中編3
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ドアを叩くもの

俺が初めてそいつにあったのは、今のアパートに入ってから3日経った日の夜だった。

トイレで、まあ大きいほうをしてたわけだ。

すると突然、コンコンと、ドアをノックする音が聞こえた。

言っておくが、俺は一人暮らしだ。

ドアの鍵を預けるような彼女もおらず、したがって誰かが俺の部屋に入ってくるとすれば俺が誘った時だけだ。

そして今日は平日。

バイトを終えて疲れて帰ってきた俺は誰かを家に誘うどころか遊ぶ気力もなかった。

つまり、俺を除けば誰ひとりとして俺の部屋にいるわけはないのだ。

だから、その正体不明のノック音に、俺は心底ビビった。

しかし、俺の頭の中に浮かんだのは幽霊だとか言った非現実的なものではなく、いやそういった考えも少しは浮かんだのだが、それよりも空き巣などの不審者が入ってきたのだと言う考えで、それが頭の大半を占めていた。

空き巣にはいってトイレのドアをノックするなど訳がわからないが、焦っていた俺には「どうやって不審者を撃退しよう」ということいがい考えられなかった。

別にここ(トイレ)でやり過ごしてもいいのだろうが、今日だけは許されなかった。

なにせその日は親からの仕送りが来た日だ。

大切な現金と、食料が盗まれれば、待っているのは「餓死」の二文字だ。

俺は(なぜか)トイレに常備してある消火器を手に取り、ドアの鍵をあけて一気にトイレの外に飛び出した。

が、俺の部屋を見回しても何もいなかった。

ノック音がしてから、色々考えたりもしたがそれも五、六秒のことで、それからすぐに飛び出したのだ。

それなのに音も立てず、この部屋から出ることなんてできるのだろうか。

一応窓やドアの鍵を確認すると、鍵はしまっていた。

じゃあまだこの部屋にいるのか?

タンスのなかなどを調べてみたものの誰もいなかった。

ここに来てやっと幽霊の可能性を考えはじめた。

が、俺の気のせいか?と無理にその考えをおさえつけた。

結局その日は眠れなかったが。

それからもそのノック音はトイレに入る度に続いた。その度ビビってはブルブル震えていたり、または消火器を持って外に飛び出たりしていたのだが、やはり人影は見つからない。

しかし、ある日気づいた。

その、俺の部屋にいる何かはノックするいがいはなにもしないのだ。

べつに他にはなにもしてこない。

寝ている時も、飯を食っている時も、何もしてこない。

別に実害があるわけではないとわかると、そう気にならなくってきた。

トイレに入ると即座にノックしてくるのだが、それだけだ。

しばらくして慣れてきたのだが、ある日・・・

俺は、朝、いや、早朝に起きた。

便意によって起こされたのだ。

ともすれば漏らしてしまいそうなほど危機的状況にあったので、急いでトイレに駆け込んだ。

が、ノック音が聞こえない。

朝昼晩深夜問わずノックしてきたのに、早朝だからって聞こえないなんてこと有るのだろうか。

それに、なにか変な感じがする。

閉塞感というか、なんだか狭苦しいというか・・・

時折ポチャンという音も聴こえてくる。

なんで?なんなんだ?

ポチャン

ポチャン

すると突然どこからともなく声が・・・

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「はいってるんだよ」

幽霊の声か。死ねよ。

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