、

彼のご実家にお伺いする事になりました。

彼が、山の中で、

車の排気ガスを車内に引き込み、自殺をしたのです。

私に連絡を入れてきたのは、末の弟さんでした。

これで、迷惑かけるのは最後なので、

来てやってもらえませんか。

私は、ママと弔問に行く事になりました。

お父様とお母様は、私の姿を見るなり、

深々と頭を下げてくださり、

前の方に席を作って下さいました。

彼女は、私の顔を見据えて、唇を噛んで泣いていました。私は、その態度の意味が分からず、式の間中、何とも居心地の悪い思いでした。

式が終わり、ママと私が帰ろうとしていると、

末の弟さんが、

手紙を渡してきました。

何かと聞くと、

「兄貴が、車の中で書いてたんだよ。」と言います。

開けてみると、

「もう、死にます

みなさん、さようなら

○○(私の名前)に話を聞いて欲しかった

楽しかった

また、会えたら」

と、書いてありました。

ようやく、彼女が私を睨んでいた訳がわかり、納得するのと同時に、

この手紙を持ってる訳にはいけないと思いました。

これは、彼と一緒に灰にして下さい

彼に持って行ってもらってください

そう弟さんにお願いして、私達はその場を去りました。

四十九日のご供養が終わった日、

彼女からメールが届きました。

それは、

あんなに彼を愛してやまなかった私を

『みなさん』とひとまとめにし、

数ヶ月しか居なかったあなたを

最後に思いながら、死んでいった。

私は、彼とあなたを一生恨んで生きていきます。

と言った内容でした。

ある人にその事を話したら、

人というのは、何かを力にするものだから、

彼は死に際にあなたを思って幾分か安らいだ気持ちに、

彼女さんはあなたを超えたいと強い信念で生きていくのよ

あなたが悪い良いではなく、

何かしら人の力となったと思いなさいと

言われました。

その言葉に、私もまた、救われ、不思議と心も落ち着いたものです。

それでも

私の中に今でも

彼の笑った顔と、同時に彼女の私を見据える顔がふと、浮かび上がる事があります…

そんな時、私は、

私にできる事は、あの時全てやった、と言い聞かせ、

2人の顔を、サッと手で払うように掻き消すのです…

Concrete
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鏡水花さん、コメントありがとうございます。
おっしゃる通り…(´Д` )
はっきり言って、

何だ、それ!

という思いです笑。

ここに投稿させていただいたことで、
かなり、気持ちが晴れやかになり、
また、コメントをいただいて、
今まであったモヤモヤした気持ちが和らぎました。

本当にありがとう。

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にゃんさん、初めまして、そしてコメントありがとうございます。

そうですね、過去と割り切り、生きていこうと思います。
ありがとう。

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希さん、コメントありがとうございます。

誰かにそう言って欲しかったんだと思います。
ありがとう。

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重い…でも…貴方は、まったく悪くないし落ち度も無い!!気にしなくても良いと思いますわ(  ̄ー ̄)ノ

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