中編6
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吸魂鬼 X-完

吸魂鬼 X-完

music:2

近付くほど生臭い血の匂いが強くなる

陽月華達は絶望した。

基地の人間は全て食われ三体の緑体が

こちらをゆっくりと振り返る

殺される!そう誰もが口にした瞬間に

一体の緑体が走りだした。

その瞬間に耳を劈く雄叫びが響く

「ウォォォン!!」

緑体の動きが止まり

陽月華達の元にエリム達が現れた。

エリム達は緑体を睨み

「無事か?」

陽月華は佐々木のことを伝えると

「彼なら大丈夫だ。今は安全な場所で休んでる。」

進藤が血だらけのエリムの姿を見て決意する

「あとはカフマンだけか!」

エリムは頷き

「俺たちは緑体を相手する。お前達は近付いてくる雑魚を頼む。カフマン様が到着するまで耐えるんだ!」

ヘリコプターに乗るカフマンは

基地がある場所で煙が昇っているのを確認する

「すでに基地が襲われているのか。急げ!」

エリム達は変身せずに緑体を圧倒する

「ガロ!この感じ、久々だよな!」

ガロは緑体を殴り飛ばし

「そうだな!120年ぶりだ!」

しかし、エリム達の元に巨大な恐怖が姿を現す。

新井は震えながら叫ぶ

「あ、ありゃなんだ!」

皆の視線の先には軽く3メートルを超える吸魂鬼が、こちらに向かっていた。

エリム達は緑体を相手にするのに精一杯だ。

陽月華達は恐怖で動けない。

「ゴホンッ…二次会に間に合ったかな?」

突然の場違いな明るい声に陽月華達が驚く

エリム達は雄叫びを上げて

「よし!カフマン様が来た!逃げるぞ!」

エリム達は陽月華達を抱え、その場から離れる

「カフマンは!?一人では危険だ!」

エリムはニヤリと笑いながら

「いや、大丈夫だ。これから起こることを目撃したら刺激の無い普通の生活には帰れなくなるぞ?」

カフマンは突進してくる緑体三体を

軽く手を振るように吹き飛ばす

「緑体がいたのは想定外だった。全く、魂をたらふく食べたようだな」

3メートルを超える吸魂鬼は三体の緑体を掴み上げ口の中に放り込んだ。

カフマンはiPhoneを見て

「吸魂鬼、準備は終わったか?エリム!これの準備を頼む!」

カフマンは封印の術式をエリムに投げ

エリムは、それを受け取り

「ハイ!」

カフマンはiPhoneを操作しながら

「さて、陽月華君!これから君達は対怪物部隊の一員となる。」

そう話し終えると上着を脱ぎiPhoneを地面に置く

心臓の鼓動が聞こえるほど脈動する

ドクンッ!カフマンの身体がみるみると大きくなっていく。

吸魂鬼を睨みながらカフマンは変身していく。

吸魂鬼は変身させまいと攻撃をするがカフマンは吸魂鬼を殴り飛ばし距離を取り変身していく。

服が裂け、鋭利な牙と爪、全身を覆う灰色の毛、真っ赤に燃える瞳

一斉に騒つく木々、羽ばたく鳥

風がピタリと止まり、時までもが静寂に包まれる。

陽月華達の前に現れた

吸魂鬼よりも巨大な狼に似た獣

それは空を見上げ雄叫びを上げた。

エリムは封印の術式をカフマンの後ろに広げ準備を進める。

陽月華達は目の前で起きている出来事から目が釘付けになっていた。

それもそのはず、怪物と怪物が戦ってるのを誰が想像できただろう。

陽月華達の心の中で尽きぬ好奇心が芽生えた瞬間であった。

カフマンは吸魂鬼の首に噛み付き、肉を喰い千切り距離を取るが

吸魂鬼は木を引き抜きカフマンに振り下ろす、振り下ろされた木が見事にカフマンの身体に命中する。

痛みに雄叫びを上げるカフマン

仕返しだ!と言わんばかりの拳が吸魂鬼の顎を打ち砕く。

カフマンが吸魂鬼本体と戦ってる間も陽月華達の周りに吸魂鬼が襲ってくる

「進藤!弾が尽きた!」

進藤は弾切れの銃で吸魂鬼を殴り

「俺もだ!」

新井も最後の一発が吸魂鬼の頭を撃ち抜く。

「俺もだよ!」

エリム達は準備で忙しい

吸魂鬼本体は緑体を吸収したせいで

カフマンが与えたダメージを直ぐに回復してしまう。カフマンはとにかく爪による斬撃で吸魂鬼本体の身動きを封じる。

陽月華達は吸魂鬼に囲まれた

「殺られる!」

しかし、吸魂鬼が次々と倒れる

「おーい!待たせたなー!」

陽月華達は声がする方を向くと

沢山の木箱を積んだトラックに乗る

佐々木の姿が見えた。

佐々木に続いて他の部隊も吸魂鬼を攻撃していく。

「佐々木さん!」

佐々木は葉巻に火をつけて

「吸魂鬼が多過ぎて遅くなっちまった!」

エリムは佐々木にカフマンが来ていることを伝えると

佐々木は笑いながら木箱を漁る

「よぉーし!陽月華達!これをぶっ放すぞー!」

佐々木はロケットランチャーを取り出し吸魂鬼本体に標準を向ける

佐々木はカフマンに向かって叫ぶ

「カフマーン!ロケットランチャーで援護する!」

カフマンはそれに応えるように雄叫びを上げる

陽月華達はロケットランチャーを持ち

不安げに「どうやってやれば?」

佐々木は笑いながら

「スコープを覗いてロックしたら引き金を引けばいい!簡単だろ?」

陽月華達はロケットランチャーを吸魂鬼を狙う

佐々木は葉巻を咥えスコープを覗く

「いいか!カフマンが吸魂鬼を殴り飛ばした時に撃て!カフマンには当てるなよ!あとが怖いからな!」

陽月華達は気合いがこもった返事する

「はい!!」

佐々木はカフマンが吸魂鬼を投げ飛ばした瞬間を見逃さずにロケットランチャーを撃つ

綺麗な軌道を描き吸魂鬼の胸部に命中する

カフマンは佐々木に背を向けたまま

親指を立てて、佐々木を褒める。

佐々木は笑いながら

「あの姿でもグッジョブって合図が出来るのかよ!」

吸魂鬼は遂に反撃にでる

木を粉砕するほどの拳を弾丸の如く

カフマンの顔面に直撃させる。

一方的な吸魂鬼の攻撃を敢えて受け続けるカフマン。

大きく振りかぶった拳はカフマンの顔面に飛んでいく。

カフマンは燃えるような瞳で、その拳を睨み、攻撃を避けて腕を掴み陽月華達がいる方へと投げ飛ばす。

佐々木が叫ぶ

「集中砲火だ!」

陽月華達はロケットランチャーを構え

発射する。

花火が打ち上がったような爆音

誰もが、やったか?と、そう思った。

しかし、煙の中にさっきまでの吸魂鬼とは姿形が違うことに気付く。

吸魂鬼の額からは二本の長さが違う

角が生え、体は二倍になっていた。

カフマンは雄叫びを上げ吸魂鬼に突進する

「ガァァァァァ!!」

吸魂鬼もカフマンに向かって走り出す

カフマンは吸魂鬼の攻撃を避け

爪で吸魂鬼の両脚を切り裂く

吸魂鬼は、その場に倒れ暴れる

急速な回復力で再び立ち上がるが

カフマンは吸魂鬼の頭を掴み上げ

頭を胴体から引き千切る。

カフマンはエリムに

「エリム!今がチャンスだ!」

エリムは吸魂鬼の背中に乗り

封印の術式を発動させる。

「カフマン様、封印完了しました」

カフマンはみるみると人間の姿に戻っていく。

「ふーー。大変だった。」

カフマンは照明弾を空に向かって撃ち

数え切れないヘリコプターが吸魂鬼の回収にやってきた。

music:1

陽月華達は安堵の表情を浮かべ

「よかった…助かった…」

辺りには吸魂鬼の屍が数百体と転がっていた。

カフマンは陽月華達に近付き

「君達を巻き込んで、すまない…」

陽月華達は笑いながら

「謝らないで下さいよ。如何なる危険も承知で超常現象調査委員会に入ったんですから」

カフマンは手を叩き

「それじゃあ、みんなで焼肉を食べに今から行こう!佐々木君も一緒に!」

佐々木は笑いながら顔を横に振り

「ごめんだね、こんな死体の山を見て肉なんか食えるかっての」

カフマンは残念そうな表情で

「そうかー。それは残念だ。陽月華君達は?」

陽月華達も笑いながら

「ごめんですね、しばらく肉は食えなくなりそうです」

カフマンはほっぺたを膨らまし

「ふん!わかったよ!エリム達は来るよな?」

エリム達は嬉しそうに

「はい!いきましょう!カフマン様の奢りなんですよね!?」

カフマンは笑いながら

「割勘ねー」

エリム達は肩を落とし

「そんなー!」

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