中編6
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吸魂鬼 X-2

陽月華達が乗る装甲車が囲まれた。

佐々木はタバコの火を消して、全自動小銃を手に取り

「鏑木!そう簡単に装甲車は横転しない!突っきれ!」

鏑木は頷き

「了解!」

その間に佐々木は外にいる吸魂鬼の数を調べていた。

「13匹ってところか…まずは基地に帰ろう」

陽月華達は未だに現実だとは認めていなかった。

数十分後…厳重な門を潜り、基地の中心に停車した。

狭い装甲車から、やっと解放され息を吸い込む陽月華達。

進藤が震えた手を抑えながら

「陽月華…これって現実なのか?単なる幻覚とかさ…」

その言葉を容赦ない真実が壊す

「いや、現実だ。これまで100人以上の人々が、奴等の餌食になった。」

佐々木はタバコの火を点けて

「勝てない相手ではないが、キリが無い戦いだ。」

佐々木が周囲のざわめきに気付き

「お前ら、どうした?」

皆の視線の先には血だらけの原口が立っていた。

「陽月華達はいるか?」

佐々木は驚きつつも

「ああ、無事だ。それより、怪我はないか?」

原口は自分の体を見て

「大丈夫だ。この血は奴らの血だからな」

佐々木は何かを勘づき

「そうか…シャワーでも浴びて血を流してくるといい。そのあと聞きたいことがある。」

原口は静かに頷き

「ああ…わかった。」

陽月華達は食欲が湧かないのか食事に手をつけない。

「佐々木さん。吸魂鬼は、なぜこの村に?」

佐々木はタバコを吸い

「ある村人が黒曜石の箱を発見したんだ。縦2メートル、横1.6メートルの棺の様な箱だった。」

佐々木は進藤の食事を手に取り

「その箱を開けた瞬間に中にいた吸魂鬼が村人全員を襲った。」

ある者は引き裂かれ、潰され

魂を吸われた。ーーーーーー

森林に撒かれた村人の臓物。

それを食らう動物。

佐々木はため息を零し山の地図を眺める

「奴らは軽く数えても数百人はいる、中には再生能力が高い個体の緑体も確認されてる。」

陽月華は水を飲み

「緑体?」

佐々木は数枚の写真をテーブルに投げる

「緑体は名前の通り緑色の体をした吸魂鬼だ。再生能力が最も高い個体であればあるほど皮膚が緑色に変色する」

佐々木は長いナイフを一振りする

「頭を斬り落としても再生する、心臓を撃ち抜いても再生する。例え殺せても魂は次の体に憑依する」

佐々木はナイフをテーブルに置き

「俺たちにやれることは、奴らの両手足を斬り落とし行動不能にして檻に閉じ込める」

「それだけでは不十分だ」

佐々木は声がする方へと顔をあげる

血を洗い流し終わった原口が

「奴らは精霊に属する不死身の怪物。本体を封印しない限り奴らは増え続ける」

佐々木は笑いながら

「やっぱりな。あんた、カフマンの仲間だな?」

原口は頷き

「あぁ…他にも仲間は山に潜入し、出来るだけの対処はしている」

原口は椅子に座り説明を続ける

「緑体の情報は無かったが、カフマン様は封印の術式を持ってこちらに向かっている」

陽月華達は眉を寄せ話を聞く

「陽月華達の所属する超常現象調査委員会はカフマン様が指揮を取っている」

陽月華はコップを持って

「つまり、今回の事件の吸魂鬼の存在を最初から知っていたのか?」

原口は頷く

「あぁ…だが、人里に最も近い場所で吸魂鬼に遭遇するとは想定外だった」

進藤は立ち上がり原口に迫る

「ふざけるなよ!こんな命に関わる調査なら俺は降りる!」

佐々木は進藤の腕を掴み

「ここまで来て人里まで降りるのか?もう人員は出せないし、諦めろ」

進藤は佐々木の腕を振り払い項垂れる。

陽月華はコーヒーを淹れ

「新井はどうする?」

新井は決意を決めた表情で

「俺は戦うよ…もし今逃げて次の犠牲者を出す訳にはいかない」

陽月華はコーヒーを飲み佐々木に作戦を聞く

「で?作戦はあるんだろ?原口は色々知ってるし、うちらのボスが来ているなら頑張ら無いとな」

佐々木はタバコに火をつけて

「カフマンが来るなら作戦もクソも無いな、そうだろ?原口」

原口は頷き

「あぁ…作戦なんて始めから無い」

原口は佐々木に武器庫の場所を聞き

部屋から出て行った。

佐々木はタバコを吸い

「よし、俺達はカフマンが来るまで待機だな。吸魂鬼がここに攻めてくるとは思え無いが準備はしておこう」

それから数十分が経過した

厳重なフェンスの先の木々から

吸魂鬼の雄叫びが響く。

原口はナイフだけを腰にぶら下げ

「いいか?本体を封印しなければ意味はない。カフマン様が到着する前に基地周辺に地雷を囲むように設置する」

佐々木は地図を眺め

「原口が吸魂鬼をおびき寄せ基地から遠ざける。その間に基地周辺に地雷を設置する。」

原口はコーヒーを飲み

「いいか?カフマン様が到着したら、吸魂鬼を片っ端から殺す」

陽月華は椅子から立ち上がり

「殺すのか?意味がないって」

原口は作戦について詳しく話す

「確かに、殺しても本体でなければ意味はないが…復活までの時間は稼げる。本体を封印すれば他の吸魂鬼は自然と、ただの屍になる」

「おびき寄せると数百という吸魂鬼が基地に押し寄せる、その数を減らす為の地雷だ。そして本体だけが残った時を狙い行動不能にし、封印する」

佐々木を含めたメンバー25名

陽月華を含めた4人だけで

数百という怪物を相手をするのは

明らかに不利。

だが、原口だけは余裕の表情をしていた。

佐々木は陽月華達を装甲車に乗せ

「よし、俺たちは地雷の設置に向かう。原口!奴らを基地から遠ざけてくれ!」

原口は笑顔でピースをして自動小銃を手に取る

「任せろ!さあ!行け!」

その頃ーカフマンは長野に向かいヘリに乗り込んだ。

「さあ!出発しろ!待っていろ…吸魂鬼」

揺られる装甲車の中で震える

陽月華達を励ますように佐々木が

「そんな顔をするな!カフマンが来れば直ぐに終わるさ」

陽月華は揺られながら

「カフマンって、そんなに凄いんですか?」

佐々木は笑いながら

「凄いどころの話じゃない!それを今日、目撃するぞ!」

新井は自動小銃を抱え

「なら、なんで最初からカフマンが直接やらない?」

佐々木は笑いながら

「彼は…その…忙しいんだよ!」

進藤は揺られ

「ったく!なんだよそれ!ふざけやがって」

装甲車が止まり外に出る

「よし、うまく誘導できてるな。早く設置して基地に戻ろう!」

その頃、原口は自動小銃を片っ端から発砲し吸魂鬼を誘き寄せる。

「ほら!来いよ!」

吸魂鬼はザッと数えても20匹

原口は自動小銃を捨て近付く吸魂鬼を殴り飛ばす

「貴様らなんぞ、素手で十分だ!」

原口は何かの気配を感じ不敵に笑う

「遅いぞ、お前ら」

原口の後ろに3人の男達が現れた

「エリム…作戦開始の時間だな?」

エリムは吸魂鬼を睨み

「ああ…そうだ、ガロ。まず基地周辺にいる吸魂鬼を地雷の設置が終わるまで誘導する」

ガロは変身して狼のような雄叫びをあげる。

それに反応して吸魂鬼が集まりだす

エリムも変身し雄叫びをあげながら基地から吸魂鬼を遠ざける。

その頃ー陽月華達は地雷の設置を終えて照明弾を空に撃つ。

エリムは撃ちあげられた照明弾を確認し、仲間に遠吠えで知らせる。

佐々木はエリムの遠吠えを聞き

「鏑木!基地に戻るぞ!」

しかし、鏑木の返事は無い。

佐々木は運転席を覗くと大量の血液が

飛び散っていた。

「クソ!鍵も無い!」

佐々木は自動小銃を掴み

「基地まで走るぞ!!」

陽月華達は装甲車を乗り捨て

佐々木は陽月華達を先に走らせ、迫り来る吸魂鬼の頭を撃ち抜く。

「クソ!急げ!基地まであと少しだ!走れ、走れ!」

新井は近付く吸魂鬼を散弾銃で胴体を撃ち抜く

「佐々木さん!早く!」

佐々木は複数の吸魂鬼と睨みあい

叫んだ。

「俺のことはいい!早く行けぇぇ!」

陽月華達は息を切らしながらも

佐々木を、その場に置き去りにして走り出した。

ようやく基地が見えた…

しかし、基地に数多の火と煙が上がっていた。

響き渡る銃声と悲鳴

血生臭い匂いが基地に近付く度に

強くなっていく。

To be continued…

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