中編3
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人影

俺がベッドに入って寝ようとすると

道路2つ挟んだくらいの距離にある古いマンションの屋上にぽつんとある、用途のよく分からない小屋のようなものの窓に、人影が見えた。

別に毎日そのマンションの屋上の小屋を見てるわけでもなく、それどころな気にもとめないような感じだったが、その小屋には灯りがともっているのを見るのは始めてなので、少しだけだが印象に残っていた。

その人影は小屋にはめられたすりガラスの窓に、オレンジ色の灯りかかに照らされて映っていて、その人影の主はいったいどんな人間なのかはよく分からない。

まあ多少気になっただけでそこまで気にとめることもなく、その日は寝た。

次の日、夜、寝ようとすると、また同じようにその小屋のすりガラスに人影があった。

同じ窓、同じ位置。

しかしその日もそこまで気に留めることはなかった。

そのまた次の日、これまた自分がベッドに入ろうとしている時、またその小屋の同じ位置に人影が見えた。

ここら辺から、「少し変だな」と思い始めた。

そもそも人がいるのさえ見たことのない場所に、三日連続、同じ位置、同じ時間に人影(遠いし、ガラス越しなのでよく判別できないが多分同じ人物)がいる。

違和感を感じたものの、その日もそのまま寝てしまった。

次の日、またいる。

やっぱり同じ位置。

違和感が膨らむ。

次の日。まただ。

普通であれば、「変だな」とは思いつつも気にもとめないだろうとは思う。が、どうにも俺はその謎の人影が気になって仕方がなかった。

そこで俺は、観察をしてみることにした。

突拍子も無い思いつきではあるが、1度気になり始めると止まらない性格。しかし、夜、いつもならもう寝ようとする時間にわざわざ外に出てまで調べようとするほどの行動力は持ち合わせていないので、妥協案である。

それから一時間ばかり、某有名引っ張りハンティングRPGをやったりネットサーフィンをしたりしながらコソコソと観察をしていたが、やはり、何だかおかしい。

その人影は微動だにしないのだ。

なにか作業をしてるにしても、多少は姿勢を変えたりするものではないか。

・・・いや、もしかして人形?

だとしたらこんなにバカげた事はないんじゃないか?

元からそこに置いてあるものにいろいろ想像を膨らましてあーだこーだと・・・

こんな事を考えていると、

ぐるんっ

と、その人影がこっちを向いた。

え、人形じゃなかった?

でも、だとしたらなぜあんな場所でずっと動かずにいたんだ?

まるで思考がまとまらず、固まっていると

「おい」

と、静かな、低音だがハッキリとした声が遠くから聞こえた。

遠くから静かな音、というと矛盾しているようだがたしかにそうだ。

声の主は明らかにその人影であったし、その声はとても静かでハッキリとした声だった。

言いようのない恐怖を覚え、布団に潜り込む。

たぶん、人ではない。

なにか、別の恐ろしいなにか。

その日から、もう寝るときにはカーテンを閉めて、外は見ないようにしていた。

しかし、その日以降、毎日寝る前、

「おーい」だとか「○○(自分の名前)」など、同じ声で、自分を呼ぶ声が聞こえてくる。

得体の知れないものの声が毎夜聞こえてくる。

恐ろしかった。

昼間でさえ、外を見るのが怖くてカーテンを開けられない。

当然ながらぐっすり眠ることもできない。

結局、夜に布団の中で縮こまってるほかには無かった。

日常生活にも支障が出てきて、学校での授業(言い忘れてたが俺は学生)にも身がはいらなくなってきた。

しかし、人間とは不思議なもので、

未だ声の正体も分かっていないのに、その謎の声に慣れてきてしまった。

恐怖は薄らぎ、その分怒りがこみ上げてきたのだ。

なぜこんなに悩まされなければいけないのか。

毎日毎日寝る前「おい」だのなんだのとうるさく。

おかげで勉強もままならない。

いい加減我慢ならなくなってくる。

そうしてある日、布団の中で、「今日もまたあの声に悩まされなければいけないのか」、とそうかんがえると、ついにキレてしまって、カーテンをバッと開けて「うっせぇんだよ!」と大声で言ってしまった。

言った後で、「これ近所に迷惑だよな」なんて考えが浮かんで・・・ってアレ?

いつもの小屋に人影がない・・・

「こっちだよ」

と耳もとで、静かな声が聞こえた。

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