中編5
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這い上がる者

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あれは、ちょうど10年前に母とドライブをしていた時のことでした。

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その日はとてもいい天気で、母と仕事の休みが重なったこともあり、

写真好きの私達は、2人で隣のF県までお気に入りのカメラを持ってドライブをする事になりました。

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当時住んでいたところからF県までは車で1時間半くらいでしょうか。

F県への道は、まわりが海に囲まれていて、途中に有名なハンバーガーショップもあり、ドライブには最適の道でした。

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海を眺めながら40分ほど進むと、

だんだん心霊スポットとして有名な廃ホテルが見えてきます。

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外壁は黒くくすみ、窓は割れ、

薄気味の悪い建物が海沿いにひっそりとたたずんでいる。

以前から゙あのホテルは出る゙と有名だったので存在は知っていましたが、

『 幽霊』というものを信じない私はいつも噂を聞き流していました。

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私が車の窓を開けて海の写真を撮っていると、

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「いつ見てもあそこ気味悪いね」

ポツリと母が運転をしながら呟き、顔をしかめました。

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その時、なぜだか……いつもは無い好奇心が湧いてきて、首から下げていたカメラで廃ホテルを撮影してみたくなりました。

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なにかが、写るのではないかと期待して

何気なく、ビルの左上あたりのバリバリにガラスが割れた窓にレンズをむけ、写真を撮ってその場で確認してみると

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そこにはただ気味の悪い廃ホテルが写っているだけで、拡大しても何も写っていませんでした。

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やっぱりね。

私は安心してカメラをしまい、ドライブを終えて家に帰りました。

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写真の事も忘れ、部屋でゴロゴロしていると、

母が何やら居間で騒いでいました。

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特に気にせずにいると、

すぐに母が私の部屋に駆け込んできました。

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「ねぇ、ちょっと!今日撮った写真ちゃんと確認した!?」

母は凄い剣幕で私の肩を揺らしてきます。

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なに?どうしたの!?

私がそう聞くと、母は手に持っていた私のデジタルカメラの画面を見せてきた。

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そこには、

今日撮影した廃ホテルの写真が写っており、

特に変わった様子はない。

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「あたしは霊とか信じないけど、なんか写ってるよ!この写真すぐ消しなさい!」

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幽 霊 ?

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ちょっと待ってよ、

撮ってからすぐに見た時はそんなの写ってなかったのに……

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慌ててもう一度写真をみると、

窓辺に1人、白い服ワンピースのような服を着た女性が写っていた。

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顔がやけにハッキリ写っており、

恨みのこもった目でこちらを睨んでいる。

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ハッキリと写ってはいるが、

全く生気が感じられない。

そして何よりも怖いのは、

しっかりレンズの中心を睨んでいるということ。

確実にこちらを、私を認識している。

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震え上がるほどの恐怖を感じた私は、

すぐに布団に潜った。

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2時間くらい経っただろうか

布団に潜ったまま寝てしまって、ふと目が覚めると

皆寝静まり、母が電気を消したのか部屋は真っ暗になっていた。

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ふと、あの写真を思い出して怖くなる。

……このまま寝よう。そう思いながら布団を頭までかぶり、また目を瞑る。

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……寒い。

頭まで被っている布団が重く、

ベッドの下に垂れ下がった重みでどんどん布団が下に落ちているのか、

目が覚める度に上半身が寒い。

また、目を瞑る。

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やっぱり寒い。

少し寝ては目が覚め、

その度に布団を頭まで引き上げるが、同じ事の繰り返しでさすがにイライラしてきた。

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勢いよく布団をかぶるために思い切り布団を足で蹴りあげようとしたその時、

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あれ?

身体が動かない。

足が、手が、瞬きもできない。

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これが金縛りか、と

少し冷静に考えていると、

私の足の上に

何かの重みを感じた。

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重みを感じる度に、

布団が少しずつ

足元のベッドの下の方へ落ちていく。

掴みたくても身体が全く動かない。

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その時、

私は初めて

その存在を確認した。

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足の上に重みを感じた瞬間、

真っ白な細い手が

ベッドの下から布団を掴んで引きずりおろしている。

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いや、

布団を引きずりおろすというより、

むしろ這い上がってこようとしている

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という方が近い。

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ヤバイヤバイヤバイヤバイ

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。

頭がパニックで何も考えられない

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目を閉じたくても

金縛りのせいで動かない。

両手両足もまるで、無くなったんじゃないかというほど感覚がない。

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そうだ。

声をだそう。声を出せば誰かは起きて来るだろう。

家族が起きればこいつだって消えるだろう。

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私は、思い切り

「助けてー!」

……ッと声をだしたつもりだったが、どうやら金縛り中は声もだせないらしく、

ヒューヒューという情けない音しか出せなかった。

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こうしてる間も

布団はどんどん下に引きずり落とされていく。

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もう祈ることしか出来ない。

消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!

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……そう願いながらふと気づいた。

さっきよりも、足の上の重さが

増していることに。

ふと、足元を見ると、

そこには

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まさに私の上に

這いあがろうとしている

髪の長い女がいた。

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うつぶせの状態で

ゆっくりそれは這いあがってきた。

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私は恐怖で頭がおかしくなってしまいそうで、正気を保つのがやっとだった。

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大丈夫、これは夢。それか弟が私を怖がらせてるんだ。絶対そう。この金縛りだってビビってるだけ。大丈夫。心配ない。大丈夫

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その時、

その存在は私の真上まできた。

今度はしっかり私を見ているのがわかる。

ソレの姿をみて確信した。

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こいつは、

廃ホテルの写真の女だ。

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怨みのこもった目、

特徴のある破れ方をした白いワンピース

間違いない。

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私はこのまま死んでしまうのかと本当に恐ろしいのと同時に、安易に写真を撮ってしまった自分の行為にとてつもない罪悪感を抱きながら、とにかく祈った

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ごめんなさいごめんなさい許してください許してください許してくださいごめんなさいごめんなさい

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すると、フッと目の前から女が消え、

身体の力が抜けて急に金縛りが解けた。

私は言葉にならない悲鳴をあげながら、家族が寝ている部屋に逃げ込んだ。

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つぎの日、私はカメラごと神社に持って行ってお祓いしてもらった。

あれ以来、幽霊を見ることはなくなった。

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だけど、もう一つ

思い出すと恐ろしいことがあるのです。

わたしが母に写真を見せられて、

怖くて布団に潜って眠ってしまった時、

部屋の電気は誰も消していないそうです。

あれは、あの霊の仕業だったのでしょうか。

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これが最初で最後の心霊体験だといいのですが……

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