中編4
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深夜のコンビニ

住んでいた場所は治安も悪けりゃ交番も近い。

とはいえ深夜となると交番は問題過多のこの街のお陰ですっからかんだ。

たまたま都市内での飲み会に誘われて、終電で自宅のある街まで帰ると、駅の目の前から家の前まで飲み屋街が続いている。

それを過ぎて家とは逆方向だがコンビニに寄ると、店員さんが不安そうにわたしを見ていた。

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深夜のコンビニバイト、しかもこんなところだ。

不安になるのはわかるが、男なんだからそんな顔でこっちを見ないでよ。

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そんなところで店員さんは頼んでもいないレジ前の商品をピッピとレジへ通していく。

暑くもない時期なのに額には薄く汗が出ていた。

まだ20代前半だろうか、一体何を考えているんだ。

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レジ前の芋ようかんを大量に手で掴んで、レジにゆっくり通していく。

何をしているんだ、頼んでないぞ。

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「ちょっと…」

「あ、あの…こんなこというのも難ですけど!」

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彼は少しだけ手を止めてわたしを見た。

それからチラリと店の大きな窓から外に目だけやると、少し気味の悪そうに「やばいんじゃないですか…」とそう言う。

わたしはなぜか彼の表情にただならぬ雰囲気を感じて、自分の背後の棚にあるシュークリームを取る振りをして店の外を見た。

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「わ…」

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店の大きな窓に人がへばり付いている。

そいつが息をするたびに窓は白く曇った。

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「見ましたか?あの、どうしますか?」

「ど、どうすればいいですか?」

「あの人、お客さんが入ってきたときにそこに来たんですよ。でも時間が経つにつれてどんどんあそこの窓に近づいてきて、そしたら窓にべたっと顔つけて…」

「け、警察…その前にあれ人ですよね?」

「あ、あの…?」

「い、や…なんでもないです」

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レジに商品を通していないと不自然なのでその間も商品をずっとレジに通し続ける。

金額は16000円ちょっと。

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こういう時って裏から出してくれたりするものではないのか。

そう思って彼に言おうとすると、彼は袋詰めをしながら「限界ですね…」とよくわからない言葉を吐いた。

わたしは16000円ちょっとをそこに置くと彼は「僕が払っておきますよ!」と言ったがわたしはそのままそれを置いておく。

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「警察呼ぶので…」

「ええ、呼んでください…あと1人になるの怖いんでここで電話かけてもらえますか?」

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彼はすぐ電話かけて、近くに警察官が出ているということもあり5、6分で事態は片付いた。

その時でさえその男はあの窓に貼り付いたまま。

警察官3人がかりで彼を窓から剥がして連れて行くと、2台きたうち、そいつを乗せた1台は交番とは違う方向に走っていった。

一応お話をって事で、バイトの彼は仕事中だったから後日に事情聴取をということになった。

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でも不審者の通報で事情聴取なんてされただろうか。

わたしは不思議に思いながらパトカーに乗せられてそう遠くも離れていない交番に連れて行かれた。

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名前や仕事などを聞かれて、素直に答える。

「制作のお仕事なんてすごいですね~」

それより本題に入ってほしい。

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「先ほどの不審者なんですがね、以前にもこういったことで捕まってまして…」

ああ、やっぱりおかしい人だったんだ。

わたしはそう納得して、警察官の話を聞く。

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「でも本当にあそこで呼んでくれてよかったです」

「え?」

「あのまま外に出ていたら、怪我だけじゃすまない可能性もあったので…」

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それ以上は聞けなかった。

聞いても教えてくれなかったのもある。

ただコンビニの彼には一度お礼をしなければと思った。

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パトカーで送ると言われたのでその日はそこで帰宅したが、翌日礼を言いにコンビニに立ち寄ると、彼はいなかった。

そうか、時間がちがうのか。なんとなく納得しつつ、またあの時間にコンビニに行くのは嫌だったので、店員さんを引き止めて話を聞く。

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「あの、昨日の深夜に入っていた男の子なんですけど…」

「昨日の深夜?佐々木君かしらねえ」

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パートのおばちゃんがシフト表を確認しに店内を走っていく。

そして戻ってくると「佐々木君、今も入っていますよ!」と言った。

休みが出たから急遽出勤してくれているとかなんとかで。

佐々木君は少し太った眼鏡の男の子だった。

いや、この子じゃない。

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再度おばちゃんに「あの、もうひとり…いませんでしたか?」と尋ねると、おばちゃんは不思議そうな顔をして口を開いた。

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「変だね…昨日は佐々木君と店長だけだったけど」

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