中編5
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なかよくしましょ

私は最近引っ越しました。

少し広くなった1kの我が家は前の家と同じように風通しがとても悪くエアコン頼りで、バスルームに窓もあるためとても気に入っています。

隣人もとても愛想のない方で安心です。

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私の前の家はワンルームで風呂トイレが一緒、収納無しのビジネスホテルのような部屋でした。

窓は一つ大きなものがあるだけでした。

とにかく風通しが悪く、エアコンなしでは生きていけない部屋でした。

単身アパートというのはとても人の入れ替わりが早く、お隣さんくらいは把握できても、上の階や下の階には人が住んでいるのかいないのかさえ分かりませんでした。

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ある日チャイムが鳴り出てみると、隣に引っ越してきましたと40代くらいの男性に菓子折りを渡され、丁寧に挨拶されました。

私のアパートは防音だけは一人前で、余程大きな音を立てない限り隣人の生活音は聴こえません。

なので引っ越し作業をしていたことさえ私は気付いていませんでした。

そのおじさんはとてもにこやかな方で、田舎から少しの間出稼ぎに来たからすぐいなくなるけど、それまでよろしくね。と爽やかな笑顔で私に言い、部屋に戻っていきました。

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いい人そうでよかったなぁ、と私は素直に喜び貰ったお菓子を食べていました。

するとまたチャイムが聞こえました。

今日は忙しいなぁとつぶやきながらドアを開けると、さっきのおじさんでした。

おじさんは私に、ごめん言い忘れてた。仕事の仲間がたまに来て騒ぐかもしれないから、うるさかったら遠慮なく言ってね。とだけ言い、また部屋に戻っていきました。

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私は当時フリーターをしていました。

ほとんどが朝早くから夕方過ぎくらいまでで、彼氏もいなかったため夜はほとんど家にいました。

隣のおじさんとは生活のリズムが合うようで、最寄り駅近くのスーパーやコンビニなどで時々顔を合わせ。お疲れ様です、と声をかけあうくらいのほど良い関係を築いていました。

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しかし少し困った事もありました。

おじさんの実家は野菜を大量に送ってくるらしく

私におすそ分けしてくれるのですが、それがほぼ毎日のように続くのです。

最初は嬉しかったのですが、レタスを5個とか玉ねぎ30個など、到底1人では消化しきれない量です。

共同のゴミ捨て場に捨てるわけにもいかず、私は毎日バイト先で料理を同僚に配っていました。

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しかし、おじさんの言っていたような友人との騒ぎなどはほとんど聞こえませんでした。

私の中でおじさんは、とてもお節介やきのニコニコ笑顔なちょっとありがた迷惑な存在でした。

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ある日私は少し部屋を換気しようと窓を開け、網戸は閉めた状態でゲームしていました。

おじさんの家も窓が開いているのか、初めておじさんとその友人の声が聞こえてきました。

昨日はハズレハズレ。

先週はちょっと熱かったよなぁ

と、どうやらギャンブルの話で盛り上がったいるようです。

くやしいなぁ、熱いときガンといっとけばなぁ

だってあん時○○ちゃん来ないからさぁ

と、いかにも中年らしい締まりのない会話を続けていました。

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そんな生活が半月程続きました。

少し涼しい夜だったので、その日私は珍しく枕元の窓を少し開け電気を消し、眠りにつこうとしていました。

少し寝かかったくらいの時に、身体を反対側にむけ窓の方をむきました。

そこにはおじさんが微笑んでいました。

窓の向こうはベランダ。おじさんはそこに入り、くちくちと何かを食べていました。

私はとっさのことに完全に凍りつき、ただおじさんを眺めていました。

おじさんの口からは白いものが溢れていました。

私の靴下です。

私の靴下をガムのように噛みながら、いつもの人懐っこい笑顔で

あそびにきたよ。

と、私に向って言いました。

その時気付いたのですが、ベランダにいたのはおじさん1人ではなく、3人以上の人間が狭いベランダにひしめき合っていました。

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私はそこで初めて逃げなくてはと考え、悲鳴を上げながらドアへ走りました。

すると、ドアを誰かが思い切り叩いてきました。

知らない男性の声で、遊ぼう遊ぼう!と優しく私に語りかけながら。ドアをとんでもない強さでたたいています。

窓の方を見ると、もーどこいくの?と。満面の笑みを浮かべたおじさん達が家の中に入ってきていました

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私はすぐにお風呂場に入り、頼りない鍵をかけ。

お風呂場のドアを両手でおさえました。

今日は涼しい日だよね。こんな日はどこであそぼうね?

と、おじさんは優しい声のままで風呂場のドアを割ろうと太い棒の様なもので思い切り叩きはじめました。

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ドアを叩き割り風呂場に侵入してきたおじさんは、身体全体が震えているほど全身に力を入れていました。

なのに顔は笑顔のままなのです。

玄関を開ける音が聞こえて来ました。

仲間のおじさん達もみんな笑顔です。

私はやめて、怖いと彼等に叫びました。

するとおじさんは、あそばないの?と顔を近付けてきました。

そして顔から笑顔も消えていました。

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おじさんはうしろを向き、仲間とポソポソ話し始めました。

ちがうね。

桃色じゃないかもね

ぼくはほしいな

あ、やっぱり別のにする

と訳のわからない話し合いを終え、こっちを振り返りました。

瞬間私に激痛が走りました。

おじさんは真顔のまま私のお腹を蹴り飛ばし、私は浴槽にたたきつけられました。

お前切る切るからな サクサクするまで

まちがいだったんだから

まちがいだったんだから

まちがいだったんだから

という言葉をつぶやき、おじさんはナタのようなものを背中から取りだしました。

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その時チャイムがなりました。

警察でーす。付近から通報をうけて参りました。

と、天の助けがやってきたのです。

警察の方がドアを開ける前におじさん達はベランダから逃げていきました。

私は少し入院し、後日事情聴取を受けた時に、大家さんにも同席頂いて色々聞いたのですが、私の家の隣には誰も引っ越してきていなかったようでした。

ただ何人もの人間がいた形跡やゴミが散らばっていて、私の写真がたくさんあったそうです。

電車の中や、コンビニで、ひどいものは私のバイト先で撮ったものもあったそうです。

そしてカレンダーに○や✕が書いてあったと聞かされました。その時は全くカレンダーの意味がわからなかったのですが、しばらくたってなんとなくわかりました。

私が1度でも窓を開けた日は○、開けなかった日は✕になっていたようです。

あの隣から聞こえて来た会話も、ギャンブルの話などではなかったのです。

私が窓を開けたまま眠る夜を静かに待って、毎日ベランダで確認していたのでしょう。

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私はすぐに引っ越しをして、今はとても平和に暮らしています。

しかし、同じ建物に住んでいる人間が何を考え、何に興味があるのかは本人にしかわかりません。

笑顔を盾に悪意は近寄ってくるのですから

皆さんも気をつけて下さい。

まちがいだったんだから

誰か とまちがったったんだから

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めっちゃ怖いですT^T
私も中学の頃網戸だけで寝てる時に、知らないオジさんがベランダのヘリに足を掛けて進入しようとしてた事があります。
すぐに気付いて窓を閉めたら逃げて行ったのですが、滅茶苦茶怖かったのを思い出しました((((;´•ω•`)))