中編3
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残業

今日は仕事が、特別遅くなってしまった。

いつもは6時頃には帰れるのに、今日に限って残業を押し付けられて、今は10時過ぎ。

俺はとある会社で働いているただの平社員。

その会社の先輩が全然何も出来ない奴なんだ。

上には弱く、下には強い。嫌われる上司の塊だ。

「なんで俺がこんな時間まで仕事させられるんだ!大体いつもいつも、何かしらにつけては俺に面倒臭い作業を押し付けやがる。」

ぶつぶつ独り言を言いながら、いつもの帰路にある、駅の改札口を抜ける。

その日は徹夜で友達と話してたせいか、眠くて眠くて、しょうがない。「若い頃だったら、こんなの朝飯前だったのに、年は取りたくないもんだな。」

アクビをしながら駅のホームにあるベンチで、歩く人たちをただぼーっと見る。

そのうち、いつの間にかまぶたが閉じかけていた。

危ない、危ない。

ここで寝てしまったら、次来る各駅電車に乗れず、急行で帰るハメになる。

急行は混みすぎてて、ゆっくりしてられない、だから次くる各駅に乗らなければならない。何としてもだ。

けれど眠さには勝てない、そんなことを考えてるうちに、いつの間にか寝てたらしい。

起きた頃には12時を少し過ぎていた。

やってしまった。これでまた寝る時間が少なくなる。「くそっ!」と指パッチンをする。案外上手に出来たそれを「いい音なったな。」 とふと周りにいる人に見られてないかと、チラッとあたりを見回す。その心配は不必要だった。

周りに人がいない、というかいつの間にか周りの電気が消されて、自分の近く以外真っ暗だった。

辺りは静寂に包まれる。「一体何が起こっているんだ?」全然自体が飲み込めない。

俺が寝ている間に、終電が終わっちまったってのか?

そんなはずはない、だってこの駅は1時頃まで運行してるのを何度も見たことがあった。

じゃぁこれは一体?

不思議な空間に1人だけ取り残されて、混乱する。

「まてよ?時刻表、時刻表はどこだ!?」

足元が何故かふらつく、そして時刻表を見るとやはり、1時まで運行している。

「なんだ、焦って損をした。なんだ馬鹿馬鹿しい。

そもそも、人がいないからとどうしたと言うんだ。」

電車が運行してれば何の問題もない。

そう片付けてふーっと一息つく。

その時目の前に電車が走ってきた。

ほら、やはり何のことは無い電車はまだ走っているではないか。

そうしてベンチから立つと違和感を覚えた。

何かがおかしい。そのおかしいものは今、目の前にある電車だ。

みんな知っている黄色い電車や、銀色のボディに青や緑といった、線が入っているものではなく、なんといったらいいのだろう、こう、昔風な、レトロなボディ、肌色に包まれた、見たことのない電車だった。

側面には苔がはえ、何10年もほったらかしにしといたような外見をしている。

これはどうしたらいいのかと、ただただ呆然と電車を見る。

けれど乗らなきゃ、うちには帰れないので恐る恐る乗ることにした。

そっと1歩前に踏み出すと、視界に入って来たのは床に敷かれたフカフカのじゅうたんだった。

「え?ネコバス?なにこれ?」

そう思った次の瞬間、自分は線路にいた。

頭の整理ができない。

なんで線路にいるのか考えようとしてももう遅かった。

目の前に迫る眩い光と、耳の近くで鳴り響くブレーキの音で全てが闇に包まれた。

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