中編5
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赤い看板の下

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これは私がまだ中学生だった頃の話です。

関東の私立女学院にいた私は、友人と何をするでもなく放課後の教室でたわいもない話をしていました。

先生の悪口、テレビの話、同級生の噂話…

ひとしきり話をしている中で

「コックリさんは本当に出来るのか」

という話になりました。なんせ暇を持て余した中学生ですから見よう見真似でコックリさんの紙を作り、スマホでルールを調べじゃんけんをしてメンバーを選びました。

私もそのメンバーの1人になってしまい渋々参加。

緊張しながら、でも半分くだらないと思いながら10円玉に指を乗せました。

暫くして小さく動きを見せる10円玉に私達は興奮した面持ちで下らない質問を投げかけました。

「私は何歳で結婚できますか?」

「◯◯さんの好きな人は誰ですか?」

「アイドルの◯◯さんの好きな人は誰ですか?」

今思えば本当どうでもいい質問ばかり…

気がつけばコックリさんをしている私達の手元を覗きこむクラスメイトの数はかなりの人数になっていました。

曖昧ながらもそれらしい答えをコックリさんはかえしてくれて、私は誰かが動かしてるのでもいいや、

なんだか楽しいから。

と思い一時間ぐらいしてからです。

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さ、

か、

し、

て、

か、

え、

り、

た、

い、

次の質問を考えている間に私達の指がスイスイと動き、勝手な文字を辿りはじめました。

周りの友人達が静かにざわめき辿る文字を読み上げ、

「さがして、帰りたい、かな…」

と呟きました。辺りがシン…と水をうったように静かになり私達は黙りました。

不意に嫌な予感がしました。何か面倒な事に巻き込まれる予感の様な…。

戸惑う私達などお構いなしに指を置いた10円玉は今までにない勢いで移動を始め、周りの野次馬の数は一気に倍になり友人がメモを取り出しました。

スラスラとひらがなの文字の間を滑りながら語られる文章、全てひらがななので当てはまる漢字をみんなで考えてまとめると、

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名前は、

◯◯たつろう

殺されて戸隠山と、

黒姫山の間の赤い看板の下に、

埋められている。

家に帰りたい。

という内容。私達は地図帳を持ってきて戸隠山と黒姫山の位置を探しました。

確かに近い距離にその山はありました。

だんだん恐ろしくなり私はもうやめたいと思う様になりました。他の3人も同じ様で暗い表情で口をつぐみ10円玉を見つめています。

「私達はまだ中学生だからそんなところまで貴方を探しにはいけません、おかえり下さい」

重い雰囲気に痺れを切らした友人が用紙に語りかけました。

しばらくあてどもなくゆるく円を描く10円玉がゆらゆらと再び文字を紡ぎ始めました。

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ぼ、

く、

が、

つ、

れ、

て、

い、

つ、

て、

あ、

げ、

その言葉が出てきた途端、私の隣の友人が緊張に耐えかね悲鳴をあげて10円玉から指を離してしまいました。

人一倍感受性の強い彼女は泣いていて、私達はコックリさんのルールも忘れ、みんなで指を離し彼女を慰めました。

コックリさんは動物の霊の悪戯とかもあるから気にしちゃ駄目だよ、と友人に話、私達はこの気持ちの悪い話を忘れる為にそのままカラオケに行ってしまいました。

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中学生の私達のすごす日々は、次から次へと新しい事に満ち、

私達は次第にあの不気味だった出来事など忘れていきました。

数ヶ月たったある日、

その日はまだ夕方だというのに空は真っ暗で、

バケツをひっくり返したような大雨が窓の外にひろがっていて、

私は塾に行きたくないな…と思いながら帰りのホームルームの時間をすごしていました。

担任の先生が甲高い声で

「今年のスキー教室についてご報告です。

長年うちの学校のスキー教室をする際、

ご協力してくれた◯◯ホテルさんのオーナーさんが、

ご不幸に遭われてしまったと連絡があり、

今年はガラリと予定変更になります。」

私はその言葉に何故か、

胸の奥がざわりとして、

顔を上げ先生を見つめました。

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先生がプリントを一番前の生徒達に配る姿が意味もなくコマ送りの様に見えます。

一番後ろの席の私にプリントが回って来ようとした瞬間、

あの日一緒にコックリさんを覗きこんでいた友人達の悲鳴が聞こえました。

あぁ、やっぱり…

そんな気持ちがどこかに私の中に浮かび、

プリントに目を落とすと、スキー場、泊まるホテルなどの予定場所に

戸隠、

黒姫、

という文字が見えました。

コックリさんとは動物霊じゃないのか、、、

ただの偶然にしては不気味過ぎる、、、

あんないい加減なお遊びで、本当に殺された人が探して欲しいと願い、出てくる事などあるのだろうか、、、

私は氷水をぶっかけられた様な寒気を感じ、

恐怖に怯え泣いているクラスメイト、

何が起こったのかわからずポカンとしている担任を見つめました。

music:4

その年のスキー教室は、

ウチのクラスからはたった4人しか参加しませんでした。

私はその4人のうち、

一番性格のさっぱりとした大人びた友人に事の全てを話し、

赤い看板が本当にあるのかだけ見てきて欲しい

とお願いをしました。

彼女は、

「まぁそれでみんなの気持ちに決着がつくならいいけどね」

と言って、スキー教室に向かいました。

その夜、彼女からのメールがあり。

泊まるホテルとスキー教室の間に小さなキャンプ場があり、4人で赤い看板を探したがそれらしき物は見つからなかった。

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だけど、唯一気になった場所があり

そこは畳15畳ぐらいのただ深く深く穴を掘っただけの大きなキャンプ場のゴミ捨て場で

その注意書きの看板が、読めないぐらい真っ赤にスプレーで落書きされていた、

と連絡がありました。

夏の間にキャンプをした人達が捨てた生ゴミが、

数年分積みかさなり、

表面が白いので彼女達が目をこらすと無数のウジが、雪の降る様な気温にもかかわらず表面を覆い蠢いていた、と

もし、その看板が彼の言っていた、

赤い看板だとしたら。

あの日、私達に見つけて欲しいと助けを求めて来た男性はもしかしたら、

何かしらのトラブルに巻き込まれ、

あのキャンプ場のゴミにまみれ、

いつか誰かに見つけてもらい、

我が家に帰る日を、

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一人ぼっちで待ち侘びているのかもしれません。

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初めての投稿で途中で送信してしまったみたいです。
最後まで続きを書いたのでお時間あったら読んで下さい。
この話は実話なのですが、彼の様に見つからないままの人がこの世にどれだけいるのかと思うと気が遠くなります。
平和が一番です。

その後は何もなかったのでしょうか…
かなり、リアルな情報ですし…もし、本当にそこから遺体が出てきたら…
気になります…