長編8
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カフマンという男 X-5

music:2

死体の腐敗臭が鼻につく地下墓地。

闇へと続く苔の生えた階段を降りていく。

「ダリスタ・フレイル・ヴラディミール…」

フードを被った人物が壁をなぞりながら何かを探すように呟く。

その後ろを白尽くめの集団が列をなしていた。

右手に掲げられた槍、尖った十字架を首にぶら下げる。

「カフマン殿、気を付けてください

野生のグールがいる痕跡があります」

カフマンは頷き白尽くめの集団に先頭を歩かせる。

骸骨が転がる廊下を進むと開けた場所に出る。

腐敗臭のキツさが強くなる

闇の中で蠢く影、それに直ぐさま反応してカフマンは懐から銃を取り出し、発砲する。

白尽くめの集団が照明を点灯すると

あちらこちらにグールの死体が転がっていた。

「お見事…目的の牢屋まで、あと少しです。」

カフマンは銃を懐に戻し歩き出す

「彼は…まだ生きているのか?」

白尽くめの集団のリーダーが

「えぇ…同族殺しの罪で幽閉されており、あれが生きてるという状態なのであれば…」

数時間後…重苦しい緊張感と強くなる腐敗臭が充満する廊下を進む

カフマンは鼻をハンカチで押さえ

「この臭い…近いな…」

骨を踏みしめる音が響き

その音の中に鎖の音が混じる

カフマンすら聞き慣れない言語が闇から響き渡り始め

カフマンは音のする方向に向かって

語りかける。

「何語になるのかな?ヴラディミール君」

白尽くめの集団が照明でヴラディミールを眩しく照らす

手足は杭を打たれ、喉には銀の杭が刺さっているはずが、ヴラディミールは言葉を発し続ける。

「貴様には分かるまい…死ぬことも首を動かすことすら出来ぬ」

カフマンは椅子を出現させ座る

「それは自業自得という状態だ」

ヴラディミールは身動き取らず

「ふん…ドラキリの身内が一人でも殺せただけ嬉しいがな」

カフマンは懐からティーカップを取り出し紅茶を注ぎながら

「君に…質問がある」

ヴラディミールは黙ったまま潤いのない瞳でカフマンを見つめる。

「悪意の魔女。マーラのことを詳しく教えて欲しい。」

ヴラディミールは口を動かさずに

「なら、喉の銀の杭を抜いてくれ」

カフマンが白尽くめの男に指示する

「これで話しやすくなった…あとは少量の血があれば最高なんだがな」

カフマンは紅茶を飲み

「それでマーラについて情報は?」

ヴラディミールは首の骨を鳴らしながら話し始める。

「彼女は冷酷で残忍な性格で、単なる気まぐれで村にいる村人全員を呪い殺すほどのアバズレだ。」

カフマンはiPodを見ながら

「モロン村事件だな。知ってるよ、一夜で野うさぎが村人を襲い喰い殺した事件だったな。」

ヴラディミールは乾き切った口を開いたまま

「マーラはそれでは飽き足らず村人の魂を一つに凝縮して一つの体に閉じ込め痛ぶる。それが彼女が一番好む方法だ。」

カフマンは紅茶をヴラディミールに勧める

「血はないが…紅茶ならある。飲むか?」

ヴラディミールは乾いた口を大きく開き

「あぁ…頼む」

ヴラディミールの口に紅茶が広がり

微かな潤いを取り戻す

「紅茶なんて何年ぶりだろうか?」

カフマンは笑いながら

「紅茶に血を混ぜて飲むんだろ?砂糖の代わりに」

ヴラディミールは潤いを取り戻した顔で笑う

「そうだ…普段とは違う香りを楽しむための飲み方だが、それがいい」

カフマンは話を戻す

「それで魂を凝縮して、一つの体に閉じ込めた体はどうなる?」

ヴラディミールは天井を見て

「吸魂鬼になる。普段、一つしか存在しないはずの魂が幾つもの魂と結び付くと人間性、動物性が崩壊する」

「人間は一つの体に一つの魂を持っている。血液は魂の通貨。吸血鬼と同じように血を吸って殺した者の魂をも自分の物にする。」

カフマンは紅茶を飲みながら頷く

「吸血鬼は魂を限りなく保有することができる。それゆえ不死身であり、血に流れる魂を吸い尽くせる吸血鬼同士で無いと殺せない」

「吸魂鬼は吸血鬼と似ているが、その知能の低さは虫以下だ」

ヴラディミールは咳き込み、カフマンから紅茶を貰う

「吸魂鬼は殺すことは出来るが、魂は不滅で近くの死体に憑依する。」

カフマンは頷き

「確かに私が知ってる通りだ。その吸魂鬼をマーラは復活させた。」

ヴラディミールは俯き拳に力が入る

「あの…アバズレめ!復活させる理由は何らかの計画があるはずだ。」

カフマンはiPhoneを覗き

「計画?詳しく教えてくれ」

ヴラディミールは口に小さく動かしながら

「何かを復活させる、呼び出す為の準備だろうな…」

ヴラディミールはカフマンを見つめ

「アバズレの計画を阻止できる方法はあるのか?」

カフマンはiPhoneをポケットに入れ

「ああ…これで吸魂鬼を捕獲して封印する」

ヴラディミールは見せられた術式を褒める

「素晴らしい術式だな…誰が設計した?」

カフマンは術式を懐に戻し

「レイモンド君だよ」

ヴラディミールは納得するような表情で

「あいつか…それなら安心だな」

そんな二人の会話を切り裂くように

銃声が鳴り響く

「カフマン殿!大変です!ゾンビが!大量に出現しました!」

カフマンは溜息を零しうなだれる

「この場所がバレたか…ヴラディミール、また会いに来る」

ヴラディミールは笑いながら

「あぁ…今度来るときはAB型の血液を土産に持ってきてくれ」

カフマンは手を振り、その場を後にした。

数時間後…

ゾンビの襲撃から逃れ本部に辿り着いたカフマンは一冊の本を取り出した。

ゾンビ…何者かが死者を蘇らせ

その死者を奴隷として使う。ある程度の知能を有しており、命令に忠実である個体が多く、その中でも変異した個体は強靭な身体能力を発揮する。

頭部、術式が刻まれた部分を失うと黄緑色の光を発して死亡する。

強い魔力を込められた個体は瞳が蒼く輝き俊敏な動きを見せる。

カフマンは菓子を食べながら

「誰が差し向けた?」

music:1

菓子だらけのテーブルを片付け

紅茶を淹れる。

紅茶の香りが部屋を抜けて、その香りに惹きつけられるように一人の男が訪れる。

「カフマン!久しぶりだな!」

カフマンは訪れる男を見て笑顔を見せる。

「タリスマン!いつぶりだ?太ったように見えるぞ!」

タリスマンは膨らむ腹を摩り

「240年ぶりだ!そうか?これでも体重は400キロだぞ?」

互いに握手を交わし椅子に座る

カフマンは指を鳴らし大きめのティーカップを出現させる。

「飲むかい?」

「ああ、頼むよ」

タリスマンは本棚を眺め

「まだ希少本を集めてるのか?凄い数だな」

カフマンは笑いながら

「そうか?まだまだ手に入ってない

んだがな」

タリスマンは懐から、分厚い本を取り出しテーブルの上に置く

「これは土産だ。お前が欲しがってた精霊全書第三巻だ」

カフマンは興奮した様子で手に取る

「これをどこで!?」

タリスマンは笑いながら人差し指から火を出し咥えた葉巻に火をつける

「エルフのジョーンズから譲り受けた代物だ」

カフマンは精霊全書第三巻を眺め

「これを私に?いいのか?」

タリスマンは腹を叩きながら

「他の精霊全書はお前が持ってるだろ?だったら、お前が持つべきだ。この世に三冊しかないんだからな」

カフマンは他の精霊全書が保管されているケースに入れる

「これで全巻揃った!」

タリスマンは葉巻を吸い煙を吐く

カフマンは椅子に座り

「今日はこれだけじゃないだろ?」

タリスマンは笑いながら

「正解だ。お前に頼みたい仕事がある」

カフマンは差し出された写真を眺める

「ここは…秘密病院の1963年の当時の写真か?」

タリスマンは指を鳴らし部屋に一人の女性を招き入れる

「彼女はノーン。訳あってお前のところで保護してもらいたい。」

カフマンはノーンに優しく微笑み

「紅茶を飲みますか?」

ノーンは笑顔で首を横に振る

タリスマンは葉巻の火を消し

「彼女は喋れない。ラジオを通して声を発するんだ。」

カフマンは指を鳴らし椅子を出現させ

る。ノーンはラジオを膝の上に置いて椅子に座る

「よろしくお願いします。カフマン様、私はノーン・ステラと言います」

カフマンは頷きタリスマンに向き直る

「それで?この秘密病院がどうしたんだ?」

タリスマンは深刻な顔をして

「この秘密病院でジキルハイド症候群の研究をしているとタレコミがあった」

カフマンは紅茶を飲み

「ジキルハイド症候群か…だが、あの秘密病院は閉鎖され、無人のはずだと思うが…」

タリスマンは顔を横に振り

「最近になって活動しているグループの仕業だろう。どこかでジキルハイド症候群の資料を手に入れ研究を再開したとしか思えない」

カフマンは腕を組み

「グループ?」

タリスマンはテーブルに置かれたお菓子を手に取りノーンに渡す

「人狼とヴァンパイアの集団だ。」

カフマンは思い出すように

「あぁ…昔から悩まされてるよ、純粋種である、私とドラキリを倒そうとしている集団だ。」

タリスマンはお菓子を食べながら

「怪物退治もいいが、油断すれば足元をすくわれるぞ?」

カフマンは笑いながら

「それには及ばんよ、ドルマンが目を光らせてる間はな」

タリスマンはお菓子をポケットに詰め

立ち上がる

「ノーン、しばらくここにいてくれ。カフマンに欲しいモノを頼めば用意してくれる。」

ノーンはラジオで返事をする

「わかりました」

タリスマンはカフマンと握手をして

「頼んだぞ、カフマン。彼女の迎えは私の部下である黒羊に向かわせる」

カフマンは頷き

「まかせろ、ここにいれば安全だ。」

タリスマンは部屋を後にした

カフマンはノーンを部屋に案内する

部屋の前でノーンが振り返り

ラジオを通して

「あの、テレビはありますか?」

カフマンは笑いながら

「用意するよ、ちょっと待ってね」

カフマンは部屋に入り、指を鳴らした瞬間にテレビを部屋に出現させる

ノーンは驚いて

「すごいですね!なんでも出せるんですね!」

カフマンは笑顔で

「これぐらい容易いですよ、このテレビは、あなたが見たい番組を見せてくれる魔法のテレビですよ。念じるだけでいいですからね」

ノーンは笑顔で部屋を見渡し

「ありがとうございます!」

カフマンは部屋を後にするが思い出したように

「あ、それと欲しいモノがあれば、そこにあるiPhoneで連絡してください」

カフマンはゆっくり扉を閉め自室に戻る。

カフマンは廊下を歩きながらiPhoneを眺めていると自室を過ぎて間違えて

トイレの扉を開いてしまい

「おっと、間違えた」

To be continued…

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