中編3
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死神

小学生の頃から「悪魔(ディモス)の花嫁」という少女漫画が大好きでした。

「王家の紋章」と共に愛読していました。

怖くも美しい絵に魅力されて、何度も読み返したものです。

死神の存在を知ったのも、悪魔の花嫁からでした。

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あれは中学2年生の秋口だったと思います。

2学期の中間テストが終わり、やれやれとまったりムードになったので友達に誘われて紅葉を見に行くことになりました。

少し遠出になるので、日曜日の朝早くに最寄り駅で待ち合わせ。

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「どうせ箱根まで行くならさ、温泉も入ってこようよ?」

「いいねー」

そんな話をしながら電車に乗り込みました。

…ところが、乗り込んだ電車がなかなか出発しません。

車内は、ざわめいていました。

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「せっかくの日帰り旅行だっていうのに、幸先悪いねー」

友達の言葉に、「そだねー」と頷く私。

その時、車内アナウンスが流れました。

『お急ぎのところ、お待たせしまして申し訳ありません。この先の踏切で、先行車両が人身事故のため停車したとの通報があり、ただいま確認をしております。詳しい情報が入り次第、お知らせします』

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「えー、なにそれー」

友達が口を尖らせました。

「早起きして早く出た意味ないー」

その時、また車内アナウンスが入りました。

『お急ぎのところ大変申し訳ありません。ただいま入りました情報によりますと、先行車両で人身事故による被害者の救出作業が開始された模様。作業が終わり次第、安全確認を行ってから出発となりますので、今しばらくお待ちください』

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友達が隣で盛大なため息をつきました。

結局、電車が出発してしたのはアナウンスから2時間も経過してからでした。

電車は先行車両に追いつかないよう、徐行運転をしています。

やがて、事故現場の踏切へ差し掛かりました。

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踏切には警察や救急隊。

朝早いせいか、野次馬はいませんでした。

踏み切り脇にはブルーシート。

「!!」

友達と一緒に見てしまいました。

ブルーシートから覗いている、おそらく血で真っ赤に染まったのであろう手…。

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そして私は、それとは別に黒い影が見えていました。

黒いフードを目深に被り、骨だけの手は大きな鎌を持ってブルーシートのすぐそばに佇んでいます。

<死神…>

そう思いました。

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その死神は左腕に、おそらく被害者のであろう霊体を抱えていました。

それから、フッと姿を消しました。

「なになに?他にも怖いもの見えた?」

のん気に尋ねてくる友達に、死神のことを話す気力も奪われて、「何でもない」と私。

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死神は、持っている鎌で肉体と霊体を切り離して霊体を霊界へ連れて行くんだとか。

自ら命を絶つと、ご先祖ではなく死神がお迎えに来るのかー、嫌だなー、と思いました。

死神のお迎えが、ひどく怖ろしく思えたのです。

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後から知ったのですが、死の象徴であり魂の回収人、魂の管理者である死神は、その人その人のイメージにより姿が変わるそうです。

こればかりは自分で自殺してみないと、どんな死神が迎えに来るのか分かりませんが、できれば死神のお世話にはなりたくないものです。

[おわり]

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