中編4
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小島さんとダルマ

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いらっしゃいませ おでん屋でございます。

大根、牛すじ、ちくわにはんぺん...各60円で販売しております。

60円がないお客様には特別に、おでん1つにつき怖い話1つで販売しております。

今日は来る途中で60円を拾った小島さんのお話です。

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私ね、中学生の時いじめをしてたの。

男子女子関係なくみんな一緒になっていじめられっ子の女の子をいじめてた。

その子すごく太ってて、緊張したり興奮したりすると顔が真っ赤になる子でね

私達は【ダルマ】って呼んでた。

後ろから突き飛ばしたり足を引っ掛けたりして転ばせて

「だるまさんが転んだー」とか、

「にーらめっこしましょ あっぷっぷー」とか言って

その子の容姿をゲラゲラ笑ったりしてたの。

そんな毎日を過ごしていたら、3年の夏休みにダルマが自殺したの。

線路への飛び込み自殺だった。

遺書とかは見つからなかったから

学校側もいじめを隠して、受験のストレスによる自殺として片付けられた。

私達も最初こそ驚いて大変な事をしてしまったって思ったけど、

やっぱり自分が可愛くて犯罪だなんて認めたくなくて、心の中でいじめを正当化してた。

みんな一緒にやってたからか、誰も誰か1人を責めたりはしなくて

最終的には「あの程度で死ぬなんて迷惑な奴」って雰囲気にまでなった。

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ダルマの席に花ではなくて20cmくらいの達磨が置かれたのはそんな頃だった。

誰が置いたのかわからないけど、私達は面白がってその達磨を倒したり顔に落書きしたりしてた。

でも所詮は置物だから反応がないでしょ?

だんだん飽きてきちゃって適当な噂話を流したの。

18時に資料室にある鏡の前で「だるまさん だるまさん にらめっこしましょ 笑うと負けよ あっぷっぷ」って言って、鏡の中の自分とにらめっこをすると鏡の中の自分がニタァって笑うっていうやつ。

みんな退屈してたからすぐに噂は広まってちょっとしたブームになったの。

でも私が作ったデタラメな噂だから、本当に鏡の中の自分が笑うなんてことはないじゃない?

だから段々噂が面白おかしく変えられていって、ついに誰かが鏡の前に達磨を置いたの。

そしてその達磨と一緒ににらめっこをするっていう、度胸試しみたいなものに変わったの。

私も友達と2人でやったわ。

ほとんどの生徒が帰った18時に資料室に行って、

にらめっこする前にね...ちょっとふざけて達磨を蹴ったのよ。

だるまさんが転んだもやっとこーって友達と笑ってた。

そして鏡に映る自分たちを見ながら

「だーるまさん だーるまさん にーらめっこしーましょ」

「わーらうとまっけよ あっぷっぷー」

鏡には相変わらず私達が私達のまま映されてて

「これ結構むなしい!」って笑いながら喋ってたの。

そしたら視界の隅に鏡に映ったダルマが見えたの。

置物の達磨じゃないわよ。死んだダルマよ。

友達もそれに気付いて急いで部屋を出ようとしたんだけど開かないの。

いつも資料室に鍵なんてかかってないのに。

それでもドアをガチャガチャしてると鏡の方からボソボソ聞こえるの。

振り返りたくないけど振り返っちゃった。

鏡にはもう何も映ってないけど、鏡の方を向けて置いていた達磨がこっちを見てニタニタしてるの。

ボソボソ言ってるのもその達磨。

気持ち悪くて、怖くて、腹が立って、私は達磨の所まで行って達磨を蹴ったの。

ダルマのくせに死んでから調子乗んなよって

ポカンとして私を見てる友達の所に戻り、またドアをひいたの。

今度はすんなり開いたわ。

走って教室まで戻ってからは、安心感とすごい体験をした事による興奮で友達とかなり盛り上がったの。

明日からネタに出来る、また面白くなるって思ってた。

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その日の夜、夢の中に達磨が出てきてゆらゆら揺れながら

「にーらめっこしましょ」って言うの。

周りは真っ暗でそこには私と達磨だけ。

「にーらめっこしましょ」

「にーらめっこしましょ」

って揺れながら少しずつ近づいてくるの。

夢だって分かってるのに起きられなくて

夢の中だとしても、とりあえず達磨から逃げようって思って

後ろを向こうとしたら

「だぁああるまさんっがぁああ」って言うの。

怖くて無視して後ろを向くとそこにはダルマがいて

「ころべ」

って一言言って、私を突き飛ばしたの。

突き飛ばされた所で目が覚めたわ。

汗びっしょりで体が震えてた。

学校なんか行く気分じゃ無かったけど1人でいるのも怖くて、結局いつも通り学校に行ったの。

昨日一緒ににらめっこした友達と話そうって思って。

でも学校に着くとその子は居なくて担任には風邪で休みだって言われた。

1人で抱えきれなくて他の友達に昨日の話をしてみたけど、

面白がって聞いてはいるものの誰も本気にしていない。

昨日の私達以外にはダルマは現れてないらしいの。

一緒ににらめっこをした友達はとうとう卒業するまで学校にこなくて

あの日以来会うことはなくなったの。

きっと彼女の所にもダルマは行ってるんだと思う。

私はっていうと一応学校には毎日行ったの。

ズル休みさせてくれるような親じゃないし、昼間家に1人でいるのが怖かったから。

それでも毎晩夢の中で達磨とダルマが現れて

「にーらめっこしましょ」って誘ってくるの。

資料室でしたみたいに蹴り飛ばすか、にらめっこをするか、逃げるかしかないじゃない?

今まで逃げる以外の事はしなかったんだけど、

だんだん達磨が近づいてきて、ダルマの私を突き飛ばす力も強くなって来てて

夢以外でも横断歩道や階段で背中を押されるようになったの。

なにか起こる前にどうにかしなきゃって思うんだけど、どうすればいいんだろう。

にらめっこ、勝てばいいのかなぁ...。

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そう話し終えると、小島さんはがんもどきを食べて帰っていきました。

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達磨ににらめっこしても、勝ち目ないし…一体どうしたらいいんだろう。

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それが実話なら私はいじめた皆さんの地獄行きをサポートしますよ☺こんな話は作り話でも書いてはいけませんよ地獄に落ちますよ

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バンビさん コメントありがとうございますm(_ _)m
かごめかごめや花いちもんめなども子供が遊ぶような意味の歌じゃないですもんね。
横断所道の盲目者用の音楽で通りゃんせが流れる所があって地味に怖いです。なその曲なのかと...。
私はお風呂場の鏡も怖いので曇らせたままです。

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