中編3
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燻る灯もないというのに

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それは扉を開けた瞬間の出来事だった。

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片田舎の中古物件。二階建て、庭付き。

そこに家族と一緒に住んでいる。

日当たりもよく、カーテンをしていなければ、冬でもそこそこ暖かい。

ごろりと転がる猫たちは平和そのもので気持ちがよさそうに寝言を言っている。

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何が変わっている…ということは特にない。

そう、ここは至って普通の家である。

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だけど、時々不可思議なことが起こるのだ。

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私の部屋は二階部分。

これまた日光の入りやすい場所にある。

窓辺にベッドを置き、休みなどはカーテンを引いて過ごすのが好きだ。

主に冬から春にかけて、階段に通じる扉も閉めて。

読書をしたり、まぁ、色々と。

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今日もその予定だった。

別段、外に出なければいけない理由もない。

別に出てもいいけどなぁと考えている間に、若干の眠気と時間の経過で外出の選択肢はあえなく消えた。

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ベッドにごろりと腹這いになる。

先程起きたまま片付けられていない布団の隣に身を横たえ、今一度の午睡も魅力的だ、などと目を閉じた瞬間だった。

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shake

ギィッ

小さいけれど耳に届く。

その程度の木が軋む音が聞こえて目を静かに開いた。

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先にも伝えた通り、ここは中古物件だ。

当然だが、私たち家族が住む前に人が住んでいて、この家自体もその年数は経っている。

つまり、木が軋む音などは家鳴りであり、あって当たり前。

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だけど

shake

ギィ、ギィッ

音は階段の下の方から、まるでゆっくりゆっくり上がってくるように移動するのだ。

カーテンの隙間からそっと外を見る。

庭に視線を向けると母がご近所さんと談笑している姿があった。

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この家の中、今いるのは私だけ。

もしも上がってきているモノがいるなら、それは家族ではない。

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まさか、泥棒ってこともないよなぁ…。

金目のものがありそうな家には到底見えないだろうし、外には人通りもあるのだ。

入ってこれるはずもない。

最初に頭に浮かんだのはそれだった。

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よく言うじゃないか、

人間の方が断然怖い、

現実的に被害があるから、と。

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それに、万が一があっても困る。

ゆっくりと起き出して窓の鍵を音が鳴らないように開けた。

いざという時は大声を出して親を呼ぼう。

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その間にも、木の軋む音はゆっくりとした感覚で上がってきていた。

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「(取り敢えず、これでいいか)」

女の部屋に武器になりそうなものは少ない。

けれど丸腰で突っ込めるほど腕には自信がない。

パッと見て痛そうな物(キーボード)をパソコンから外し、手に持った。

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扉前までたったの2.3歩。

そこまで行くのに眉間にシワが寄る。

単なる家鳴りだったら良かったのに…確実に音が上がってきているのだ。

そんなに長くもない階段はもうじき終わりを迎えるだろう。

その前に出た方が相手も驚くに違いない。

慎重にドアノブに手をかけ、そこからは迅速だった。

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それは扉を開けた瞬間の出来事だった。

濃いロウソクの匂い。

火を燃やしている最中、蝋が溶けるあの匂いが部屋に飛び込んできた。

「!?」

驚いて階段を見ても、人影はもちろん火の気もなかった。そして、ロウソクも。

私の部屋の前。階段と扉の間のその狭い空間にだけ、匂いが漂っていた。

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線香の香り、ってのはよく聞くお話だけど、蝋燭は初めてだ。

何か意味があるのか、はたまたないのか。

わかる方がいたら教えて欲しい。

時々起こる我が家の不可思議現象、再度記載させていただくのも遠い話ではないかもしれない。

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