中編3
  • 表示切替
  • 使い方

不思議なおばさん

私が幼稚園時代に体験した話です。私の家は親戚付き合いなどなく、お盆も年末年始もほとんど実家に帰ることがありませんでした。

ですから私も親戚の顔など知りませんでした。

だけど幼稚園の時に古いアパートに住んでいた時のことです。

当時もう築10年以上経っていて、決まって明けた時に、月としては2月から3月までの間です。

かならず中年のおばさんが家に泊まりにきていた記憶があります。

普通に家族団らんの中に入っていて、ただ私は人見知りだし、他人が家に居る感じが自分のテリトリーが侵されているみたいで嫌でした。

そのおばさんのことは正直好きではありませんでした。だからわたしは積極的におばさんとは話はしませんでした。

ただおばさんはいつもニコニコしていました。

家に1人で留守番している時も、おばさんがいつも近くでみていて、何か言うわけでもなくニコニコしていました。

家族4人で食事をしている時も、おばさんは食卓には座っているけれど何を食べるわけでもなく、家族とも何も話はしていませんでした。

ただニコニコ笑っていました。

子供心に変わったところがあるおばさんがほんとに嫌いで、近づかないようにしていました。

家にいてもただ見ているでけで口も利きませんでした。

異様に不気味だった覚えがあります。

あるとき私が給水塔の上で遊んでいました。そして給水塔の蓋をとってしまって、給水タンクに落ちそうになった時に初めて「○○危ない!」と怒られました。

だけどおばさんは外に出てこないで、給水塔が見えるドア越しから私に怒鳴ってました。

両親も留守で、真冬だったので落ちていれば命が危なかったと思います。

それと同時におばさんの声を初めて聞きました。それはおばさんの声というより、おじさんのような低い声でした。

それから特に危ないこともなくおばさんとの日々は終わったけれど、1年が過ぎて2月から3月にまたおばさんが来て、普通にひと月ほど泊まって生活をしていました。

ただやっぱり私は好きになれなくて、毎年この2月から3月が憂鬱でした。

おばさんは普段はしゃべらないけれど、私に危ないことがあるとおじさんのような太い声で私を怒鳴って叱りつけていました。

だから私はおばさん怒られないように、普段から高い所に登ったり、車通りの多い所では遊ばなくなりました。

それから1年ほどたった時、私は小学校に入学すると同時に引っ越しました。

それっきりそのおばさんは家に泊まりに来なくなりました。

引っ越し祝いの時に親戚が何人か来ましたが、おばさんの姿はありませんでした。

おばさんのことが好きではなかったので、会わなくなって心の中で正直ほっとしていました。

ただ何年かするうちに「あのおばさんは誰だったのか?」思いはじめました。

幼稚園の3年間で毎年2月から3月のひと月間泊まりにくるくらいの親しい親戚だったはずなのに、

引っ越しと同時に疎遠になって、不思議に思ったので両親にそのおばさんのことを聞いてみることにしました。

「あの2月から3月に来てたおばさん誰なの?」と聞くと、両親は全く心あたりがないようでした。

姉にも聞いてみてみましたがまったく同じ反応でした。

後で考えたら2DKの間取りのアパートに、家族以外の人間をひと月も泊めるのはおかしいなと思いました。

それからもしつこく何度も両親に聞いたけれど、まるで記憶にない状態でした。

確かに何か食べていたり飲んだり、どの部屋で寝ていたのかもわかりません。

両親と話しているところなんて見たこともありません。

とても不思議なおばさんでした。

確かに記憶にはあり何度も危ないところを怒鳴られて助けられていたんですけど、あのひとは一体誰だったんでしょうか・・・。

Normal
コメント怖い
0
2
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ