短編2
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あとひとり

中学の頃の卒業記念アルバム。10年ぶりに箪笥の中から出てきたのだ。

僕はふと懐かしくなり、ページをめくる。

開いたページには、卒業前に撮影した集合写真があった。

学生服を着た男女40名の集合写真。

皆、背筋をピンと伸ばし、

その表情には幼さと緊張が入り混じる。

だがその中に一人、

妙な事をしている生徒がいた。

その同級生は、小さく手を前に差し出し、指を二本立てて、こっそりピースをしていたのだ。

フフ。

その生徒の茶目っ気に、僕は笑う。

だが、写真を見ている内に、その生徒の違和感に気付いた。

ピースをしている生徒の顔が、写っていないのだ。

隠れているのではない。

首から上が、消え失せているのだ。

ピースをしたままの格好で、顔だけが消え去り、後ろの生徒の学生服が透けて見えている。

なんだこれ?

”ピンポーン”

玄関のベルが鳴る。

僕はアルバムを閉じ、玄関に向かう。

”速達でーす”

その郵便は、中学の頃の同級生の、訃報だった。

僕はハッとする。

その同級生は、例の集合写真の中の、顔の無い人物だった。

え?

まさか…?

僕は再びアルバムを開き、集合写真を確認する。

ヒッ!

その集合写真は、先程見た時と、違っていた。

集合写真に写る生徒の、

ほぼ全員の顔が、

39人分の顔が、

無かった。

首から上が、消え失せていた。

そして、その全員が、

人差し指を立てていた。

ピースをするみたいに、指を一本、ピンと立てていた。

そして僕は気付く。

その集合写真の中で、首から上が存在しているのは、僕一人だけだった。

Concrete
コメント怖い
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流石の怖さですね…短編でも迫力があります(;・д・)

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