中編5
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家の中に誰かいる…

俺、警備員にみたいな仕事してるんだけど、個人住宅で警備会社と契約してる家ってけっこうあるんだよ。

警備システムが発動したり契約者から連絡があると家の様子を見に行くんだけどさ、そんな中でも二度と行きたくないって思った家があった。

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今から5年くらい前、まだ就職したてだった俺が会社の車で待機してると、とある民家から連絡が来たんだよ。

当然、俺はその家に向かったんだ。

その家は街から少し離れた集落にある一軒家だったんだけど、昔ながらの瓦造りの二階建て住宅だったんだけどさ、外から見たら家の中が昼間なのに無茶苦茶暗いんだよ 。

不気味な雰囲気だったから家に着いた時に少し体がブルッた記憶がある。

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その家の契約者は、そこそこ高齢の女性。

まあAさんとしようか。

高齢の人ってけっこうボケてる人が多いんだよね。認知症、被害妄想、そういう類の人だろうと思ったんだよ。

しかし連絡があった以上契約者と会わないといけないから、とりあえず呼び鈴を押したんだ。

呼び鈴押してからしばらくしたけど誰も出てこない。気付いてないのかって思って玄関の小窓をふと見てみたらチビりそうになった。

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窓のガラスに顔をべったりくっつけて、外にいる俺をジッと見てるババアがいたんだよ。

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思わず「うおっ!?」って声出して何歩が後ろに下がったんだけど、そしたらそのババアがスッと窓から離れて玄関を開けたんだ。

そのババアこそ、通報したAさん。

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そのAさん、けっこうデカい家に一人で住んでるんだけど、容姿がこれまたかなりヒドイ。

田舎のばあちゃんが来てるような上着と白いシャツで、下はももひき。上着も染みだらけだし、とにかく汚い。着ろって言われたら全力で断るレベル。

髪も長い白髪で、ちゃんと髪洗ってんのかって思う程みずぼらしい感じ。顔も何かに追い詰められたように目の下のクマが凄くて、何て言うか生気のない目をしてた。

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玄関あけて出てきたのはいいけど、Aさん何も言わないんだよ。ただ俺の顔を不機嫌そうな顔で見るだけ。

しかしまあ、そんなババアでも契約者であることは間違いないから、とりあえず

「○○警備の者ですけど、どうかしましたか?」

って聞いてみたんだよ。

そしたらAさんようやく口を開いた。

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「……家の中に誰かいるんです……」

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ボソボソとそんなこと言ってた。

ぶっちゃけボケた奴って、けっこうそういうこと言うんだよな。

鉄格子までした窓から人が入って来るとか、外にいるのに家の寝室に今不審者がいるとか、とにかくアホみたいなことを真顔で言ってくるんだよ。

当然俺もその類の通報だって思ったから普通に

「じゃあ家の中を見てみましょうか」

って言って中に入ったんだ。

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Aさんの案内で家の中を歩いたんだけど、中はやっぱり想像通りの感じ。

埃だらけだし、畳は軋んで穴が空きそうなやつまである。

机の上にはいつから洗ってないのか分からん食器がたくさん置いてて、置いてあるみかんとか普通にカビ生えてたし。

ゴミもそこら中に散乱してるから、歩くたびに靴下越しに何か小さなゴミを踏んでるのが分かるくらいだったな。

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そして何より暗い。電気くらいつけろよって言いたくなるくらい。

しかしまあとにかく広い。凄まじく。田舎の家ってデカいのが多いけど、とりわけ特にデカかった。

もしかしたら昔地主だったのかもしれん。

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んで、一番奥の部屋の前でAさんが止まって、閉められた4枚の襖を指さして、

「ここに誰かがずっといます」

って言ったんだ。

部屋の前からじゃ特に音とか聞こえない。むしろ家全体が凄まじく静かで、Aさんの息がバカみたいに聞こえてくるくらいだった。

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襖自体もかなり汚かったけど確認しないことにはどうしようもないから、とりあえず開けることにしたんだ。

警棒と懐中電灯を構えて、襖に手を掛けた。

……でも、内側で何か引っかかって軽い力じゃ開かなかったんだよ。で、ちょっと強めに力入れて開けたんだ。

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そしたらベリって何かが剥がれる音が聞こえて、ようやく襖が開いた。

で懐中電灯で中を照らしたら、ゾッとしたよ。一気に全身に鳥肌が立った。

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仏間だったんだけど、部屋の壁やら襖やらに一面御札みたいなのが貼られまくってた。

それこそ隙間がほとんどないくらいに。

で開きにくかった襖にも御札が貼られまくってて、それが引っかかって開けれなかったみたい。

何より一番ビビったのが、天井に所狭しと誰かの自画像が貼り付けられてた。しかも、どれも苦しそうな顔で。

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とにかく全部異様な部屋だった。あまりのことで呆然としていたら、Aさんが後ろからボソッと言ってきた。

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「……いるでしょ?」って。

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その顔がね、もう気味悪いんだよ。

生気のない目でニタって笑ってんの。顔は笑ってるけど、全く笑ってない感じ。 

この部屋の状況で、何が面白いか分からないんだけど、凄まじく気持ち悪いニヤつきだった。

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その顔見たら、もう無理って思って、無線入れるふりして急いで外まで出てった。

俺が外に出たら、Aさんがノロノロと外に出てきてた。

とにかく帰りたかったから、「何もいませんでしたね」って適当に挨拶してから車に飛び乗って家から離れたんだ。

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それからは特に事故も起こることも霊的な不幸があることもなかったんだけど、数日後にふと思い出したんだ。

あの仏間、さっき書いたように、内側から襖一面に御札が貼られてたんだ。

それこそ軽い力じゃ開かないくらいに。べったりと。

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……なら、アレを貼ったのは誰だろうな。

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誰かが御札を貼ったんなら、その人物が内側にいるはず。でも中には誰もいなくて、Aさんもその部屋の外にいた。

それを考えたら、さらに鳥肌が立っちまった。

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それから色々あってその警備会社辞めたんだけど、あの家を思い出したら未だにブルってくる。

とにかく、あの家には二度と行きたくないな。マジで。

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