中編3
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最終バス

会社が休みの今年のある夏の日、私は友人のA子とハイキングに出かけました。

気が付くと空は夕焼け色に染まり、ここまで乗ってきたバスの終点からかなり入り込んだところまで来てしまっていました。

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A子「あ、いけない、最終バスが来る時間だわ」

こういう場所は交通が終わるのが早く、最終バスを逃すとふもとの町まで小一時間ほどかけて歩いて降りなければならない為私たちは疲れた体にムチうち必死に降りました。

停留所まであと少しというところまで来た私たちは前方にバスを見つけると、必死に走り出しました。

しかし私たちに気づかなかったらしくバスは発車してしまいました。

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山あいの道をとぼとぼ歩いているとついに辺りが暗くなってきました。

夜の山は昼間の風景が嘘に思える程不気味な顔を覗かせています。

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とその時、二人が降りてきた方向からかすかにエンジン音が聞こえてきました。

後ろを振り返ると、確かに車がこちらに走ってきます。

なんと近づいてきた車はバスでした。

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私は思わず

「なんだ、まだバスがあったんじゃない。ねぇ真紀子、乗せてもらおうよ・・・」

とA子に提案しました。

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ふたりはバスに向かって両手を振ります。

バスがぐんぐんと近づいてきます

そしてゆっくりとスピードを落として私達の立っている場所の数M先に停車しました。

そしてプシューという音とともにドアが開きました。

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私達の振っていた手はぴたりとやめました。

なぜかというと、私達の目の前を通り過ぎた際の車内の様子が異様な光景だったからです。

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バスの車内は青白く光っており、乗客の顔までよく見ることができました。

おかしいのは、乗客のすべてが席に座らずに立っていた事。

そして手のひらを窓に押し当て、血走った目で外を見つめていることでした。

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私達が放心状態になりながら立ち尽くしているとバスはドアを閉め、ゆっくりと闇の中に消えていきました。

その後何とか歩いて山を降りましたが、

おかしいなぁ、こんな時間にバスが走ってるわけないよ。

そんな違和感を拭い去る事はできませんでした。

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そう思いながらふもとに下りた私たちはバスの案内所を見つけるとそこにいた職員にこの出来事を話しました。

バスの様子を詳しく説明すると職員の顔色が変わってきました。

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「それ……何年かまえに転落事故をおこしたバスだよ、きっと…。乗客全員が死んじゃってね……」

私たちはその話を聞いて、体から力が抜けていくのを感じました。

そのバスに感じた違和感のひとつに、今では倒産した会社の広告がバスの車体に張られていたからです。

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それから私の夢には毎日この日の出来事が繰り返されます。

夢の中で山を降りる私達の元にあのバスがやってきて私達のちょっと先でとまるんですがそのとまるまでの距離がだんだん私達に近づいてきているんです。

私は夢の中でそのバスにのるとどうなってしまうんでしょうか…。

Concrete
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怖かったです。怖かったのですが、最後の最後での「誤字」が痛恨の極みですね…ひ…

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