中編3
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運動会

小学3年生の時の運動会で、とても奇妙なことがありました。

あまりにその奇妙なことが続くので、当時は校内でしばらく騒ぎになったほどです。

私は地区対抗のリレーの選手に選ばれていて、リレーは午後のプログラムの最後でした。

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リレーの前にトイレを済ませておこうと、私は1人で校舎に入りました。

すると、トイレの前に私と同じようにリレー用のハチマキと腕章をした男の子が立っていたんです。

私がトイレを済ませて出てきても、まだそこに佇んでいました。

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ピンポンパンポーン…。

『地区対抗リレーが間もなく始まります。出場する選手は、校庭西門前に集まって下さい』

放送がかかり私は男の子に、

「早く行かないとリレー始まっちゃうよ」

と声をかけようとすると、すでにそこには男の子の姿はありませんでした。

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おかしいなぁ、と思いつつも集合場所へ行くと、先生が出場する選手を数えていました。

私の出走順はアンカーの前なので、同じ色のハチマキと腕章を付けた生徒達の1番後ろの人の前に並びました。

「あれ?…1人多い?ちょっと待てよ?」

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先生が首を傾げなら、また選手の数を数えます。

町内1チームは5人。

それが、ある町内だけ1人多いというのです。

「やっぱり1人多いなぁ」

呟いた先生は名簿で点呼を取り始めました。

名前を呼ばれて返事をしていきます。

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「他に呼ばれていない者は?」

返事はありません。

「なんだ、ちゃんと人数そろってるじゃないか」

念のため、とまた選手数を数えました。

「???」

数えると1人多いのです。

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『プログラム23番、地区対抗リレーです』

結局、なぜ1人多いのかも解明されないままリレーが始まってしまいました。

リレーは校庭を1人半周してバトンを繋ぎます。

アンカーは町内会長さんや役員さん達、大人です。

私の住む町内は、スタートダッシュで2位に着きました。

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基本は男子が後ろを引き離し、女子が少しでも前へ詰める。

それが、リレー前に言われた作戦でした。

バトンが3人目の男子に渡り、いよいよ出番だと思った時、見てしまいました。

走ってる選手が、1人多いのを。

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<あ…!あの時の男の子…!>

そうです、私がトイレに行った時にトイレの前で佇んでいた男の子でした。

良くみると身体が透けています。

先生が数え違いをしていた理由が分かりました。

先生には、あの子が見えていたのだと。

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しかも一時的なことだと分かったのは、今はあの男の子に誰も気付いていないからです。

そうこうしているうちに、1位の町内の選手と私の町内の選手が順位を競うデッドヒートのままバトンを繋いできました。

バトンを渡された瞬間、走ってきたあの男の子の姿がフッと消えるのが視界に入りました。

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ちょっと驚きましたが、すぐに切り替えて走り出した私は、半身分前に出て順位を逆転させました。

アンカーの役員さんにバトンを渡す頃には、半身差から少し引き離す形でバトンを繋ぎました。

その後は役員さんの猛ダッシュで引き離し、1位でリレーは終わりました。

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場内に歓声が溢れる中、退場するために再度整列しましたが、あの男の子はいませんでした。

運動会は無事に終わり、生徒はそれぞれ自分の椅子を持って教室に戻ります。

ホームルームが終われば、体操着のまま手ぶらで帰れるので楽チンでした。

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保護者は皆、ほとんどが先に帰ってしまっていたので友達と帰ることになりました。

短いホームルームを終えて昇降口で上履きから外履きに履き替え昇降口を出ると、校庭に佇んでいる影を見ました。

「あ…っ!」

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あの男の子でした。

1人、夕暮れの校庭で何か感慨深そうに校庭を見回していました。

何だか満足そうな笑顔だったのを覚えています。

「どうしたの?」

そう友達に声をかけられ、「何でもないよ」と答えて私は学校を後にしました。

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運動会であったことを振り返り、おしゃべりしながら帰宅。

後から、運動会の前日に地区対抗リレーで走る予定だった男の子が事故死していたことを知りました。

そして私は思い出したのです。

あの男の子がしていたハチマキと腕章は、私の町内の色だったのを…。

[おわり]

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