中編3
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特級死刑囚特別収容所

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犯罪者の仮釈放中、及び出所後の再犯率の増加に歯止めをかけるべく国が行った法改正により、特級死刑囚制度なるものが作られた。

裁判で有罪判決を受けた者のうち、更生の見込みがなく、なおかつ存在そのものが有害であると判断された者は特級死刑囚となり、特級死刑囚特別収容所に収監されるという制度である。

ここに一人の男が新たに特級死刑囚とされ収監された。彼の名前は霧島零児。彼は過去に殺人を繰り返し2度逮捕され、今回、強盗殺人を犯し3度目の逮捕で更生不可能と判断され特級死刑囚判定を受けたのであった。

『霧島零児、お前の名前は今日から28番だ。今からお前に癌を発生させる特殊な薬を投与する。』

特別収容所の看守が霧島にそう告げる。

「はぁ!なんだよそれ!癌を作る薬って!人権侵害だろ!」

そう叫びながら霧島改め28番は暴れた。

『拘束しろ。』

看守がそう命じると、部下たちが28番を押さえつける。

『諦めろ28番。特級死刑囚はここに収容された時点で全ての人権を剥奪される。お前に拒否権はない。』

看守はそう言うと注射を手にする。

「や、やめろ!頼むからやめてくれ!」

28番の必死の叫びもむなしく薬が投与される。

『今から24時間後に28番の検査を行い、癌の発生の有無を確認する。』

そう言って看守は去っていった。

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翌日、28番は看守の声で目覚めた。

『起きろ28番、検査の時間だ。』

「………。」

すでに28番には抵抗する気力もなかった。

そして全身のレントゲン撮影をはじめ血液検査等一通りの検査が行われた。

『28番、検査の結果肺に腫瘍が見つかった。よって今からお前に癌治療薬の投与を行う。』

「どういうことだ?なんでわざわざ癌を作って治療をするんだ?」

看守の言葉に対し28番がそう疑問を投げかける。

『今から投与するのは認可されていない新薬だ。つまり、お前は臨床試験の被験体という形になる。』

そう言って看守は28番に注射を使い薬を投与した。

『24時間後、再び検査を行い経過を確認する。』

そう言うと看守は去っていった。

それから毎日、検査と薬の投与が繰り返された。

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1ヶ月後

『28番、検査の結果、癌細胞が全て死滅した事が確認された。よって薬の投与を終了する。』

看守が28番にそう告げた。

「やった…。これで解放される…。」

しかし、次の看守の言葉によって、28番の希望は一瞬にして消えた。

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『今から1ヶ月後より10日ごとに検査を行い、体力の回復が認められ次第、次の薬を投与する。』

「なんだよ。まだ終わらねえのかよ。一体いつまで続くんだ。」

28番のその言葉に対し看守は答える。

『死ぬまでだ。』

その一言で28番は絶望のどん底に落とされた。

「そんな………。」

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1年後

『所長、28番が死にました。解剖の結果、投与した癌治療薬の副作用によるものだという事が確認されました。』

看守が特別収容所の所長にそう告げる。

「そうですか。」

所長はそう短く答えた。

『死体は焼却処分でよろしいですね?』

そう看守が確認すると

「いえ、彼に身寄りがいるのなら、遺体を返し、身寄りがいないようであれば、こちらで葬儀を行います。」

所長はそう言った。

『しかし…。』

看守が何かを言おうとするのを遮り

「霧島零児は最後にその身をもって医療の発展に貢献してくれました。ならば、彼には人権が返されるべきです。今、霧島零児には人権があります。ならば、葬儀は行われるべきでしょう。」

そう所長は言ったのであった。

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