中編2
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クローゼット

小学校低学年の頃の記憶。

今は引っ越したんだけど、昔俺は両親と3人で、ボロアパートに住んでいた。

そしてそこには備え付けの大人一人ぎりぎり入れるくらいの洋風クローゼットがあったんだ。

今考えると、壁の色が褪せて変色している様な室内で、そのクローゼットだけは妙に綺麗だった気がする。

まあ、服の収納は殆どタンスを使っていたためそのクローゼットを使うことはなかったし、開けることもなかった。

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そんなある日、家で一人留守番をしていた俺は、お気に入りだった青いビー玉を片手にドラえもんを見ていた。

ドラえもんが押し入れで寝ているシーンを見た俺は、ビー玉で遊ぶのをやめ、子供らしくそれを真似をしてみようとクローゼットの戸を開ける。

クローゼットの中はハンガーが3、4個掛かってるだけで物自体は他には何も無かったのだが、奥の壁に密接してるだろう面にひとつ、五百円玉サイズの穴が空いていた。

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いざ中に入り、クローゼットの戸を閉めると空間は完全に遮断されて光さえ漏れてこなかった。

真っ暗な中寝ようとしてみるが、何と無く寝つきが悪かったのを今でも覚えてる。

確かその頃の季節は夏だった気がするのだが、クローゼットの中は異様に冷えていたんだ。

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やがて身体が冷えて来て、とりあえずクローゼットから出ようと戸を開けようとしたが何故か開かない。

声を上げて助けを求めたが、母も父もまだ帰っていないらしく返事は無かった。

そこで、奥に空いていた穴を思い出す。

暗くて穴の向こう側は見えなかったが、もしかしたら隣の部屋に通じてるかもしれないと思った俺は手探りで周りを探り穴を見つける。

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穴に口を近づけ大声で助けを求めるが、返事は無い。

穴は隣に通じてないのだろうか?

そう考え、試しにポケットに入れておいたビー玉を、勢い良く穴に突っ込んだ。ビー玉はやがてどこかにぶつかった様で、微かに穴から、カタッという音が聞こえた。

次は指を突っ込んでみるが、指先にぶつかるものは無い。

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と、思った次の瞬間、指を何かに掴まれた。すごい力で引っ張ってくる。

急な事に戸惑っていると

shake

指先に鋭い痛みを感じた。あまりの痛みに、身体に力が入り指が穴から抜けた。

その勢いのまま後方へ倒れ後頭部を壁に打ち付ける意識はそこで途切れた。

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起きたら母と父が帰って来ていてその2人の話によると俺はクローゼットの中で眠っていたらしい。

母と父に穴の話をして、実際それを見てもらおうと恐る恐るクローゼットの戸を開けたが、何故か穴は綺麗さっぱり消えていた。

あれは夢だったのだろうか?

無くなったのは壁の穴と、お気に入りだった青いビー玉。

残ったのは釈然としない感情と、

指先の赤い歯型。

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