中編4
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人魚伝説 X-5 叛逆

人魚伝説 X-5 叛逆

腐海の森を進みマンドラゴラの襲撃を回避した。

ガァァァァァァ!!

なんの生物の咆哮かは分からないが、腐海の森に轟いた。

music:2

その咆哮にダンピールはニヤリと笑い

サラザール家に向かって走り出した。

「ど、どうしたんですか!?なんで走るんですか!!」

ダンピールは振り向かないまま叫ぶ

「厄介な怪物の咆哮だ!その怪物を足止めする道具、武器が無いから走るんだ!!」

ダンピールはナイフで背後に迫る怪物の姿を覗く。

「もっと早く走れ!追いつかれるぞ!」

一心不乱にサラザール家を目指し走り

巨大な館の敷地と腐海の森を隔てる門の前に辿り着く。

硬く閉ざされた門には鍵穴のような物がある気配がしない。

慌てる二人を他所に背後には怪物が迫っていた。

「どうやったら開くんだ!?」

レオンは右手に力を込め門を殴るがビクともしない。

その時だった…ダンピールはメッシュの言葉を思い出す。

懐から輝く宝石を取り出し門に掲げる

それに呼応したのか門がゆっくりと開き始めた。

どこからともなく声が響き渡る

「どうぞ…」

二人は慌てて門を潜りサラザール家の敷地内に足を踏み入れた。

門は再びゆっくりと閉じ怪物の咆哮が響き渡る。

music:1

「ふぅ…なんとか逃げ切れたか…」

休息する間も無く、サラザール家の使いがやって来る。

「ようこそ…では、館に案内します」

執事のような老人が道の真ん中に

ポツンと立っていた。

ダンピールは溜息を零し

「わかった…案内してくれ」

執事は歩く動作なくスーッと滑るように館に向かっていった。

ダンピールは執事の背中を見ながら呟いた

「人魚を探して来たのに…まさかここまで、ややこしい事になるとは…」

館まで15メートル…段々と近付くと館の大きさが増していく。

入り口の手前になると執事は止まり

ひとりでに館の扉が開いた。

「さあ…イリーザ嬢が奥でお待ちです…くれぐれも失礼のないように」

執事の冷たい視線に二人は息を飲む

二人は静かに奥に続く廊下を歩き始めた。

廊下の両脇の壁には今までのサラザール家の肖像画が飾られている。

肖像画に睨まれているような感覚に

二人は足早に奥に見える扉を目指す

「気味が悪いですね…」

ダンピールは奥の扉を睨んだまま

「あぁ…相変わらず趣味が悪い家系だな…」

やっと扉の前に辿り着き、ドアノブに手を掛けるが、開く気配はない…。

「?」

ダンピールは静かに短剣に手を…

ガンガンッ!!扉の向こうから叩く音が響く、勢いよく扉が開くと

「古いので…なかなか開かなくて」

扉の横に若い男が立っていた。

「ようこそ、ダンピール様とレオン様、イリーザ嬢がお待ちです」

若い男が先頭を歩くと廊下に置かれた

蝋燭に火が順番に点いていく。

巨大な扉の前に辿り着くと若い男は

ポケットから鍵を取り出し鍵穴に差し込んだ。

鍵が開いた音と共に扉が開いた。

「入りなさい…ダンピールと狼よ」

薄暗い部屋に黄金で彩られた椅子に座る一人の少女。彼女がサラザール家の主にあたるイリーザ嬢。

薄暗い部屋を照らすのは蝋燭だけだ。

蝋燭の火が照らせない暗闇に複数の気配を感じる。

ダンピールは椅子に座り

「さて…聞きたい…」

イリーザ嬢は目を閉じて話し出した

「人魚のことを聞きに来たのでしょう?」

ダンピールは帽子をテーブルに置き

「ご名答…では、人魚について教えてもらいたい」

突然、薄暗い部屋に眩しい光が部屋全体を照らす。眩しい光を放つ石像が部屋全体を照らす。

「いいでしょう…この120年間で人魚による被害は皆無でした。しかし、その沈黙は破られ再び被害が出ました」

人魚は古代種の一種で高い知能を有している怪物である。歌を歌い人間を惑わす力を持っている。しかし、近年になってからは人魚による被害は激減した。理由として人魚と人間の切ない恋物語が人魚の中で伝えられているからだとカフマンは述べた。

イリーザ嬢は真っ直ぐダンピールを見つめ

「人魚は本来は大人しい生物です。しかし、何らかの原因で暴走しているのなら貴方に人魚の討伐を命じます。」

ダンピールは紅茶を口に含み

「討伐の命令はカフマンから、とっくに受けた。」

イリーザ嬢は微かに笑い

「そうですか…カフマンの…」

少女はレオンに視線を向け

「では、新たな被害が出る前に解決しなさい。」

ダンピールは帽子をかぶり

「そのつもりだ…では、また。」

その時だった…部屋に黒尽くめの集団が襲撃してきた。

music:2

部屋は戦闘状態に入りイリーザ嬢の部下が暗闇から現れる。

「イリーザ嬢を大人しく渡せ…」

ダンピールは帽子を深く被り笑う

「渡せ?それは無理だな。」

仮面を被った先頭の人物が剣を向ける

「まあいい…生きている必要はない。死体でも構わないッ!」

ダンピールの首に向かって剣が飛ぶ

ダンピールは避けずに指二本で受け止める。

「甘いな…並みの人間風情が暗殺者気取りか?笑わせる」

ダンピールは剣を床に刺し

仮面の人物との距離を詰めた瞬間に

地面に叩きつける。

仮面が割れて素顔が露わになると

イリーザ嬢は溜息を零す

「また叛逆者ですか…」

そう口にした瞬間にイリーザ嬢に向かって仮面を被った集団の一人が拳銃を発砲する。

さっきまで光っていた石像が動き出し

イリーザ嬢を護るように瞬時に移動した。

光っていたのは石像ではなく、光る鋼鉄の体を持つ男だった。

彼の名をイリーザ嬢は呟いた

「ライトさん、ありがとう」

ライトは無表情で頷き元の配置に戻る

仮面の集団は拘束され、解決。

そしてダンピールとレオンはサラザール家を後にした。

次回…人魚伝説 X-6 嵐の夜

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