長編7
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黒い人

土曜日、学祭の準備で斗馬と買い物に行った。

ポスカと竹串と…とメモを見ながら歩いた。

俺「テーブルクロスってどこに売ってんの?」

斗「………」

俺「知らんの?」

斗「………」

返事がない。

俺「東急ハ○ズとかにあるかな」

右隣を歩いていた斗馬に目を向けた。

斗馬はものすごく下を向いていた。

首が痛くなりそうなくらい。

そしてやっぱり返事はなかった。

俺「ここら辺ニ○リとかないっけ?」

斗馬は黙ったまま後ろへ移動した。

俺「普通の布じゃ駄目なんかな」

もう返事は期待してないけど言ってみた。

斗馬は俺の真後ろで真下を向いて黙っている。

もう勝手に進もうと、東急ハ○ズに向かった。

途中から斗馬がパーカーの裾を掴んできたが、よくあることなので気にしなかった。

他の人から見たらおホモだちに見えたかもしれないけど。

店内に入るとパッと手を離し、俺の右隣に戻ってきた。

斗「4階ですね」

いまさら返事した。

エレベーターで4階へ上がり、安くてシンプルなテーブルクロスを買った。

ついでに他のフロアでも買い物をした。

荷物が邪魔になったので一旦学校に置きに行こうと、大学へ向かった。

店から出ると斗馬はまた俺の後ろで下を向いていた。

大学まで何度か話し掛けたが一度も返事はしてくれなかった。

休日の学校は部活やサークルの人以外、ほとんど人がいなくて静かだった。

教室に荷物を置き、缶ジュースを飲みながら少し休憩した。

斗「黒いの、見えました?」

俺「どこの?」

斗「やっぱいいです」

缶ジュースを飲み干し、2度目の買い物へ。

左は花壇。右は道路。前は横断歩道。後ろは斗馬。

ホームセンターはこのまま真っ直ぐ行って右。

信号が変わり、横断歩道を渡る。

直進しようと歩いていると急にパーカーをひっぱられ、強制的に左の道へ進路が変更された。

俺「なに」

斗馬は無言のまま俺のパーカーをひっぱり、近くの某有名カフェに入った。

ほにゃららフラペチ~ノ~♪とか言いながら、ほにゃららフラペチーノを頼んだ。

席に着いて、2度目の休憩。

俺「どんだけ疲れたの?」

斗「ボスっぽいのが…」

俺「なんの?」

(斗馬談)

170~180cmくらいのガリガリ体型のシルクハットみたいな帽子をかぶった皮膚まで真っ黒な男が何十人もいて、

通行人の顔を覗き込みながらうろついてる。

ただ、全員が覗き込まれているわけではない。

覗き込まれるだけの人と、覗き込まれた後変に真っ白な歯を見せてニヤニヤ笑われてる人がいる。

横断歩道の先の道に2mくらいでやはりガリガリの同じくシルクハットのような帽子をかぶった真っ黒な男が、時々通行人の肩をポンと叩いていた。

その男だけは常に真っ白な歯を見せて笑っている。

1人だけ他の奴らとは見た目も行動も違うからボスだと思った。

何をしてるのかもわからないし、覗かれたら、覗かれて笑われたら、肩をたたかれたら、なにがあるのかどうなるのかはわからない。

肩をたたかれた人は軽くつまづく程度で、それ以外は特に何もなさそうだけどよくわからないから避けたい。

黒い男達は建物の中には1人もいないのでとりあえずここに逃げ込んだ。らしい。

俺「その場で言えよ」

斗「散歩してる親子とか携帯使ってる人とか、誰かと喋ってる人は高確率で覗かれてたんで喋らない方がいいのかな、と」

俺は一人で喋ってたよ。

俺「…買い物どーする?」

斗「もう少し様子見で」

結局、ほにゃららフラペチーノを2時間もかけて飲むことになった。

もうべちゃべちゃだよ。

べちゃべちゃフラペチーノを飲み干し、外へ出た。

黒い男はさっきよりは減っているらしい。

まだいるかわからないけど、ボスの前は通りたくないので少し遠回りしてホームセンターへ向かうことにした。

5階建てマンションの前の小さな公園を通る。

ブランコに男の子が1人。

砂場に女の子が2人。

ブランコの男の子は激しくブランコをこいでいる。

手を離したら落ちるんじゃないかってくらい。

俺「ガタンってやるやつ、昔やったよな」

斗「あれは違いますよ」

ものっすごい小さい声で後ろから返事が返ってきた。

俺「ガタンのやつじゃないの?」

今度は無視され、そのまま公園を出た。

少し歩いて右に曲がり、また少し歩いて右へ。

ぐるっと回り込んでやっとホームセンターに着いた。

斗「木材でしたっけ」

俺「…おぅ」

マイペースだな。

欲しい木材のサイズや形をおっちゃんに伝えて出来るまでの10~20分間、店内のベンチに座って待った。

俺「今日バイト?」

斗「バイトですね」

俺「大学に木材置いてからでも間に合う?」

斗「22時からなんで余裕ですよ」

ならよかったわと話していると、ピンポンパンポ~ンと店内放送が流れた。

どうやら切り終わったらしい。

おっちゃんにお礼を言ってお金を払った。

俺「帰り道どうする?」

元々通るはずだった道を使うのが一番近い。

木材が意外と重たかったので正直あまり歩きたくなかった。

斗「さらにぐるっと」

俺「来た時の道も駄目なの?」

斗「2人いたじゃないですか」

俺「どこに」

斗「公園に」

ブランコに1人と砂場に2人…

俺「3人だろ」

斗「子供じゃなくて、黒い人」

俺「あぁ、そう」

いねぇよって言ってやりたい。

斗「ブランコすごい揺さぶってたじゃないですか」

俺「あの男の子がやってたんじゃないの?」

斗「両サイドにいた2人がやってましたよ」

俺「あの男の子大丈夫なの?」

斗「さあ」

まぁ冷たい。

俺「…様子見に行かね?」

斗「まだいたらどうするんですか」

俺「え…時間も遅いし…送ってく?とか?」

斗「はぁ…そうですか」

表情が(こいつバカじゃね)って表情だったけど気付かなかったことにする。

来た道を戻り、公園の近くまで来た。

もう17時半を過ぎているのに男の子はまだブランコに乗っていた。

砂場にいた女の子はいなかった。

斗「じゃ、ここで待ってるんで」

俺「は?」

斗「荷物預かっておきますね」

俺「え?」

斗「終わったら来てください」

俺「ん?」

斗馬は荷物を持って向かいのモ○バーガーへ入っていった。

一緒には来てくれないようだ。

仕方なく一人で公園へ入り捻るように揺れるブランコへ向かう。

斗馬が来なかったってことはまだ黒い人とやらはいるんだろうか。

それとも単に面倒臭かったんだろうか。

どっちもあり得るなぁと考えてる内にブランコに着いた。

俺「こんばんは」

後ろから声をかけてみた。

無視。

2、3歩あるいて真横へ行き、ブランコの鎖?あの持つ部分を掴んだ。

ガシャッ キィ キィ キィ―…

男の子の乗っていたブランコは動きが鈍くなった。

俺が止めたんだから当たり前だ。

同時に、誰も乗っていない隣のブランコ達(3つ)がキィキィと揺れた。

ちょっとビビった。

俺「急にごめんね。時間大丈夫なのかな?」

男の子は驚いたような顔で俺を見上げた。

かなり息を切らしている。

俺「えっと…もう遅いけど帰らなくて大丈夫?」

男の子はブランコから下り、返事することなく走って公園から出ていった。

俺は心に10のダメージをくらった。

「変質者」として捕まった人の中に、本当にそんなつもりはなかったという人はどれくらいいるんだろう。

………戻ろう、かな。

もう公園にいても仕方ないので斗馬のいるモ○バーガーへ向かった。

適当に注文して2階へ。

窓際の公園側のカウンター席に斗馬がいた。

見てたんだろうか。

斗「お疲れ様です」

俺「おー。別に何もなかったぞ」

斗「幸せですね」

俺「どういう意味」

隣に座り、ハンバーガーを食べた。

斗馬の上着の裾とズボンが濡れていた。

トレイの上にはペーパーが沢山。

俺「こぼしたの?」

斗「桃さんがブランコ止めたあと、ボスがガラスの向こう側だけど目の前に来て俺のドリンク倒して行きましたよ」

俺「え?ボス来たの?」

斗「あいつら実は中入れるんじゃないですかね?普通にガラスから指だけ出して来ましたよ」

俺「…笑ってた?」

斗「顔真っ黒だったんで笑ってないかと」

俺「怒ってたのかな」

斗「桃さんに怒ればいいのに」

俺「え」

ハンバーガーを食べ終え、大学へ向かった。

もう黒い人達はいないのかと聞いたら見える範囲では3人しかいない、と。

なんか大丈夫そうなので木材を教室に置いて、帰った。

玄関を開けるとゲン(柴犬)がお座りをして出迎えてくれていた。

これはわりとよくある。

母ちゃんにもたまにしてる。

俺「ただいま~散歩行きたいんか~?」

しゃがんでゲンの首もとをわしゃわしゃと撫でる。

ゲンと目が合う。

何かくわえてる。

俺「なんでもかんでも拾って食うなよ」

ゲンの口に手を突っ込み、くわえているものを取った。

板だった。

15年ほど前によくわからない女の子がくれたよくわからない菱形の板。

机の引き出しに入れてあったのにどうやって出したんだこいつ…と思いながら、よだれにまみれた板をティッシュで拭いて引き出しの中へ戻した。

引き出しはちゃんと閉まってた。

その後ゲンと散歩に行ったけど、特に何もなくいつも通りだった。

拾い食いなんかしないでプリプリと尻を揺らして歩いた。

…ゲンがね。俺の尻は揺れてない。

結局、黒い人は何だかわからず、斗馬も見たのはこの日だけらしい。

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相も変わらず、面白く、そして怖いですね(;・д・)
これからのお話も楽しみだなぁー☆★**