短編2
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悪意の霊

これは、俺が唯一体験した心霊体験だ。

ほんの一瞬の出来事だったが、俺はこの体験から1つだけ学ぶことがあった。

実際、幽霊なんてのは、生前なになにがあって地縛霊になっただとか、この世に未練があって残ってるだの言われてるが、そんなものよりも、もっとこわいものがあるってことだ。

俺は、そのとき車を運転していた。

実家に帰るためにだ。ただ、その日は土砂崩れがどうとかでいつものルートを使うことができなかった。

だから、カーナビを頼りにすこし遠回りな道を走っていた。

この道は、カーブが多いためかわからんが、事故が多い道らしく、少なくともその日はほとんど車の通りがなかった。

そして途中にある山のトンネルに入ろうとした時、ふと花束が目にはいった。

多分、なんかの事故で死んだ人にたむけられたものだろう。

周りに比べて新しい感じのガードレールの下に置いてある花束だ。

その瞬間、グイイッとその花束の方へハンドルが引っ張られた。

焦って急ブレーキを踏み、車を止める。

ガードレールにぶつかりはしたが、突き破って落ちるなんてことには、なんとかならなかった。

車を後退させ、もう1度発進させようとしたその時、花束の近くに男が立っているのが見えた。胸よりしたが、ぐしゃぐしゃになっていて、顔も血にまみれている。

どう考えても生きてはいないその男が、こちらを見てニタニタ笑っている。

そいつを見た瞬間、「ああ、こいつがやったんだな」と思った。

それと同時に、「こいつは、道連れがほしいとか、恨みとか、そんなんでこんなことをやってるんじゃない、ただ人を殺すために、悪意でやってるんだ。人を殺すために死んでもなおあの場所に残ってるんだ。」

ということがわかった。

そいつはニタニタ笑ってこちらを見ているだけで、しゃべることすらしなかったが、このままここにいては、またやられる、と思い、車のスピードをあげてすぐにそこを立ち去った。

Concrete
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