長編8
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遊園地へようこそ

へえ、こんな県境に遊園地なんてあったっけ?

俺はネットで検索しながらデートの計画を立てている。

やっと亜由美ちゃんをデートに誘うことに成功した!

根気強く誘った甲斐あって、とうとう今度の日曜日にデートすることになったのだ。

2ヶ月前、大学の他の学部との合コンで出会った亜由美ちゃん。

その日なんとか、亜由美ちゃんのアドレスをゲットできた。

とは言っても、亜由美ちゃんはあの合コンのメンバー全員とアドレス交換してたけど。

亜由美ちゃんはとても、素朴で良い子だ。

他に綺麗な子が居たんだけど、とりあえず俺には高嶺の花だ。

その子には多少見劣りするけど、笑うとえくぼがかわいいし幼く見える。

何よりいいのは、そのベビーフェイスのわりに、おっぱいがデカい。

他の奴らも絶対にあれは見逃してないはずだ。

他の奴も亜由美ちゃんのおっぱいをチラチラみていた。

魅力的な子だ。ぜひ、開発してみたい。

あ、いかんいかん、エロいことを考えてると顔に出るぞ。冷静に冷静に。

俺は実家から学校に通っている。デートは親父の車を借りることにした。

やっぱ車の威力すげー。ドライブしようって言ったら、即OKしてくれたのだ。

なるべく遠くにドライブしなければいけない。

だから俺はわざわざ遠く県境の遊園地を目的地に選んだのだ。

まあ、写真で見た感じ、割とショボい遊園地だけど、目的はドライブだし、

俺の最終目標は、なんとかディナーまで持っていくこととその後だ。

俺はその日にキメる気満々でいるのだ。

あの大きなおっぱいを俺の手に!

検索する鼻息が荒く、スマホの画面が曇る。

そしてついにデート当日。

俺は最寄の駅に亜由美ちゃんを迎えに行った。

家まで迎えに行くって言ったんだけど、わかりにくい場所だから駅でということだった。

駅前のロータリーで亜由美ちゃんは待っていた。

「お待たせ、さあ、乗って乗って。」

亜由美ちゃんを助手席に乗せた。

亜由美ちゃん、かわいいな。まるで中学生を連れまわしてるみたいで、

ちょっと罪悪感を感じるところがまたいい。

俺は一生懸命、話題を考えて、始終亜由美ちゃんを退屈させないよう努力した。

でも、1時間も車に乗ってると亜由美ちゃん、なんだかつまらなさそうだ。

ああ、やっぱちょっと目的地が遠すぎたかな?

「ちょっとサービスエリアで休憩しよっか?」

俺はサービスエリアの駐車場に車を停めた。

亜由美ちゃんのために、せっせとソフトクリームを買ってあげたり、

ジュースや食べ物をたくさん仕入れた。

15分くらい休憩して、俺たちはまた車に戻り、ドライブをした。

途中ランチでファミレスに立ち寄り、遊園地についたのは午後2時くらいだった。

よし、いい感じだぞ。これくらいだったら、なんとなくディナー、その後まで持っていけそう!

この日のために、バイト代を溜めてたんだ。ケチケチしてたらチャンスを失うからな。

遊園地はネットの写真で見る以上に寂れていて、本当に営業しているのか、

疑うほどだった。誰も居ないじゃん。俺たち貸切か?

恐る恐る入り口で声をかける。

「あのー。大人二枚お願いします。」

すると、暗い受付の奥から爺さんが出てきた。

「いらっしゃい。」

にっこり笑うと歯が一本しかなく、口臭が酷い。

俺たちはチケットを受け取ると中へ入って行った。

小さな観覧車、一応小さいけどジェットコースター、コーヒーカップが回るやつや、

メリーゴーランドなどが見えた。

でも、どれ一つ動いていない。

さすがにこれはショボい。亜由美ちゃんが不機嫌になるのがわかった。

失敗した!

俺は先程の受付にとって返した。

「あのー、何も動いてないんですけど。」

爺さんはひょこひょこと受付の掘っ立て小屋から出てきて、

「どれに乗りなさるかね?」

と言うと俺たちについてきた。

いちいち爺さんに言って、動かしてもらわなくてはならないようだ。

というか、何で他にスタッフが居ないんだ?ここは。

一通り乗り物に乗ってしまうと、あっと言う間に回れるほど小さな遊園地だった。

遊園地の一角にまだ何か施設があった。

「あれは、何ですか?」

俺は爺さんに訪ねた。

「ああ、あれはお化け屋敷だよ。入りなさるかね?」

そう爺さんに言われ、俺は亜由美ちゃんに一緒に入ろうと言ったが、

亜由美ちゃんは怖いのが苦手だと言った。

「大丈夫だよ、俺がついてる!」

そう言って難色を示す亜由美ちゃんの手を引いてお化け屋敷に入ったのだ。

どうせ、こんな寂れた遊園地のお化け屋敷だ。

ショボい人形が起き上がったり、何かの仕掛けがある程度だろう。

俺は、お化け屋敷を軽く見ていた。

亜由美ちゃんが怖がって、俺にしがみついてきた。

おお!おっぱいが当たってる!俺の腕に!

俺自身が節操なくズボンのチャックを押し上げてきた。

良かった。お化け屋敷があって。

真っ暗な通路を通り抜けると、意外な光景が広がっていた。

え?何か普通のお化け屋敷と違うな。

暗さに目が慣れてくると、一面墓地が広がっている。

チープな人形が出てきたりするのを想像していたのだ。

しばらく歩いていると、ある墓石がゴトゴトと音をたてて揺れ始めた。

すると、突然納骨堂のあたりからにゅうっと白い手が出てきたのだ。

「うわぁぁあ!」

俺は情け無いことに、驚いてしりもちをついてしまった。

その瞬間、亜由美ちゃんは悲鳴をあげながら、俺を置いて

走って逃げてしまったのだ。

「亜由美ちゃん、待って!」

もう一本白い手が出てきた。

おいおいおい、遊園地ショボいくせに、お化け屋敷、力入れすぎだろこれ。

めちゃくちゃ怖い。

白い手が二本出たところで今度は長い髪の毛がざわざわと出てきたのだ。

俺は脱兎のごとく走った。

すると、俺は何かに足を掴まれてつんのめってしまった。

別の墓の下の土から、白い手が出てきて俺の足首をがっちりと掴んでいる。

ちょっと・・・これ。どうなってるんだ?

手は完全に土の中から出ている。しかも俺の足首を掴んで離さない。

これは酷い。やりすぎだろう?

第一、手が土の中から出てるなんてあり得ねーだろ。

俺はだんだんと恐怖を感じてきた。

すると次々と土の中から無数の手が出てきた。

俺は女のような悲鳴を上げた。

倒れこんだ俺の腕、頭、胴体を次々に掴んで無数の手にがんじがらめにされた。

俺はあまりの恐怖に気を失ってしまったのだ。

どれくらい時間が経ったのだろう。

俺は意識を取り戻した。

ここはどこだろう?

俺は痛む背中をさすりながら、上体を起こした。

あたりは真っ暗だった。だんだん目が慣れてくると、俺は墓地の真ん中で、

倒れていたことがわかった。

確か、お化け屋敷に入って。

まだお化け屋敷の中なのか?

俺は周りを見回した。

空には満天の星が輝いている。

見渡す限り、墓ばかりだ。

観覧車も、ジェットコースターも、メリーゴーランドも何も無い。

ここは墓地だ。何で?

「亜由美ちゃん!」

俺はそこで初めて彼女のことを思い出した。

俺は何度も彼女の名前を呼んだが、応えは帰ってこない。

携帯!

俺は彼女の電話番号を出し、ダイヤルした。

「もしもし?」

亜由美ちゃんの声だ。良かった、無事だったんだ。

「亜由美ちゃん、大丈夫?今どこに居るの?」

俺が早口でまくし立てると、亜由美ちゃんは不思議そうに言った。

「はぁ?どこって、家にいるけど?」

「え、でも一緒に遊園地に・・・。」

「あぁ、それはゴメンね。今日は体調悪くなって行けなくなっちゃって。」

「え?さっきまで一緒だったじゃん。一緒に遊園地に来てお化け屋敷入ったら、

亜由美ちゃん怖がって俺を置いて逃げたじゃん?」

「は?何言ってんの?だから、ずっと家に居たってば。

朝、行けなくなったからごめんね、ってメールしたじゃん?」

俺はわけがわからなかった。

「亜由美ー?」

遠くから亜由美ちゃんを呼ぶ男の声が、携帯に小さく聞こえた。

「あ、今、忙しいから。じゃ、切るね。」

そう言うと慌てて電話を切った。

俺は一人、夜空の下呆然と携帯を見つめた。

それから何度亜由美ちゃんの携帯に電話をしても通じなかった。

俺はわけがわからず、車を捜した。

車は墓地の入り口の脇に停めてあった。

遊園地はどこへ行った?

何故俺は墓地にいるんだ。

俺がデートした相手は確かに亜由美ちゃんだった。

亜由美ちゃんじゃないとしたら。誰?

携帯のメールを開くと確かに亜由美ちゃんから

ドタキャンのメールは入っていたのだ。

それから数日後、俺は一人学食でボーっとあの日のことばかり考えていた。

すると、俺の座っている席の後ろに女子の一団の笑い声で我に返った。

「ホント、あの時はビビったわよ。谷口君が家に来てる時に

あいつから電話があったからさあ。」

聞き覚えのある声だ。

「しつこいからさ、ついドライブOKしちゃったのよ。

でもそのすぐ後に谷口君から誘われちゃってぇ。

私最初から、谷口君狙いだったじゃん?

でも、露骨にそれを出すのも何だからさ、一応みんなとアドレス交換したの。

で、ドライブはさ、当日ドタキャンしたのよね。そしたらさぁ、その夜、

あいつから変な電話がかかってきてさ。

一緒に遊園地に行って、お化け屋敷入ってあたしがあいつを

見捨てて逃げたって言うのよ?頭おかしいのかな?あいつ。」

そっかぁ、そうだったんだ。

ホント、俺、誰とデートしたんだろ?

俺はすくっと立ち上がって振り向いてやった。

亜由美ちゃんは、驚愕の表情を浮かべた。

「へー、そうだったんだ。最初からそう言ってくれればよかったのに。

俺なんて眼中に無いって。ぶっちゃけ、俺もお前のおっぱいにしか

興味なかったから。こいつならヤれそうって思ったからさ。

おっぱいしか能が無い性格ブスとは思わなかったよ。

谷口、あの時合コンに来ていた一番美人の子ともやってるからw」

亜由美ちゃんは屈辱的な悔しそうな表情で俺を睨んだ。

俺はそれより、あの体験が何だったのかずっと気になっていた。

そして、俺はまたあの場所を訪れていたのだ。

やっぱり墓地しかない。

遊園地など、どこにも無い。

墓地に人影があった。

ここには何があったのか。俺は知りたくて、その人影に近づいていった。

俺に気付いたその爺さんは言った。

「まいど、いらっしゃい。」

にっこりと笑ったその口には歯が一本しかなかった。

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鏡水花様
コメント、怖い、ありがとうございます。
男はおっぱい星人が多いですよねw
しょぼい遊園地に行ったことありますよ。
本当にこのお話みたいに、乗りたい物が動いてないので、いちいち案内の人に、「すみませーん、あれに乗りたいのですが。」と旦那と二人で頼みに行ってようやく動くという感じで、貸しきり状態でしたwあの遊園地、潰れただろうな。

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おくたま様
コメント、怖い、ありがとうございます。
今回はちょっと私のと雰囲気が違いましたかねー。
随分前にブログに書いたのを引っ張り出してみました。
ネタ切れですw

なんだか、要所要所で「あれ、これは誰が書いた怖話だっけ…」と疑問を浮かべながら読んでしまいました。
そして読み終わってみると執筆者はよもつさん。
とても不思議な感覚でしたが、とても怖面白かったです。

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