中編3
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「なんじゃ、ゴルァ!?見せもんじゃねーぞ、ワレェ!」

忘年会シーズンの繁華街で、お酒の力で傍若無人になった人って見かけますよね。

みっともない醜態を晒しながら、お巡りさんにガン飛ばし、それでも酔いが覚めれば「すいません、覚えてません」なんて言葉で終わらせる。

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「あぁいうのって恥ずかしいよなぁ?いい年して、日本の恥。年末は外国からの旅行者もいるってのに。あーあ、親の顔が見てみたいもんだわ」

私の上司は、いつもこう呟いていた。

でも、私は知っている。

そういう人に限って、カワリモノに好かれるのを。

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「はいはい、お疲れね!気を付けて帰るんだよ!」

飲み屋から出たところで忘年会は解散となり、私と上司、2人の先輩は一緒に駅方向へ向かう。

「あぁん!?俺に命令してんじゃねーよ、カス!」

大声で喚く声がして、見れば赤色灯が光り、若い男性をお巡りさんが取り囲んでいた。

もはや年末の風物詩のようなものかもしれない。

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「またかー。あぁいう人間って、懲りねぇんだよな。馬鹿丸出しでさ」

上司が愚痴る。

酔っ払って地面に座り込み、悪態をつく男性のそばには、薄汚れた白いスーツに、なぜか赤いピンヒールを履いた女性が佇んでいるのが私には見えた。

一目で<あれはヤバい>と分かった。

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女性からは、どす黒いオーラのようなものが湧き出していて、その身体は透けて、すぐにこの世の者ではないと理解できた。

女性は恨めしげに、お巡りさんに絡む男性を見下ろしている。

「ダメだよ、お兄さん。暴れるから通報されちゃうんだよ?とにかく、一緒に来て。ね?」

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お巡りさんに抱えられ、パトカーに乗り込む男性の後に続いて、女性もパトカーへと姿を消す。

<…あーぁ、付いてっちゃった…>

私は上司や先輩とパトカーを見送った。

たぶん、あれは悪霊化してる。

あぁいった類は、人の中にある闇を好む。

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「じゃぁ、土日はゆっくり休んで、また月曜な!」

陽気な上司と駅で別れ、

「先輩、お疲れ様でした」

「うん、また月曜日にね」

「気を付けて帰ってね」

先輩2人とは帰りのホームが違うので、それぞれのホームへと別れて私は帰路につく。

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「ウルセェ!テメーが悪いんだろが!」

自宅最寄り駅で降り、駅前の繁華街の途中でまたもや年末恒例の喧騒に遭遇した。

男性二人が揉み合い、お巡りさんが仲裁している。

この時期は、お巡りさんも忙しそうだ。

「何言ってんだよ、ワリカンだって話したのはお前じゃないか!」

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あまり酔ってなさそうな男性が、自分の胸倉を掴まれて憤慨していた。

お巡りさんが二人を引き離し、喧嘩はダメだと諭している。

…私には見えていた。

完全にデキ上がってイキがっている男性の背後…。

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精気のない青白い顔、くたびれたスーツを着て、その存在独特のどす黒いオーラを纏い、身体は透けていて酔っ払い男性をポッカリと穴の空いた目で睨んでいるようだった。

<…うわ、ここにもいる>

私は足早に繁華街を抜けてバスターミナルからバスに乗り、帰宅した。

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悪霊の類は、人間の心の闇が大好きだ。

だから、酒に溺れやすい人間にとり憑く。

酒は飲んでも呑まれるな。

…あなたも、気を付けて。

[おわり]

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